日本口蓋裂学会雑誌
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13 巻, 2 号
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  • 北村 信隆
    1988 年 13 巻 2 号 p. 133-156
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇裂の発生機序解明を目的として,妊娠8日12時間のWistar系ラットにvincristine 0.2mg侭gを単一腹腔内投与し,胎齢10日18時間から14日12時間まで6時間ごとの胎仔中顔面の走査電顕的および光顕的観察を行い,正常胎仔と比較して次のごとき結果を得た.
    1)胎齢14日0時間から14日12時間にいたるvincristine投与群胎仔の69.5%に口唇裂が認められた(正中口唇裂25.4%,側方口唇裂44.1%).
    2)投与群において種々の顔面突起低形成が認められたが,これを前頭突起の著しい低形成ないし発育停止と,内外側鼻突起とくに外側鼻突起の低形成に2大別できた.
    3)投与群では顔面突起における被覆上皮の分化が遅延し,間葉細胞の数および密度が低下していた.
    4)内外側鼻突起下方部の癒合時にみられる上皮細胞表層における球状構造物,線維状構造物,細胞突起などの出現が投与群において少なく,同部の上皮細胞および間葉細胞における核濃縮像の出現も少なかった.
    5)投与群では内外側鼻突起下方部における接触部の狭小化,離開など種々の癒合不全が認められた.
    6)上記のごとき変化が口唇裂の発生に関与する.とくに正中口唇裂は前頭突起の低形成ないし発育停止,側方口唇裂は主として外側鼻突起の低形成に起因するものと思われた.
  • 佐藤 和則
    1988 年 13 巻 2 号 p. 157-181
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    CL/CPに関連する症候群および多発奇形16名を除く591名のCL/CP患者を発端者として家系調査を行い,次のごとき結果を得た.
    1.CL(P)発端者の1度血族罹患率は2.26%,2度血族罹患率は0.37%,3度血族罹患率は0.40%で,一般集団におけるCL(P)発生率の16.2倍,2.6倍および2.8倍であった.
    2.CP発端者の1度血族罹患率は1.64%,2度血族罹患率は0.32%,3度血族罹患率は0.11%で,一般集団におけるCP発生率の41.7倍,9'4倍および2.9倍であった.
    3.CL(P)およびCP発端者の各種血族罹患率は多因子遺伝における各種血族罹患期待率に近似し,同胞の観察相対頻度は多因子遺伝における相対頻度予測値にほぼ一致した.
    4.男のCL(P)発端者の1度,2度および3度血族罹患率は女のCL(P)発端者のそれら血族罹患率より低い値を示した.一方,男のCP発端者の1度,2度および3度血族罹患率は女のCP発端者のそれら血族罹患率より高い値を示した.
    5.BCL(P)発端者の1度,2度および3度血族罹患率はUCL(P)発端者のそれら血族罹患率より高い値を示した.しかしCLP発端者の1度および3度血族罹患率はCL発端者のそれら血族罹患率より低い値を示した.
    6.他部奇形をもたないCL(P)発端者の1度および3度血族罹患率は他部奇形をもっCL(P)発端者のそれら血族罹患率より高い値を示した.他部奇形をもつCP発端者ではいずれの血族でも罹患者を認めなかった.
    7.陽性家族歴をもっCL(P)およびCP発端者の同胞罹患率は陽性家族歴をもたないCL(P)およびCP発端者の同胞罹患率より高い値を示した.
    8.CL(P)発端者両親の真のいとこ結婚率および真のいとこ以外の血族結婚率は一般集団におけるそれら血族結婚率より高い値を示した.またCP発端者両親の真のいとこ結婚率は一般集団のそれより高い値を示した.
    9.CL(P)の全血族における遺伝率は65.6±2.6%,CPのそれは67.0±13.6%であった.
    10.以上の結果は多因子しきいモデルの特性によく適合し,CL(P),CPともに多数の遺伝子と多数の環境因子に支配される多因子遺伝形質と解される.
  • 血管鋳型走査電顕法による観察
    千葉 順一
    1988 年 13 巻 2 号 p. 182-203
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    二次口蓋の形成・発育過程における血管構築の三次元的な変化を解明することを目的として,正常およびVit.A過剰投与により口蓋裂を誘発させたラット胎仔にMercox樹脂を注入した血管鋳型標本を作成し,走査電子顕微鏡で観察し,以下の如き結果を得た.
