日本口蓋裂学会雑誌
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39 巻, 1 号
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原著
  • ―片側性唇顎裂と唇顎口蓋裂の比較―
    佐藤 公治, 相澤 貴子, 小林 義和, 水谷 英樹, 近藤 俊, 今村 基尊, 大杉 育子, 奥本 隆行, 吉村 陽子
    2014 年 39 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2014/06/14
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    【緒言】当センターでは顎裂部骨移植術(BG)にあたり,矯正歯科医と口腔外科医が相談,術前矯正治療や手術時期を決定している。今回,われわれの行ってきたBGについて後方視的検討を行った。
    【方法】2007~2010年にBGを施行した片側性唇顎裂(以下UCLA)27例,片側性唇顎口蓋裂(以下UCLP)58例を対象とし,性別,手術時期,顎裂幅,患側側切歯の有無,手術時患側側切歯の萌出,手術時患側および健側犬歯の萌出,手術時患側および健側犬歯の歯根形成,移植骨量,骨形成について調査し,UCLA群とUCLP群間で比較検討した。
    【結果】1.UCLA群は男児13例,女児14例,UCLP群は男児35例,女児23例,手術時期はUCLA群118.4±20.5ヶ月(92~171ヶ月),UCLP群119.1±14.7ヶ月(89~168ヶ月)で,両群間に有意差を認めなかった。
    2.顎裂幅はUCLA群で歯槽頂部5.7±2.3mm,鼻腔底部12.1±4.5mm,UCLP群で歯槽頂部7.3±2.7mm,鼻腔底部14.6±3.9mm,移植骨量はUCLA群2.1±1.0g,UCLP群2.5±1.0gで,両群間に有意差を認めた(p < 0.05)。
    3.手術時に患側犬歯は,UCLA群8例,UCLP群5例で萌出,手術時にUCLA群で患側犬歯萌出症例が有意に多かった(p < 0.05)。
    4.犬歯歯根形成が1/2以上であったものは,患側でUCLA群14例,UCLP群11例,健側でUCLA群13例,UCLP群12例で,患側,健側ともUCLA群で犬歯の歯根形成が有意に早かった(p < 0.05)。
    5.EnemarkらのLevel 2以上は,UCLA群96.3%,UCLP群98.3%で,骨形成は両群間に有意差はなかった。
    【考察】UCLA群とUCLP群間で顎裂幅,移植骨量,手術時患側犬歯の萌出と,患側および健側の犬歯歯根形成に有意差を認めたが,両群とも骨形成は良好であった。
  • ―4歳時および5歳時の評価―
    曾我部 いづみ, 三古谷 忠, 澁川 統代子, 今井 智子, 石川 愛, 松沢 祐介, 伊藤 裕美, 松岡 真琴, 山本 栄治, 金子 知生 ...
    2014 年 39 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2014/06/14
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    【目的】北海道大学病院高次口腔医療センターではHotz床併用二段階口蓋形成手術を行ってきたが,2003年11月より初回手術に修正を加えFurlow法による軟口蓋閉鎖とともに硬口蓋後方1/2までを閉鎖する術式とした。その言語成績を検討した。
    【対象と方法】二段階口蓋形成手術法の初回手術を施行した片側ならびに両側唇顎口蓋裂の連続症例39例である。術後,硬口蓋未閉鎖部に閉鎖床を装用したものは39例中18例(46.2%)であった。4歳時と5歳時において,鼻咽腔閉鎖機能を良好,ほぼ良好,不良の3段階に評価し,また,構音障害の有無と発現頻度について評価した。
