動物臨床医学
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10 巻, 4 号
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Original Article
  • 永田 祥代, 山田 一孝, 上野 博史, 古林 与志安, 佐藤 基佳
    2002 年10 巻4 号 p. 171-177
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    カメの体幹部は甲羅に覆われているため、単純X線撮影では得られる情報が少ない。そこで今回、ミシシッピーアカミミガメに対するX線CTによる断層撮影検査の有用性について検討した。まず基礎的検討として、臨床的に健康な6匹を用い、軟部組織、肺および骨のCT値を計測し、その結果からそれぞれの組織の観察に適したウインドウを設定した。また、病理学的検索の結果、全ての個体において肝臓の脂肪変性が認められ、肝臓のCT値が低い個体ほど変性の程度が大きく、CT値の高い個体ほど変性の程度が小さかった。このことから、肝臓のCT値の差により脂肪変性の程度を診断することが可能であった。さらに、臨床例についてCT検査を実施したところ、それぞれ、消化管内異物、肺炎および卵塞の診断が可能であった。以上の成績より、ミシシッピーアカミミガメの臨床診断において従来の単純X線撮影では読影が困難であった体幹部軟部組織について、CTにより詳細な情報を得ることが可能であった。よって、カメの臨床診断にはCTによる断層画像診断の積極的な利用が望まれる。
  • 上地 正実, 若尾 義人, 高橋 貢
    2002 年10 巻4 号 p. 179-184
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    薬剤性腎障害から腎不全ヘ移行する時期を尿中NAG測定によって検出する目的で実験を行った。ラット(体重235~255g)を対照群(n=7)ならびにゲンタマイシン(GM)群(n=14)の2群に分け、前者に生理食塩水(0.1ml/100g-体重/day), SID, IP)後者にGM50mg/kg-体重/day(0.1ml/100g-体重/day), SID, IP)を7日間連続投与した。GM群の血清クレアチニンならびに尿素窒素は、投与7日に上昇した。腎機能が比較的良好に維持されたGM連続投与2日においては、投与後の尿中NAG排泄が一過性に増加したが、一定時間後に投与前値に回復する傾向が認められた。また、NAG排泄量がGM投与前値に回復しなかった場合は、腎障害が重篤である可能性が示された。従来は、腎機能の日内変動によるNAG測定値への影響を最小限にするため24時間尿を採取することが重要とされていた。しかし、本実験では、腎不全の前段階を24時間尿中のNAGでは検出できないことが明らかになった。したがって、腎毒性薬物による腎不全への進行の前段階を捉えるためには、投薬直前の随時尿中NAG測定が有用である可能性が示唆された。
Case Report
  • 土屋 彰彦, 戸野倉 雅美, 三ツ村 麻美, 柴崎 祐也, 高山 和之, 廣田 賢司, 大河原 崇, 折原 世津子, 篠部 義信, 田中 暁 ...
    2002 年10 巻4 号 p. 185-188
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    9歳齢の雄の日本猫に頸部腹側の腫脹を認めた。臨床症状および諸検査所見から、甲状腺の肥大を伴う甲状腺機能亢進症と臨床診断し、抗甲状腺剤の投与を開始した。約3カ月間投与を続けたが、頸部腹側がさらに腫脹したため、外科的に甲状腺を摘出した。病理組織学的検査の結果、甲状腺癌と診断された。本症例は、1年間にわたり術後も抗甲状腺剤の投与を継続し、現在まで頸部の腫脹を認めず、良好に経過している。
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