日本口蓋裂学会雑誌
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25 巻, 3 号
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  • 緒方 克哉, 中村 典史, 鈴木 陽, 笹栗 正明, 本田 康生, 中島 昭彦, 大石 正道
    2000 年25 巻3 号 p. 215-223
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇口蓋裂患者の顎裂への二次的自家腸骨海綿骨骨髄(PCBM)とハイドロキシアパタイト(HA)穎粒の混合移植術の有用性について検討を行った。対象は,1987年から1996年に九州大学歯学部附属病院第1口腔外科において,13歳以上で骨移植術を受けた72例である。対象には,PCBM単独移植術を受けた42例49顎裂,およびPCBMとHA混合移植術を受けた30例35顎裂が含まれていた。資料は骨移植術前,術直後ならびに術後6か月以上経過後に撮影されたX線写真を用い,混合移植術が年長者に施行されたことから,症例の抽出条件は13歳以上とした。術後成績の比較は,骨吸収程度,歯槽頂の高さの経時的変化および合併症状の出現頻度について検討した。
    骨移植術後における移植骨の吸収の程度は,PCBM単独移植群では軽度吸収が53.1%,中等度吸収32.6%で,高度吸収が14.3%にみられた。一方,PCBMとHA混合移植群では軽度吸収が71.4%,中等度吸収が28.6%で,高度な骨吸収はみられなかった。移植骨の吸収の程度は,PCBM単独移植群に比べてPCBMとHA混合移植群でより軽度であった。歯槽頂の垂直的高さは,PCBM単独移植群に比べてPCBMとHA混合移植群でより良好な位置に維持される傾向にあった。術後合併症状は,創の膨開や移植材の脱落がPCBMとHA混合移植群でより高頻度に観察された。
    以上の結果から,PCBMとHA混合移植は移植骨の吸収の防止に有効に働くと考えられ,本移植法が年長者での顎裂への二次的骨移植術後にみられる高度な移植骨吸収の有用な対策となりうることが示唆された。
  • -Cheek lineの検討-
    布田 花子, 森田 修一, 山田 秀樹, 長谷川 暁子, 花田 晃治, 鍛冶 昌孝, 高木 律男
    2000 年25 巻3 号 p. 224-232
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    これまで上下顎移動術に伴う軟組織側貌の変化については,顎矯正手術に伴う硬組織の移動量と軟組織の移動量が必ずしも一致しないことが報告されている。しかしながら,そのほとんどが鼻尖から上唇にかけての変化や口唇に関するもので,顎移動術に伴って変化するcheek line(頬部軟組織外形線)に関する報告は少なく,定量的な報告はない。そこで,上下顎移動術を施行した前歯部反対咬合を呈する片側性唇顎口蓋裂患者において,cheek lineを含めた軟組織側貌の形態変化について検討した。
    対象は新潟大学歯学部附属病院にて上下顎移動術を行った前歯部反対咬合を呈する片側性唇顎口蓋裂患者12例(男性4名,女性8名)であり,(1)上顎Le Fort I型骨切り術を施行した7例(上顎全移動群)と,(2)患側のみのLe Fort I型骨切り術を施行した5例(上顎片側多動群)の2群に分類した。
    資料として手術前および手術後の側面セファログラムを用いた。硬組織軟組織の計測項目に加えてcheeklineの角度および前後的変化を計測し,軟組織側貌の形態変化について検討した。
    結果としてcheek lineの変化は,上顎全移動群,上顎片側移動群ともに,下眼瞼下部より鼻尖の高さにかけては前方へ傾斜し,鼻尖の高さから下の方では後方に傾斜した。このことから,cheek lineは前方へ凸の形態を呈するようになり,軟組織側貌の改善が認められた。
  • -軽度鼻咽腔閉鎖不全症例について-
    原 久永, 舘村 卓, 和田 健
    2000 年25 巻3 号 p. 233-238
