日本口蓋裂学会雑誌
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10 巻, 2 号
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  • 菅井 敏郎
    1985 年 10 巻 2 号 p. 101-129
    発行日: 1985/12/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    構音に際しての鼻咽腔閉鎖運動の適時性について解明する目的で,NPF-Video装置を考案し,正常人(20名)ならびに鼻咽腔閉鎖不全患者(20名)の鼻咽腔閉鎖運動の時間的制御の分析を行った.さらに,鼻咽膣閉鎖不全患者に咽頭弁移植術を施行し,その予後と閉鎖運動の時間的制御との関係を検討した.
    1.音声波形開始時点を基準とした鼻咽腔閉鎖時点(TC),最大運動時点(TM)を分析した結果,正常人の鼻咽腔は,各語音の構音に際して,語音に応じた適切な時間的制御(適時性)のもとに閉鎖や最大運動という機能を営んでいることが明らかとなった.
    2.鼻咽腔閉鎖不全患者では,単に空間的な閉鎖不全を認めるのみでなく,閉鎖運動の時間的制御の面においても正常人群と異なる傾向を示し,その程度も多様であった.各症例毎にTMの測定値を正常人群の値と比較することにより,20名の患者を3群(A群6名,B群4名,C群10名)に分類することが可能であった.
    3.鼻咽腔閉鎖不全患者に咽頭弁移植術を施した結果,術前に母音のTMが正常人群のTMと近似していたA,B群の全10名は,術後,鼻咽腔閉鎖の獲得とともに閉鎖運動の時間的制御が正常人群に近似するようになり,聴覚上,語音の明瞭性の十分な改善を認めた.これに対しC群では,0部の症例を除いて鼻咽腔閉鎖を獲得したが,10名とも閉鎖運動の時間的制御が正常人群と異なる傾向を示し,語音の明瞭性の十分な改善を認めなかった.このことから,鼻咽腔閉鎖不全症の診断に際して,母音の最大運動時点(TM)を知ることが,予後を推測する上で重要な因子になるものと考えられた.
  • 拝田 龍之
    1985 年 10 巻 2 号 p. 130-160
    発行日: 1985/12/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患者の頭蓋顔面形態におよぼす先天的要因と後天的要因の影響の程度を明らかにするために,唇顎口蓋裂児123名の口唇形成手術時,口蓋形成手術時および4歳時の側貌および正貌の頭部X線規格写真について,破裂の部位と口唇の裂の完全度に基づいて分けた群問の比較を行い,さらに4歳時の非破裂児の資料との比較も行って,各破裂型における形態の推移を検討した.
    唇顎口蓋裂児は,口唇あるいは口蓋の形成手術前既に破裂の部位と口唇の裂の完全度に応じた特徴的な頭蓋顔面形態を示し,そのような特徴的な形態は手術が終了した後の4歳時においてもほとんど変化が無かった.すなわち術前術後を通して,口唇の裂を伴うものでは,口蓋前方部が上方に位置し,眼点は前頭蓋底に対して後方に位置し,左右眼窩間距離は大きく,上顎前歯は舌側へ傾斜していた.口唇口蓋いずれの裂も伴うものでは口蓋後方部も上方に位置していた.また,口蓋裂単独例では対照群,口唇あるいは口唇口蓋裂群に比べ,頭蓋から上顎にかけての前方への成長抑制が認められたが,口蓋の高さは対照群と差が無かった.そして,一般に口唇の裂が完全なものは不完全なものに比べ,術前から上顎の前方および下方への成長が劣っていた.
    術後傾向が変化したのは,上顎歯槽部幅径で,術前は破裂の部位が広範なもの程大きい値を示したが,術後差が無くなっていた.また,上顎前歯の舌側傾斜角の増加も,破裂の部位が広範なもの程小さい傾向を示した.
  • 岡崎 恵子, 加藤 正子, 鬼塚 卓弥, 角谷 徳芳, 松井 厚雄, 宇田川 晃一
    1985 年 10 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 1985/12/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    昭和大学形成外科において,1977-1981年の5年間に口蓋裂の初回手術を行った患者について,鼻咽腔閉鎖機能と構音の成績を調査した.対象は243例で,両側性唇顎口蓋裂41例,片側性唇顎口蓋裂113例,硬軟口蓋裂31例,軟口蓋裂58例である.初回手術年齢は1歳未満が13例,1歳一2歳が211例,2歳以上が19例である.初回の手術法は,243例中1例を除いてpushback法で行った.なお,術者は複数である.