    1.口蓋突起が水平転位する以前の胎生15.5日の正常群,および胎生16.5日の口蓋裂群では,口蓋突起の血管分布密度は,ともに口腔側が鼻腔側より高いことから,突起内で活性の違いがあることが推察され,口蓋突起の水平転位に血管系が深く関与している可能性が示唆された.
    2.正常群では,口蓋突起の正中側への伸び出しに伴って,血管網の網目が左右に引き伸ばされていたが,これは口蓋突起の急激な伸び出しに対して血管新生が対応できなかったために起きた代償的変化であると考えられた.一方,このような現象は口蓋突起が水平転位後ほとんど伸び出しを示さない口蓋裂群では全く認められなかった.
    3.正常群では,口蓋突起の伸長時期から癒合時期にかけて,血管網の正中側自由縁の中央部に樹脂の球状塊が密集している領域が認められた.このことは,左右の口蓋突起血管網が吻合を形成する前段階として,血管壁に何らかの変化がおこっていることを示唆していると思われた.
    4.正常群,口蓋裂群ともに,骨の形成領域には密な血管分布が認められ,同領域における活発な骨形成に対応していた.
    5.口蓋裂群における口蓋突起の水平転位および上顎骨の形成は,正常群に比べてそれぞれ約1-1.5日遅れて観察された.
    6.口蓋裂群における口蓋突起の血管網は正常群に比べて血管系の発達過程や,血管構築の基本的な形態に関しては差を認めなかった.しかし,血管網の発達は遅延し,毛細血管の太さや網目の大きさ,分布密度の不均一といった微細血管構築の相違が認められた.
  • 周波数特性と主観評価量との関連について
    片岡 竜太
    1988 年 13 巻 2 号 p. 204-216
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    臨床応用可能な開鼻声の定量的評価法を確立するために,口蓋裂あるいは先天性鼻咽腔閉鎖不全症による開鼻声患者18例と健常人17例の発声した母音/i/について声道伝達特性を観察するためにケプストラム分析を行い,得られたスペクトルエンベロープに1/3オクターブ分析を加え,開鼻声の周波数特性を求めた.次に20人の聴取者による開鼻声の聴覚心理実験を行い,得られた主観評価量と声道伝達特性を表わす物理量の関連を検討したところ次の結果が得られた.
    1)開鼻声のスペクトルエンベロープの特徴は健常音声のスペクトルエンベロープと比較して第1,第2フォルマント間のレベルの上昇と,第2,第3フォルマントを含む帯域のレベルの低下であった.
    2)開鼻声の聴覚心理実験を行い得られた5段階評価値を因子分析したところ,開鼻声を表現する2次元心理空間上に2つの因子が存在し,第1因子は全聴取者に共通した聴覚心理上の因子であり,第2因子は聴取者間の個人差を表わす因子であると考えられた.そのうち第1因子を主観評価量とした.
    3)開鼻声の主観評価量と1/3オクターブ分析から得られた物理量の相関を検討したところ,第1フォルマントの含まれる帯域から2/3-4/3オクターブ帯域の平均レベル(物理評価量L1)および第1フォルマントの含まれる帯域から9/3-11/3オクターブの帯域の平均レベル(物理評価量L2)と主観評価量に高い相関が認められた.
  • 実験的研究
    加納 欣徳
    1988 年 13 巻 2 号 p. 217-225
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    妊娠にともなう母体の血液性状の変化と胎児発育との関連について,疫学的あるいは実験的に数多くの研究がなされているが,口唇・口蓋裂の発生との関連をみた研究はみうけられない.そこで,著者らは妊娠時の血液性状の変化と口唇・口蓋裂発生との関連について疫学的な調査を行ったが,明らかな関連を認めることはできず,実験的研究の必要性を示唆する報告をした.今回,妊娠時の血液性状の変化と口唇・口蓋裂発生との関連について,A/J系マウスを用いた実験的研究を行ない,以下の結果を得た.