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    頭部正面位において破裂音[p〓]発音時に鼻咽腔閉鎖が得られるものの,会話時あるいは単音発音時に軽度閉鎖不全が認められる軽度鼻咽腔閉鎖不全症例において,頭位を変化させることが,発音活動時の口蓋帆挙筋活動にどのような影響を与えるかを検討した。実験は,鼻咽腔内視鏡検査によって軽度鼻咽腔閉鎖不全症と判定した口蓋裂術後症例5名を対象に行った。口蓋帆挙筋活動は,被験者の頭部正面位,前屈位ならびに後屈位の3条件下において測定した。その結果,頭部前屈位と頭部正面位での口蓋帆挙筋活動に有意差は認められなかったものの,頭部後屈位の口蓋帆挙筋活動は頭部正面位,前屈位と比較して有意に大きな値を示した。すなわち,頭位の変化によって発音活動時の口蓋帆挙筋活動は影響を受け,頭部を後屈したときには頭部を前屈あるいは正面を向かせたときと比較して,大きな口蓋帆挙筋活動が必要であることが示唆された。
  • 山本 貴和子, 内山 健志
    2000 年25 巻3 号 p. 239-259
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    片側口唇裂に対する口唇形成術は近年,著しい進歩を遂げたが,自然に見える対称的な外鼻と口唇を形成することは,特に完全裂ではいまだ難しい。手術結果を向上させるためには,口唇顎口蓋裂児の顔面と上顎の変形の特徴を三次元的に正しく把握しておくことが必要である。レーザーによる非接触式三次元デジタイザを使用して,口唇形成術直前に採取した20名の片側完全口唇顎口蓋裂患児の顔面と上顎の模型を,同一座標軸で計測を行った。ついで顔面変形と上顎変形との関係,および口唇破裂部の位置と破裂の程度について各種計測と解析を行い,次のような結果を得た。
    顔面変形と上顎変形との関係については,顔面の項目である破裂内外側Cupid弓頂点の上下差が上顎の項目との間で最も高い寄与率を示した。次いで鼻尖の位置が,上顎の因子から強い影響を受けていることが示唆された。また,顔面変形に強く影響を与える上顎の因子は,上唇小帯付着部の位置と健側患側segmentの前後差であった。これらのことより,顔面軟組織の変形は上顎の骨格性の変形に影響を受けることが示唆された。
    口唇破裂部の位置と破裂の程度については,それらに関する項目のデータの分布はほぼ正規分布に近い分布といって差し支えなく,特別な種類や型を示すものではなかった。
  • -装置装着前後における顎形態の比較-
    村松 裕之, 市川 和博, 赤松 正, 西村 正樹, 谷野 隆三郎, 長田 光博
    2000 年25 巻3 号 p. 260-276
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1998年6月から1999年5月までに東海大学医学部付属病院形成外科に来院した片側完全唇顎口蓋裂4例,両側不完全唇顎口蓋裂1例,両側完全唇顎口蓋裂3例の計8症例に対し,pin retentionを応用した2種類のLatham ApPliance,すなわちDento-Maxillary Advancement Appliance(以下DMA装置)およびElastic Chain Premaxillary Repositioning Appliance(以下ECPR装置)を適用して初回口唇閉鎖手術前における顎矯正治療を施行,装置装着前後における顎形態の比較により以下の結果が得られた。
    1.片側完全唇顎口蓋裂および両側不完全唇顎口蓋裂症例に対してはDMA装置を口腔内に装着し,一日0.5mmの顎移動を行った。これにより,1)開大した顎裂幅の縮小と,2)正中を越えて大きく偏位したgreater segmentとcollapseを来したlesser segmentを短期間に正常位に近く整復することができ,両segmentの歯槽堤はbutt-joint型あるいはそれに近い形態となり,歯槽弓の対称性が得られた。