    鼻咽腔閉鎖機能の判定は,音声言語の聴覚判定,blowing検査,口腔視診,x線検査,鼻咽腔ファイバー検査により,良好,軽度不全,不全の3段階に分類した.スピーチは,開鼻声と異常構音について,2人の言語治療士により,聴覚ならびに視覚により判定した.最終評価年齢は5歳一6歳が大部分であった.
    その結果,鼻咽腔閉鎖機能が良好であったものは216例で全体の約89%であった.また,軽度不全が17例,不全が10例であった.不全例全例と軽度不全の4例の計14例6.1%が口蓋の再手術を必要とした.鼻咽腔閉鎖機能は裂型別にみると,両側性唇顎口蓋裂,硬軟口蓋裂において,良好例の比率がやや低かった.また,初回手術年齢との関係では,1歳未満手術例はすべて良好であり,手術年齢が高い群のほうが,軽度不全,または不全例が増える傾向がみられた.
    正常なスピーチは108例で全体の44.5%であった.構音障害の発現頻度は,243例中125例,51,4%であった.これを裂型別にみると,両側性唇顎口蓋裂が最も高く,以下,片側性唇顎口蓋裂,硬軟口蓋裂,軟口蓋裂の順であり,裂の程度が重度な程,構音障害の発現頻度は高かった.また,初回手術年齢別にみると,年齢の高い群の方が,構音障害の発現頻度が高かった.構音障害の種類は,口蓋化構音が最も多く,以下,側音化構音,声門破裂音の順であった.
  • 大山 紀美栄, 本橋 信義, 黒田 敬之
    1985 年 10 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 1985/12/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患者に対する矯正治療を裂型別に体系付けるという目的の下に,本報告は,唇顎裂患者について,歯,咬合の異常および顎態パタンの特徴を調査し,加えてそれらの患者に対してどのような処置方針がとられたかについても追跡調査を行った.
    資料は東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正科に来院した片側性唇顎裂33名,両側性唇顎裂8名の計41名である.
    個々の歯の異常に関しては,上顎中切歯に捻転を示すものが多く,次いで,上顎側切歯の綾小化と先天欠如が多いのが注目された.側面頭部X線規格写真の分析から,上顎前歯の舌側傾斜が認められたが,顎態パタンについては,両側性唇顎裂において上顎骨の前方位が認められた他には,対照群と変らなかった.
    これらの患者に対する矯正治療の方針は,主として上顎前歯の唇側移動や個々の歯の排列であることが多く,chincapや上顎顎外固定装置などの成長発育のコントロールを考えたものは,少数例であった.
  • 作田 守, 大前 博昭, 丹根 一夫, 山形 嘉明, 小田 佳朗, 孔 泰寛, 陳 明裕, 長滝 孝夫, 相馬 俊一
    1985 年 10 巻 2 号 p. 177-190
    発行日: 1985/12/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    形成手術を受けた唇顎口蓋裂患者は咬合異常を呈することが広く知られている.当然咀囑機能の障害が考えられるが,日常生活に見られる障害の実態についてはほとんど知られていない.そこで著者らはこの点についてアンケートにより実態調査を試みた.
    大阪大学歯学部付属病院矯正科を受診した唇顎口蓋裂患者のうち協力の得られた119名に対して調査を行った.対照には,本アンケート調査の結果を年齢別に検討することができなかったこと,また,アンケートの主旨をよく理解してもらえるようにとの配慮から,咬合に異常を認めない成人29名を用いた.
    調査対象となった患者の裂型は大別して片側性唇顎口蓋裂55%,両側性唇顎口蓋裂28%,唇顎裂と口蓋裂単独のもの17%で,口唇の初回形成手術の平均年齢は生後5か月,2次手術の平均年齢は5歳3か月,口蓋の形成手術はおおむね1回で平均年齢は2歳であった.全身成長は,身長・体重とも全国平均に比べて著しい差を認めないもののやや小さい傾向を示した.う蝕罹患率は非破裂者の対照群に比べ著しい差を認めなかったが,交叉咬合の発現率は著しく高く,前歯部・臼歯部ともに65-85%の被験者に発現した.叢生は前歯部とくに上顎前歯部に多くみられた.消化器系の症状では,胃痛・腹痛・下痢についてよくある・時々あると回答した患者の頻度が高く,対照群に比べて多かった.食事については,対照群に比べその速さが遅く,その量が少ない傾向を示した.