    【結果と考察】鼻咽腔閉鎖機能獲得率は良好とほぼ良好合わせて4歳時で87.2%,5歳時で89.7%であった。異常構音の発現頻度は4歳時で59.0%,5歳時で56.4%であった。異常構音の内訳では,4歳時で口蓋化構音50.0%,声門破裂音35.7%,鼻咽腔構音7.1%,側音化構音3.6%,咽(喉)頭摩擦音3.6%であった。5歳時で口蓋化構音48.0%,声門破裂音32.0%,側音化構音16.0%,咽(喉)頭摩擦音4.0%であった。国内他施設における二段階法と比較して術後の鼻咽腔閉鎖機能は良好で異常構音の発現頻度も低かった。これは初回手術時に硬口蓋の1/2までを閉鎖したことにより,前方未閉鎖部の鼻口腔交通部が狭小化した症例が多くなったためと推測された。
  • 鈴木 藍, 北野 市子, 朴 修三, 加藤 光剛
    2014 年 39 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2014/06/14
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    1977年から2012年までの35年間に静岡県立こども病院口蓋裂診療班を受診した粘膜下口蓋裂258例中,就学前に良好な鼻咽腔閉鎖機能を示し,未手術のまま長期的な経過観察を行えた25例に対し検討を加え以下の結果を得た。
    1)鼻咽腔閉鎖機能が良好なまま経過した症例は対象症例の約1/3であり,残りは悪化もしくは変動を示していた。
    2)合併疾患の有無と鼻咽腔閉鎖機能の変化には有意な相関は認められなかった。
    3)鼻咽腔閉鎖機能の悪化時期は平均9歳7ヶ月であったが,症例により6~16歳と個人差が大きかった。
    これらの結果から長期的な経過観察の必要性が示唆された。
  • ―インプリント遺伝子解析と臨床経過を中心として―
    加藤 大貴, 井村 英人, 東元 健, 八木 ひとみ, 芝崎 龍典, 古川 博雄, 新美 照幸, 藤原 久美子, 鈴木 聡, 外山 佳孝, ...
    2014 年 39 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2014/06/14
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    Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)は,新生児期の臍ヘルニア,巨舌,巨体を三主徴とする過成長を呈する症候群である。BWSの原因遺伝子座は11番染色体短腕15.5領域(11p15.5)であり,ゲノムインプリンティングが関与している。今回,われわれは,巨舌と構音障害を主訴に当科を初診し,言語訓練と歯科矯正治療は積極的な治療を行わず,経過観察を行ったBWS症例のインプリント遺伝子の解析を行い,患児においてKvDMR1の低メチル化を認めた。BWSの発症機序とゲノムインプリンティングについての考察を加えたので報告する。
統計
  • ―合併した先天異常について―
    吉田 優, 土井 理恵子, 西尾 幸与, Abir MAJBAUDDIN, 川崎 誠, 小谷 勇, 領家 和男
    2014 年 39 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2014/06/14
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    1967年1月より2011年12月までの過去45年間に当科を受診した二次症例を含む口唇裂・口蓋裂患者661例を対象とし,合併した先天異常について臨床統計的検討を行い以下の結果を得た。
    1.661例中82例に先天異常および症候群の合併がみられ,合併頻度は12.4%であった。
    2.合併した先天異常は先天性心疾患が27例(4.1%)で最も多く,次いで四肢異常18例(2.7%),耳の異常17例(2.6%),眼球眼瞼異常12例(1.8%)であった。
    3.先天異常保有患者における,合併した先天異常の数は一人平均1.3個,多いものでは6個であった。
    4.症候群として診断の得られたものは30例(4.5%)で,その中でもPierre Robin症候群は17例で最も多く,次いで第1第2鰓弓症候群,Treacher Collins症候群がともに2例であった。
症例
  • 杉山 知子, 野口 忠秀, 小山 潤, 土屋 欣之, 伊藤 弘人, 三宅 真次郎, 笹栗 健一, 神部 芳則, 草間 幹夫, 須賀 賢一郎, ...
