エレクトロパラトグラフィ(EPG)を言語臨床で活用して行く道を探ることを目的に,医学中央雑誌version 3で「パラトグラフ」をキーワードとして検索した39編の論文を対象として,我国におけるEPG関連の研究の動向を調査した.
1.掲載雑誌は音声言語医学会誌が20%と最多だったが, 補綴,口腔外科,矯正歯科など歯科関連の雑誌が半数近くを占めていた.発行年は80年代が59%,90年代が26%,2000年代は15%と漸減していた.
2.著者の専門域は歯科医師が51%,次いで言語聴覚十が44%であった.
3.EPGを用いた目的は,構音時の舌運動の観察が大半であったが,EPGを用いた訓練経過やその効果に関するものは18%と少なかった.
4.被験者は正常例(31%)に次いで,口蓋裂(26%)や口腔腫瘍(15%)など器質的構音障害例が多かった.
5.使用機i器はリオン社のDPシリーズが79%を占めていた.
6.EPGと併用された検査法は,音声の聴覚印象,音響分析,ビデオ,X線映画法,超音波断層法など多彩だった.
我国において1980年代には世界に先駆けた多くの研究がなされていたが,次第に減少していることが分った.一方,英国ではEPGを用いた研究が連綿と継続しており,英国内の口蓋裂センターでは臨床活川も拡大している.また口腔の器質的疾患のみでなく,発達性あるいは神経疾患による構音障害など幅広い領域でEPGが取り入れられている.我国におけるEPG研究の成果を踏まえて,言語聴覚療法の広い分野で客観的・科学的手法としてEPGを取り入れていくことが望まれる.
抄録全体を表示