    1.妊娠前のA/J系マウスの血液性状は,WBC7.3±2.32x103/mm3,RBC1045±58.1x104/mm3,Hb17.3±0.789/dl,Ht48.3±3.33%,MCV46.2±121μ3,MCH16.6±0.59μμ9,MCHC35.9±1.66%であった.
    2.A/J系マウスにおいて,妊娠にともないRBC,Hb,Htは有意に低下していた.これはヒトにおける妊娠あるいは妊婦貧血と同様な変化が,母獣におきているものと考えられた.
    3.A/J系マウスでは,口蓋裂胎仔をもつ母獣は,もたない母獣に比べ,妊娠時の貧血がより高度におきている傾向が示唆された.
    4.妊娠10日目のA/J系マウスにおいて,脱血による高度の急性貧血は,口蓋裂誘発の一要因になると考えられた.
  • 正常児と唇顎口蓋裂児の比較
    高野 直久, 高野 英子, 佐藤 和則, 佐藤 公, 大貫 善市, 加藤 誠次
    1988 年 13 巻 2 号 p. 226-235
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1)哺乳時の舌運動メカニズムの解明と,唇顎口蓋裂児におけるHotzレジン床装着による哺乳運動改善効果の検索を目的として,超音波診断装置を用いて哺乳時の舌運動を記録するシステムを開発するとともに,得られた超音波エコー像を汎用の画像解析装置に応用する舌運動画像解析システムを考案した.
    2)本システムは,被験児に異和感を与えることなく,通常と同様の哺乳時における舌矢状断の運動を記録し,かつ時間的変化を把握できるものである.
    3)正常児の哺乳時舌運動には2種類の波があり,大きな波は盛り上がりの範囲の増加で,小さな波は別個に移動していた.唇顎口蓋裂児のHotzレジン床非装着時には上唇,歯槽部および口蓋と舌との間で乳首を圧迫する動作が小さく,舌の盛り上がりが低かった.Hotzレジン床装着によって哺乳時の舌運動はリズミカル,かつ持続的で,大きなストロークとなり,正常児のそれに近づいていた.
  • 福西 健至, 藤井 芳郎, 橋爪 慶人, 上石 弘, 上石 弘, 久山 健
    1988 年 13 巻 2 号 p. 236-241
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    我々は下垂体下部に穿孔した鼻咽腔奇形腫を伴う口蓋裂の症例を経験したので報告する.症例は6カ月女児.不完全口蓋裂を認め,その披裂部から栂指頭大の腫瘤を認めた.腫瘤は充実性の前半部と嚢胞性の後半部とから成っていた.全身麻酔下に口蓋披裂部から腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は発生母地と思われる鼻咽腔上壁と茎状の突起にて連なっていた.同部には,ラトケ嚢の遺残と思われる陥凹があり,腫瘤の茎がこの陥凹にはまり込むような様相を呈していた.腫瘤摘出後,頬部から粘膜及び粘膜下組織を複合移植として陥凹部を閉鎖した.病理組織学的検索では,外胚葉性の中枢神経組織,粘液腺,中胚葉性の骨,骨髄及び軟骨組織を認め,奇形腫と診断された.発生学的にはラトケ嚢の遺残を認め,本奇形腫が同部での組織の移動と癒合に関係しているのではないかと思われた.本症例における口蓋裂は,口蓋突起の癒合が,奇形腫によって妨げられたために発生した可能性が示唆された.
  • /s/音の訓練過程の評価
    山下 夕香里, 道 健一, 今井 智子, 鈴木 規子
    1988 年 13 巻 2 号 p. 242-252
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    主として舌運動様式の異常による構音障害の訓練過程におけるダイナミックパラトグラフィー(DP)の有用性を検討するために独自の評価法に基づいて,口蓋化構音と側音化構音とを合併し,ほぼ同じ手順で訓練された口蓋裂術後症例5例のノs/音の訓練経過を客観的に評価した.
    方法:訓練過程の評価基準として設定した訓練段階(Stage)は舌運動様式と呼気操作を組合せて5段階に分類し,それぞれの段階をさらに単音から会話までの8レベルに細分化し,1音につき40レベルの音の訓練レベルを設定した.さらに音の訓練に先立って基礎訓練を行う場合には4レベルの基礎訓練レベルを追加設定した.訓練は原則として訓練レベルを順次進めることとし,各訓練日において達成された訓練レベル(正答率80%以上)を記録し,訓練レベルの進み方によって全体の訓練過程を評価した.
