口唇口蓋裂患者の顎裂への二次的自家腸骨海綿骨骨髄(PCBM)とハイドロキシアパタイト(HA)穎粒の混合移植術の有用性について検討を行った。対象は,1987年から1996年に九州大学歯学部附属病院第1口腔外科において,13歳以上で骨移植術を受けた72例である。対象には,PCBM単独移植術を受けた42例49顎裂,およびPCBMとHA混合移植術を受けた30例35顎裂が含まれていた。資料は骨移植術前,術直後ならびに術後6か月以上経過後に撮影されたX線写真を用い,混合移植術が年長者に施行されたことから,症例の抽出条件は13歳以上とした。術後成績の比較は,骨吸収程度,歯槽頂の高さの経時的変化および合併症状の出現頻度について検討した。
骨移植術後における移植骨の吸収の程度は,PCBM単独移植群では軽度吸収が53.1%,中等度吸収32.6%で,高度吸収が14.3%にみられた。一方,PCBMとHA混合移植群では軽度吸収が71.4%,中等度吸収が28.6%で,高度な骨吸収はみられなかった。移植骨の吸収の程度は,PCBM単独移植群に比べてPCBMとHA混合移植群でより軽度であった。歯槽頂の垂直的高さは,PCBM単独移植群に比べてPCBMとHA混合移植群でより良好な位置に維持される傾向にあった。術後合併症状は,創の膨開や移植材の脱落がPCBMとHA混合移植群でより高頻度に観察された。
以上の結果から,PCBMとHA混合移植は移植骨の吸収の防止に有効に働くと考えられ,本移植法が年長者での顎裂への二次的骨移植術後にみられる高度な移植骨吸収の有用な対策となりうることが示唆された。
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