    以上のことから,唇顎口蓋裂患者の咀囑機能障害により,消化器系の症状が招来される可能性が示唆された.
  • 宮崎 正, 小浜 源郁, 手島 貞一, 大橋 靖, 高橋 庄二郎, 道 健一, 待田 順治, 河合 幹, 筒井 英夫, 下里 常弘, 田代 ...
    1985 年 10 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 1985/12/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    昭和56年-57年の口唇裂口蓋裂の発生率について全国15都道府県の1009産科医療機関を対象に調査を行い,以下の結果を得た.
    1.調査施設における全出産数(死産も含む)は384,230名で,そのうち口唇裂口蓋裂児は701名で発生率は0.182%であった.
    2.各裂型ごとの発生率は口唇裂0.052%,口唇口蓋裂0.086%,口蓋裂0.037%であった.
    3.調査地域を東日本と西日本に区分し,地域別発生率を比較すると,西日本の方がやや高率に本症が発生する傾向が見られた.
  • (4)口唇裂口蓋裂関係論文に引用されている参考文献の分析
    待田 順治, 上野 勝美, 西村 恵司, 坂井 伸五
    1985 年 10 巻 2 号 p. 196-205
    発行日: 1985/12/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    論文に引用されている参考文献を情報科学的に分析することは,その参考文献の価値を知る上でも,将来どのような文献や雑誌を参考にすべきかを知る上でも重要なことである.しかしそのような分析は莫大な労力を要するためか,ほとんど行われていない.本研究においては,日口蓋誌の第1-9巻に掲載されていた125編の論文に引用されていた3,294編の参考文献のうち雑誌に発表されていたもの(引用論文)2,905編を対象とし,その発表年やそれらが発表されていた雑誌(引用雑誌)の名称などを情報科学的に分析し,日口蓋誌論文主題(主題)との関連性もみた.主要な結果は以下のごとくであった.1.引用論文の多くは数種の雑誌に発表されたものであった.他方引用雑誌の大部分では5編以下の論文しか引用されていなかった.これらの傾向は欧文論文・雑誌に0層著明であった.2.多くの主題で引用頻度が高い雑誌は日口蓋誌,日口外誌,Cleft Palate J.,Plast,Reconstr. Surg.であり,主題によってはこれら以外にも引用頻度が高い雑誌があった.3.日口蓋誌論文1編あたりの引用論文数が多い主題は,和文引用論文では顎発育,発音,統計,合併症,欧文引用論文では顎発育,鼻咽腔機能,合併症であった.4.引用雑誌1誌あたりからの引用論文数が多い主題は,和・欧文引用論文とも,顎発育,鼻咽腔機能,発音,歯科矯正であった.5.和文引用論文の約70%は発表後約5年以内のものであったが,欧文引用論文では発表後約10-15年のものが約60%をしめていた.6.欧文引用論文の使用言語は,大部分が英語,少数がドイツ語で,それら以外はほとんどなかった.英語以外のものの発表年は英語のものよりも約10年以上古かった.
  • 1.CMIからみた口唇、口蓋裂児出産後の母親の心理
    深野 英夫, 夏目 長門, 鈴木 俊夫, 河合 幹
    1985 年 10 巻 2 号 p. 206-212
    発行日: 1985/12/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇,口蓋裂児出産後の母親の心理状態を知るために,CMI一健康調査表を用いて調査を行った.94名の母親について調査した結果,以下のような結論を得た.
    1.深町の判別基準を用いて母親の心理状態を判定した結果,文献における心理的正常者のCMI上の分布とほぼ同じ分布を得た.
    2.患児の性差について比較検討した結果は,女児を出産した母親の方が,領域III,IV群において高くなる傾向にある.
    3.この調査から,口唇,口蓋裂児の母親は心身症,神経症に陥るほどの影響はうけていないものと思われる.
    4.精神的項目の分析から,イライラした怒りやすい,また周囲の環境と不適応でなじめず,過敏な状態であるという母親の心理が得られた.
  • 1985 年 10 巻 2 号 p. 279a-
    発行日: 1985年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1985 年 10 巻 2 号 p. 279b-
    発行日: 1985年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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