    結果:1)異常な舌運動様式が顕著に認められた重度症例群は軽度症例群に比較して/s/音の訓練回数が多かった.
    2)DP法の症例は従来法の症例に比較して/s/音の訓練回数が少なかった.
    3)DP法の症例では基礎訓練に時間を要したが,基礎訓練によって舌背を挙上する習癖が除去されると短期間で/s/・音が習得されるという改善過程を示した.
    4)従来法の症例では聴覚判定のみでは音の判定がしにくいことがあり,舌と口蓋の微妙な接触様式を習得させるのに時間を要した.
    以上の結果から,異常な舌運動様式に基づく構音障害の訓練においては従来法と比較してDP法が有効であることが明らかとなり,またわれわれの考案した評価法の妥当性が示唆された.
  • 舘村 卓, 和田 健
    1988 年 13 巻 2 号 p. 253-261
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    鼻咽腔閉鎖不全症患者の発声時における呼気の鼻腔漏出を改善し,異常構音の固定を防止する上で使用される発音補正装置についてより広範な適用を考慮した装置として栓塞子付き口蓋挙上装置(Bulb-PLP:Bulb attached Palatal Lift Prosthesis)を考案した.本装置は従来から用いられてきた鼻咽腔に挿入したbulbに機能を求めたいわゆるスピーチエイドと挙上させた軟口蓋に機能を求めた軟口蓋挙上装置(palatal lift prosthesis)の長所を兼備し,構音運動を障害せず,適応性に富む新しい発音補正装置である.本論文では,この装置の作製方法について詳述し,本装置の機能的役割について検討した.
  • 幸地 省子, 越後 成志, 普天間 朝義, 猪狩 俊郎, 手島 貞一, 糠塚 重徳
    1988 年 13 巻 2 号 p. 262-270
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    顎裂部へ皮質骨,海綿骨を含む新鮮自家腸骨ブロック片を移植した口唇口蓋裂2症例の移植骨の変化を咬合X線写真,歯科用口腔内X線写真を用いて観察した.移植骨の吸収量が多く,形成された骨架橋は細かった.また,骨架橋形成時期が海綿骨細片移植と比較して非常に遅かった.これらの観察結果から,顎裂部への骨移植では,移植骨の機能として力学的支持性を求める場合でも,骨架橋形成が確実で早い新鮮自家腸骨海綿骨細片移植を適応した方が予後が良いことが示唆された.
  • 山本 一郎
    1988 年 13 巻 2 号 p. 271-280
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本報告の目的は唇顎口蓋裂者の咀囑能率および食物の粉砕能が健常児と比較して異なるか否かを検討することにある.
    ピーナツを資料とするManlyらの方法を0部改変し,歯科矯正治療をうけていない思春期前期の口蓋裂単独者5名,片側性唇顎口蓋裂者12名,両側性唇顎口蓋裂者8名の計25名を実験群被検者,これと対応する歯牙年齢の健常児12名を対照群被検者として,それらの咀囑能率を測定し,さらにピーナツ粉砕能のメッシュ別の分析をおこなった.得られた結果は次の通りであった.
    1)対照群の咀囑能率は平均100.9%であった.
    2)実験群被検者の咀囑能率は,それぞれ口蓋裂単独者53.4%,片側性唇顎口蓋裂者28.4%,両側性唇顎口蓋裂者15.1%であり,対照群の咀囑能率よりも有意の差をもって低かった(口蓋裂単独者P<0.05,片側性唇顎口蓋裂者・両側性唇顎口蓋裂者P<0.001).
    3)片側性唇顎口蓋裂者,両側性唇顎口蓋裂者における4メッシュ,6メッシュ,8メッシュ上の残留率は対照群におけるそれらよりも,有意の差をもって高かった.しかし,口蓋裂単独者においては有意の差は認められなかった.
    4)実験群被検者の中で臼歯部に交叉咬合を示したものについて,交叉咬合側と非交叉咬合側の咀囑能率に有意の差は認められなかった.
    5)片側性唇顎口蓋裂者において,健側と患側の咀囑能率の間にも有意の差は認められなかった.
