目的:本研究の目的は,口唇口蓋裂患者における犬歯の萌出に対して,二次骨移植がいかに関与しているかに関し,萌出前の犬歯と裂隙の位置関係に着目して検討することである℃資料ならびに方法:犬歯の萌出前に骨移植術を行った21名(22歯;骨移植群),骨移植術を行わなかった16名(17歯;非移植群),および非裂側の犬歯(31歯;対照群)を含む合計37名の口唇口蓋裂患者の犬歯(70歯)の萌出について検討した。資料として,犬歯の萌出前と萌出後に撮影したオルソパントモグラムを用い,裂側の犬歯については,萌出前に裂隙に近接しているもの(groupI)と離れているもの(groupII)の2群に分けた。犬歯の歯軸と左右眼窩下点を通る直線のなす角を犬歯角とし,また,萌出後の歯槽骨の高さを評価し,検討した。結果:1.骨移植群と非移植群の問には萌出前の犬歯角に有意差を認めなかったが,骨移植群(p<0.05)および非骨移植群(p<0.01)と比べ対照群は有意に大きな値を示した。2.犬歯角の萌出前後の変化については,移植群では有意差を認めなかったが,非移植群(p<0.01)および対照群(p<0.0001)においては,萌出後に有意に大きな値を示した。3.萌出前後の犬歯角の変化について,骨移植群と非移植群で比較すると,groupIにおいては,骨移植群において有意に小さな値を示したが(p<0.05)が,groupIIにおいては2群間に有意差を認めなかった。4.萌出後の犬歯を支える歯槽骨の高さに関しては,groupIとgroupIIのいずれにおいても,骨移植群と非移植群の問に有意の差を認めなかった。結論:これらの結果より,裂隙に近接する犬歯(groupI)は,骨移植を行った症例では萌出前の歯軸傾斜を変えずに萌出するが,骨移植を行なわない場合は皮質骨の存在により,より垂直的に萌出する傾向が認められた。一方,顎裂から離れている犬歯(groupII)においては,骨移植の有無による萌出方向の変化の違いを認めなかった
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