昭和大学形成外科において,1977-1981年の5年間に口蓋裂の初回手術を行った患者について,鼻咽腔閉鎖機能と構音の成績を調査した.対象は243例で,両側性唇顎口蓋裂41例,片側性唇顎口蓋裂113例,硬軟口蓋裂31例,軟口蓋裂58例である.初回手術年齢は1歳未満が13例,1歳一2歳が211例,2歳以上が19例である.初回の手術法は,243例中1例を除いてpushback法で行った.なお,術者は複数である.
鼻咽腔閉鎖機能の判定は,音声言語の聴覚判定,blowing検査,口腔視診,x線検査,鼻咽腔ファイバー検査により,良好,軽度不全,不全の3段階に分類した.スピーチは,開鼻声と異常構音について,2人の言語治療士により,聴覚ならびに視覚により判定した.最終評価年齢は5歳一6歳が大部分であった.
その結果,鼻咽腔閉鎖機能が良好であったものは216例で全体の約89%であった.また,軽度不全が17例,不全が10例であった.不全例全例と軽度不全の4例の計14例6.1%が口蓋の再手術を必要とした.鼻咽腔閉鎖機能は裂型別にみると,両側性唇顎口蓋裂,硬軟口蓋裂において,良好例の比率がやや低かった.また,初回手術年齢との関係では,1歳未満手術例はすべて良好であり,手術年齢が高い群のほうが,軽度不全,または不全例が増える傾向がみられた.
正常なスピーチは108例で全体の44.5%であった.構音障害の発現頻度は,243例中125例,51,4%であった.これを裂型別にみると,両側性唇顎口蓋裂が最も高く,以下,片側性唇顎口蓋裂,硬軟口蓋裂,軟口蓋裂の順であり,裂の程度が重度な程,構音障害の発現頻度は高かった.また,初回手術年齢別にみると,年齢の高い群の方が,構音障害の発現頻度が高かった.構音障害の種類は,口蓋化構音が最も多く,以下,側音化構音,声門破裂音の順であった.
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