日本口蓋裂学会雑誌
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4 巻, 2 号
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  • 杉崎 正志
    1979 年 4 巻 2 号 p. 1-30
    発行日: 1979/12/29
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患者の上顎部に発育不全の多くみられることは周知の事実であり,その原因として,口唇口蓋形成術による影響が大きいといわれている.そこで著者は幼若家兎に1)生理的上唇裂閉鎖術,2)片側顎間骨・上顎骨・骨膜剥離術,3)生理的上唇裂閉鎖および両側顎間骨・上顎骨・骨膜剥離術,4)片側上唇側方部一部切除術を施行し,頭部X線規格写真によって,これら手術が顎顔面頭蓋の成長発育に及ぼす影響を検索するとともに,咬合および顎間骨上顎骨骨面の変化を観察した.その結果,次の如き所見を得た.
    (1)生理的上唇裂閉鎖術群では上下顎骨部ともに,軽度の前方成長抑制と下方への過成長がみられた.また本手術群では反対咬合が8例中1例にみられた.
    (2) 片側顎間骨・上顎骨・骨膜剥離術群では上顎部が手術側に向かって軽度の弩曲を示し,上顎部の前方成長抑制,軽度の下顎骨前方成長抑制,上下顎骨部の下方への過成長などがみられた.本手術群では反対咬合は1例もみられなかったが,手術部骨面は多孔質化と肥厚をきたし,顎間骨上顎骨縫合部の一部に癒合がみられた.
    (3)生理的上唇裂閉鎖および両側顎問骨・上顎骨・骨膜剥離術群では上下顎骨部ともに,かなり強い前方成長抑制と下顎骨前方部の下方への過成長が認められた.本手術群では術後早期から切端咬合ないし反対咬合が出現し,正常咬合を呈したものは11例中1例にすぎなかった.
    (4)片側上唇側方部0部切除術群では上顎部の弩曲はみられなかったが,上下顎骨部の前方成長抑制を思わせる所見が認められた.
  • 杉崎 正志
    1979 年 4 巻 2 号 p. 31-45
    発行日: 1979/12/29
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    幼若家兎に片側顎問骨・上顎骨・骨膜剥離術を施行し,術後の各期間にわたって乾燥頭蓋を調製して観察した.その結果,顎間骨では術後1週で,上顎骨前方部では術後3週で,手術側骨面の多孔質化と凹凸が認められた.また,このような変化は経過とともに著明になった.さらに術後4週で,手術側の顎間骨,顎骨縫合部に一部癒合がみられ,術後2カ月で手術側骨面の肥厚が認められた.このような骨の肥厚は時日の経過とともに増強し,術後6カ月において最も顕著であった.
    次いで,手術側骨面に各種変化の生ずる理由を明らかにしようと考え,幼若家兎に同様の手術を行ったのち,非手術側と手術側の骨および周囲組織における一血管造影所見および組織所見にっいて比較観察した.その結果,手術部の骨および骨周囲における血管の分布密度は術後いずれの時期でも非手術側より高かった,また手術側の骨膜は術後1週ですでに非手術側の約10倍の厚さを示したが,これは経過とともに減少し,術後4カ月で非手術側とほぼ同様の厚さになった.骨芽細胞は非手術側では術後4カ月で著しく減少を示したが,手術側では術後6カ月でも,いまだ骨芽細胞が認められた.なお,手術側の骨梁は全実験期間を通じて非手術側より細く,非手術側骨面は術後4週でほぼ緻密化されるのに対し,手術側骨面は凹凸不正で,時日の経過に伴ってこれが著明となった.また,上述の各種所見から,手術側骨面の変化は血管の過形成,骨膜の肥厚,骨芽細胞の増加と長期残存などによるものと考えられた.
  • 寺島 良治
    1979 年 4 巻 2 号 p. 46-62
    発行日: 1979/12/29
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    鼻雑音の物理音響学的実態を調べるため,口蓋裂術後鼻雑音を明らかに認めた口蓋裂児の口腔前方,鼻腔,および上咽頭腔から採取した音声を用いて,鼻雑音のサウンドスペクトログラムによる検索をしたところ,以下の結果を得た.
    1.鼻雑音のサウンドスペクトログラムに認められる特徴は,口腔前音では,1,000Hz以下の低音域に限局する音響成分,鼻腔音では,ベースライン付近に最も強く,高音域方向へ漸次減衰する音響成分,さらに上咽頭腔音では,鼻腔音パターンの音響成分の増強と,高音域方向への拡大であった.
    2.鼻雑音は鼻腔音ならびに上咽頭腔音パターンから,I型(周期的振動型),II型(非周期的振動型),ならびにm型(混合型)に分類できた.
    3.有声子音(g行,z行)は無声子音(k行,s行)に比較して,また摩擦音は破裂音に比べ,II型が多く,皿型が少なかった.
    4.聴覚的に明らかな鼻雑音のサウンドスペクトログラムは,鼻雑音の上咽頭腔音における音響成分が,最大高音域の周波数値は3,100Hz以上,持続時間値は60msec以上であった.
    5.鼻雑音の聴覚強度は,上咽頭腔音で認められる鼻雑音音響成分の持続時間が長いほど大きく認めた.
  • 鈴木 俊夫, 服部 吉幸, 加藤 正樹, 根本 辰朗, 松井 恭史, 榊原 淳朗, 伊勢 直樹, 大西 正信, 河合 幹
    1979 年 4 巻 2 号 p. 63-75
    発行日: 1979/12/29
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇・口蓋裂児を取り巻く地域社会の本疾患に対する認識・態度を知る必要があると思われる.そこで,われわれはアンケート方式にて,名古屋市内の5種類の異った代表地区を選び調査を行った.
    調査結果は,口唇・口蓋裂という言葉は非常に周知度が高い反面,その実態の理解度は低く,口腔機能への影響にはある程度の理解を示すが,精神機能への影響に対する理解は低い.またこの疾患の情報源には,身内・知り合いにいるなど,見聞しているものが多く,っいで印刷媒体とつづき,この疾患に対する世間の理解を深めるには,今後マスコミの利用を考えねばならないと思われる.一方,保健所が情報源として全く機能していないことについては,今後の施策が望まれる.
    原因にっいては,現在の医学界の現況の反映か,遺伝や不明が多く見られたが,一部にはいまだ迷信が生きていることを思わせる記述があり,社会的偏見の源泉をみるようであった.
    治療の可能性については,約半数の人がある程度までの治療の可能性を期待しており,医学界の今後一層の向上が望まれる.患者に対する態度では,単なる同情より積極的同情の方が多いことは,患者の精神的支持に重要なことと思われる.
    社会生活への影響については,対人関係,結婚,就職での不利など,周囲の人々も患者の不利を認めている.
    健康保険あ適応は,多くの人が未知であり,今後医療行政機関の広報活動が望まれる.また医療機関・行政への希望記入者では,治療機関の充実・医療費の公費負担・原因追求などがあげられている.
  • 1979 年 4 巻 2 号 p. e1-
    発行日: 1979年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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