    2.両側完全唇顎口蓋裂症例に対してはECPR装置を口腔内に装着し,elastic chainにより両側各90gの力でpremaxillaを牽引した。これにより1)前方に突出したpremaxillaの後退と,2)両側の顎裂幅の縮小や,必要に応じてcollapseを来した左右maxillary segmentの側方拡大を行うことにより,premaxillaと両maxillary segmentの位置関係を正常位に近く整復することができた。また側面頭部X線規格写真を用いての計測によっても,A点の大きな後退が認められた。
  • -pushback法との比較-
    木村 智江, 宇田川 晃一, 北川 裕子, 野田 弘二郎, 今富 摂子, 加藤 正子
    2000 年25 巻3 号 p. 277-285
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    千葉県こども病院形成外科では1989年からdouble opposing Z-Plasty(Furlow法)を軟口蓋裂に行ない,1992年からは術式を工夫して全ての裂型に施行している。今回,Furlow法による初回口蓋形成術を行った口蓋裂症例39例(Furlow群)の言語成績を調査した。これを粘膜骨膜弁によるpushback法を施行した口蓋裂症例25例(pushback群)の言語成績と比較した。手術は同一の術者が行ない,鼻咽腔閉鎖機能と構音の評価は言語聴覚士が行なった。評価時年齢は両群とも大部分が4歳から5歳であった。その結果,1.良好な鼻咽腔閉鎖機能を獲得したのはFurlow群が82。1%,pushback群が76%でありχ2検定では手術法による有意差を認めなかった。唇顎口蓋裂と口蓋裂単独を分けて検定した場合も良好な鼻咽腔閉鎖機能獲得率に手術法による有意差を認めなかった。2.構音訓練を行なわずに正常な構音を獲得したのはFurlow群が66、7%,pushback群が48.0%であり,2検定では有意差を認めなかった。また,鼻咽腔閉鎖機能良好例のうち正常構音を獲得したのはFurlow群が75%,pushback群が47.4%でありχ2検定で有意差を認めた(χ2=3.986,df=1,p<.05)。3.鼻咽腔閉鎖機能良好例の構音障害は,Furlow群32例のうち口蓋化構音が12.5%,側音化構音が3.1%あった。pushback群19例には口蓋化構音が26.3%,側音化構音が31。6%あった。口蓋化構音と側音化構音の出現率はFurlow群の方に少ない傾向であった。以上から,Furlow法の言語成績はpushback法に劣らないことが示唆された。
  • 濱田 良樹, 飯野 光喜, 近藤 壽郎, 石井 宏昭, 高田 典彦, 佐藤 淳一, 中島 敏文, 村上 夏帆, 清水 一, 渡邊 英継, 黒 ...
    2000 年25 巻3 号 p. 286-291
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1994年~1999年の6年間に,鶴見大学歯学部付属病院第一口腔外科ならびに関連施設で施行された顎裂部骨移植に関して臨床統計的観察を行った。その結果,以下のような結論が得られた。
    1)総患者数は86例で,11歳以下の症例が22例25.6%,12~17歳が32例37.2%,18歳以上の成人症例が32例37.2%を占めていた。
    2)生着率は97.7%で,早期経過不良の2例はいずれも成人症例であった。成人症例への対応として,骨移植後の感染源となり得る歯と歯周病の管理が重要と考えられた。
    3)受診の動機としては,顎裂に関する他科からの紹介が86例中80例93.0%で,そのうち矯正歯科からの紹介が最も多く72.5%であった。一方,当初他疾患を主訴に来院したものが6例あり,いずれも顎裂部骨移植に関する知識は皆無であった。今後,関連各科との連携強化と患者への積極的な情報提供が必要と考えられた。
    4)顎裂部骨移植に関連する併用手術としては,顎矯正手術のほか,デンタルインプラントの埋入,口唇外鼻修正術などが,主に成人症例に対して施行されており,成人症例における顎裂部骨移植の臨床的意義が示唆された。
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