  • 今井 智子, 吉田 広, 山下 夕香里, 鈴木 規子, 松井 義郎, 道 健一
    1988 年 13 巻 2 号 p. 281-295
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    昭和52年7月から昭和61年12月までの間に治療を行い1年以上経過観察することができた先天性鼻咽腔閉鎖不全症(CVPI)31例と,対照群として同時期に口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖不全に対して治療を行った同年代の患者30例について,治療法および治療成績を比較検討したところ,以下のような結果が得られた.
    1.CVPI群は口蓋裂群よりも治療成績が低く,治療後に鼻咽腔閉鎖不全を示した症例が10%あり,また,鼻咽腔閉鎖機能が良好となっても開鼻声が消失しない症例が26%に認められた.
    2.cvpl;群では顔面鼻咽腔症候群(症候群)において治療成績が低く,鼻咽腔閉鎖機能の改善に長期間を要した.
    3.補綴的治療は口蓋裂と同様,CVPIに対しても有効であった.また,外科的治療を行わずに,発音補助装置を撤去できた症例はCVPI群で6例(19%),口蓋裂群では3例(10%)認められた.
    4.外科的治療の成績はCVPI群,口蓋裂群とも発音=補助装置装着によって鼻咽腔閉鎖良好となった症例では良好であった.
    5.低年齢症例の一部,および軽度不全症例では機i能訓練を含めた言語治療のみで良好な結果を示した症例がCVPI群で5例あった.
    6.補綴的治療後に鼻咽腔閉鎖機能が改善するまでの期間は,症候群および軟口蓋造影X線規格写真所見による分類でII型の症例においては長期間にわたることが明らかとなった.非症候群あるいは1型の症例では口蓋裂群と比較して改善率はやや低いものの同様の改善過程を示した.
    これらの結果から,CVPIに対してはまず補綴的治療,言語治療務るいは両者を併用した治療を試み,その結果から外科的治療の適応の有無を決定すべきであると考えられる.
  • II.昭和51年-60年度に受診した1730名の調査
    夏目 長門, 増田 浩男, 三浦 茂樹, 本田 正則, 秋山 芳夫, 日下 雅裕, 大辻 清, 長縄 吉幸, 織家 茂, 新美 照幸, 斎藤 ...
    1988 年 13 巻 2 号 p. 296-305
    発行日: 1988/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    愛知学院大学歯学部第二口腔外科学教室,口唇,口蓋裂資料解析室に保管している資料をもとに,最近10年間の当科における本症患者1730名の実態について報告を行い,以下の如き結論を得た.
    1.本症患者1730名のうち,当科にて初回手術を行った者,および施行予定の者は1135名(65.6%)であった.これらの裂型分類は,男では口唇裂244名(39.1%),口唇・口蓋裂283名(45.4%),口蓋裂97名(15.5%),女では口唇裂171名(33.5%),口唇・口蓋裂179名(35.0%),口蓋裂161名(31.5%)で,我々が行った愛知県の一般集団中における口唇,口蓋裂患者の総出生数の結果と類似していた.
    2.居住地域別の分類では,愛知県が1197名(s9.2%)を占めていた.このうち名古屋市は452名(26.1%),尾張部491名(28.2%),三河部254名(14.9%)であった.また,岐阜県241名(13.9%),三重県160名(9.3%),静岡県32名(1.8%),長野県15名(0.9%),その他85名(4.9%)で,愛知,岐阜,三重の3県で全体の92.4%を占めていた.
    3.我々の行った一般集団中の本症出現率より推定した口唇,口蓋裂患者の総出生数より類推すると,愛知県の6割程度,岐阜県,三重県の3-5割程度が当科を受診していると推定された.
    4,当科に受診している患者の年齢構成は,広く各世代にわたっていたが,特に15歳以下の子供が多く1304名で全体の75.4%を占めていた.
    5.当科における初診患者の増減は,自然発生率の変化と類似していた.
    6.初回手術と再形成手術の比率をみると各年代により,45.2%-60.8%は初回手術で占められていた.また,最近5年間では初回手術の比率が低下していたが,これは,再形成手術の件数が増加したためにみられた相対的な比率の低下によるものであった.
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