    2014 年 39 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2014/06/14
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    われわれは口蓋裂が未手術のまま経過した右側唇顎口蓋裂の成人例に対し,口蓋形成術,口腔前庭部の瘻孔閉鎖術と顎裂部の骨移植術ならびに上唇外鼻の二次修正術を同時に行い,比較的良好な結果を得たので,その概要について報告する。
    患者は20歳,男性。生後3ヶ月に某大学附属病院にて口唇形成術を受けたが,その後の治療は放置されていた。歯列矯正と口蓋の閉鎖を希望され2011年2月当科初診となった。口腔内所見として,口蓋裂と顎裂部の鼻口腔瘻が認められ,咬合はAngle class Iで,顎裂部には矮小歯を認めた。また開鼻声と軽度の構音障害が認められた。治療法は,術後の歯列矯正も考慮して口蓋形成術に併せて顎裂部骨移植術ならびに上唇外鼻二次修正術を計画した。手術は経口挿管麻酔下に,最初に口蓋形成術を,次いで顎裂部骨移植術を行った後,上唇と外鼻の二次修正術を施行した。術後は口蓋垂の軽度変形を認めるも経過は良好であり,言語治療と歯列矯正治療も行っている。
    本例は成人例のため,鼻咽腔閉鎖機能の積極的な獲得より,むしろ骨移植された顎裂が良好に閉鎖される必要があると考え,手術設計に若干の考慮をした。すなわち口蓋弁の後方移動は最小限とし,口蓋形成術により口蓋前方部に生ずる骨露出面積をできるだけ小さくし,鼻口腔瘻を閉鎖するとともに顎裂部骨移植術部を十分な粘膜で被覆するよう術式を工夫した。比較的良好な結果が得られ,患者と家族は満足している。
  • 井村 英人, 新美 照幸, 藤原 久美子, 南 克浩, 古川 博雄, 加藤 大貴, 森 明弘, 大野 磨弥, 原田 純, 夏目 長門
    2014 年 39 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2014/06/14
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    小児の気管最狭窄部は声門下の輪状軟骨部であり,新生児,小児における気管狭窄はこの部位で好発する。今回,我々は声門下気管狭窄を認め,挿管困難であったため,3ヶ月間待つことで,気道狭窄の改善が得られ,手術を行い,術中術後特に問題なく経過することができた口唇顎裂の一例を経験した。
    患者は,1ヶ月の女児。家族歴,既往歴に特記事項はなかった。在胎39週,2290gにて出生,Apgar score 10/10であった。左側口唇顎裂にて紹介受診となる。初診時体重3270gで体格は小柄であるが栄養状態は良好であった。喘鳴や陥没呼吸など呼吸器症状,心疾患も認めず,左側口唇顎裂の診断の下,哺乳指導を開始し,体重増加を待ち,生後7ヶ月,5960gで口唇形成術を予定した。
    術前の胸部X線写真では,異常所見なく,また小児科,麻酔科診察でも特記事項なかったが,麻酔導入時,気管内挿管を試みたが挿管できず,声門下数mmのところで挿入に抵抗を認めた。声門下の気管狭窄の可能性および抜管後の気道浮腫の発生を危惧し,手術延期とした。帰室後,特に呼吸器症状を認めず,翌日退院となった。
    画像所見にて,声門下で気道狭窄を認めたことから,成長を待つこととし,1歳3ヶ月,体重7505gとなったところで口唇形成術を施行した。
    麻酔導入時,特に抵抗なく挿管できた。術後も呼吸器症状はなく,術後8ヶ月で経過良好である。本症例では,声門下狭窄が軽度であり,術前に把握することは難しいと考えるが,成長を待つことにより,手術は可能であった。
Japancleft委員会報告
  • ―日本口蓋裂学会Japancleft委員会活動報告―
    齋藤 功, 須佐美 隆史, 朝日 藤寿一, 槇 宏太郎, 吉村 陽子, 鈴木 茂彦, 後藤 昌昭, 小野 和宏, 峪 道代, 藤原 百合
    2014 年 39 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2014/06/14
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    A seminar on 5-Year Olds' Index hosted by the Japancleft Committee, Japanese Cleft Palate Association took place at the Sanjo Conference Hall, the University of Tokyo on July18-19, 2012. The purpose of the seminar was to provide the opportunity to have an exercise in assessing dental arch relation in patients aged 5 years with unilateral cleft lip and palate. Dr. Nikki Atack and Prof. Jonathan Sandy who had developed the index were invited from the University of Bristol as the lecturers at the seminar. The number of participants was over 80 from various special fields such as plastic surgery, oral surgery, pediatric dentistry and orthodontics. A total of 355 dental models were collected from participating institutions and were employed for evaluation training. As a result of intra-examiner agreement and agreement with Gold standard, almost all delegates obtained an agreement score of 0.80 or above, which would be very suitable and able to assess 5 year olds' models. Although the models collected were not selected based upon critical inclusion criteria, the result of assessment of the Japanese models was very analogous to that of UK Pre-CSAG (Clinical Standard Advisory Group). We hope that the present seminar would be helpful for the improvement of treatment outcomes in patients with cleft lip and palate.
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