唇顎口蓋裂を伴う2組の一卵性双生児を経験したので,初診時資料をもとに双生児問で顎顔面および粛列弓形態について比較検討した.
卵性診断は,DNAの多型性を数多くのバンドからなる複雑なパターンとして検出するDNAフィンガ,_._.プリントを用いて行った.その結果,双生児問でDNAバンドパターンが完全に一致したことから,両組ともきわめて高い確率で0卵性であると診断した.
›症例第1組›女子双生児(年齢6歳11カ月)
姉:健常
妹:片側性不完全唇裂・口蓋裂(左側)
›症例第2組›
男子双生児(年齢6歳11カ月)
兄:両側性完全唇顎口蓋裂
弟:両側性唇裂(右側完全裂,左側不完全裂)・口蓋裂(右側完全裂,左側顎裂部のみ粘膜下裂)
症例第1組では,妹は姉に比較して上顎の著しい劣成長および後退位と上歯列弓の縮小を認め,破裂の存在と形成手術が上顎部の成長発育に影響を及ぼす要因と考えられた.また,妹の頭蓋基底角は開大傾向を示し,破裂や形成手術による影響が前頭蓋基底部にも及ぶ可能性が示唆された.
症例第2組においては,兄は弟に比較してpremaxillaの下方への偏位を認めた.また,兄の上歯列弓はV字型の著しV・狭窄を呈していた.破裂の程度の差や顎裂部における閉鎖術式の違いが兄弟のalveolar segmentsの位置的状態の差異に関係する要因として考えられた.
下顎の形態や位置に関しては,両組とも双生児問でほぼ類似していた.この結果は,資料採得時の年齢が低かったことや,双生児間で臼歯部対咬接触歯数に差がなかったためではないかと推察された.
抄録全体を表示