【緒言】当センターでは顎裂部骨移植術(BG)にあたり,矯正歯科医と口腔外科医が相談,術前矯正治療や手術時期を決定している。今回,われわれの行ってきたBGについて後方視的検討を行った。
【方法】2007~2010年にBGを施行した片側性唇顎裂(以下UCLA)27例,片側性唇顎口蓋裂(以下UCLP)58例を対象とし,性別,手術時期,顎裂幅,患側側切歯の有無,手術時患側側切歯の萌出,手術時患側および健側犬歯の萌出,手術時患側および健側犬歯の歯根形成,移植骨量,骨形成について調査し,UCLA群とUCLP群間で比較検討した。
【結果】1.UCLA群は男児13例,女児14例,UCLP群は男児35例,女児23例,手術時期はUCLA群118.4±20.5ヶ月(92~171ヶ月),UCLP群119.1±14.7ヶ月(89~168ヶ月)で,両群間に有意差を認めなかった。
2.顎裂幅はUCLA群で歯槽頂部5.7±2.3mm,鼻腔底部12.1±4.5mm,UCLP群で歯槽頂部7.3±2.7mm,鼻腔底部14.6±3.9mm,移植骨量はUCLA群2.1±1.0g,UCLP群2.5±1.0gで,両群間に有意差を認めた(
p < 0.05)。
3.手術時に患側犬歯は,UCLA群8例,UCLP群5例で萌出,手術時にUCLA群で患側犬歯萌出症例が有意に多かった(
p < 0.05)。
4.犬歯歯根形成が1/2以上であったものは,患側でUCLA群14例,UCLP群11例,健側でUCLA群13例,UCLP群12例で,患側,健側ともUCLA群で犬歯の歯根形成が有意に早かった(
p < 0.05)。
5.EnemarkらのLevel 2以上は,UCLA群96.3%,UCLP群98.3%で,骨形成は両群間に有意差はなかった。
【考察】UCLA群とUCLP群間で顎裂幅,移植骨量,手術時患側犬歯の萌出と,患側および健側の犬歯歯根形成に有意差を認めたが,両群とも骨形成は良好であった。
抄録全体を表示