口唇口蓋裂患者の効率的な集学的治療を考えるための知識を得ることを目的として,東京大学医学部附属病院歯科口腔外科・矯正歯科における歯科矯正治療開始時の言語機能についてe歯科矯正学的所見を把握した上でその実態の調査を行った。対象は,平成元年4月から平成7年8月までに当科にて動的歯科矯正治療を開始し,資料が整っていた61名とした。
今回の調査から,以下の結果を得た。
1.歯科矯正治療は9歳に開始した者が最も多く,次いで8歳であった。
2.反対咬合は,顎裂に近接した前歯部,犬歯部に多く,大臼歯部では少なかった。
3.歯科矯正治療法は,UCLPでは舌側弧線装置,マルチブラケット法が,BCLPではquad helix型拡大装置,拡大床がよく用いられていた。
4.歯科矯正治療開始時の言語機能は,正常な者47名,構音訓練中の者8名,開鼻声を認めた者4名であった。また,正常な者47名中19名は構音障害が出現せずに,28名は言語治療により正常構音を獲得していた。
5.異常構音の種類では,口蓋化構音,声門破裂音が多くみられた。
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