動物臨床医学
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31 巻, 4 号
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特別寄稿
原著
  • 藤村 正人, 宇野 理恵, 綿貫 和彦, 山田 茂夫
    2022 年 31 巻 4 号 p. 127-132
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    舌下免疫療法(SLIT : sublingual immunotherapy)の有効性および安全性を評価するために,オープン化前向きパイロット臨床トライアルを行った。血清抗原特異的 IgE 検査(Heska アラセプト,富士フイルム VETシステムズ(株))によるコナヒョウヒダニ (Df)と ヤケヒョウヒダニ(Dp)抗原の何れかに陽性反応を示した犬アトピー性皮膚炎(CAD)の15例を対象とした。SLITは導入相と週1回の維持相6カ月の期間に分けた。臨床症状の変化は,犬アトピー性皮膚炎症度指数(CADESI-4)を用いて,治療前をベースラインとして治療後と比較した。抗原液は,DfとDpを混合したハウスダストマイト抗原の国内医薬品(治療用ダニアレルゲンエキス100,000 JAU/ml,鳥居薬品(株),日本)を用いた。結果,2 例の犬が脱落し,13 例の犬がトライアルを終了した。トライアルを終了した13症例のCADESI-4 のベースラインは平均値±SDが40.3±25.9であった。SLITを行った6 カ月後の CADESI-4は,22.5±22.0 であった。ベースライン値と比較して6カ月後は,53.8±39.2 %(46.2 %改善した)に減少した(p < 0.01)。13 症例の内 10症例(77%)は,CADESI-4が30 %以上と著しく改善して,2 症例は (15 %) はCADESI-4 が悪化した。このトライアルの間,アナフィラキシーのような重大な副反応は観察されなかった。このことから,CAD に対する国内医薬品 のハウスダストマイト抗原液によるSLITは犬に安全であり,6 カ月間の効果が CADESI-4の 減少から示唆された。

症例報告
  • 関 瀬利, 鈴木 周二, 原 康
    2022 年 31 巻 4 号 p. 133-139
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    先天性肝外門脈体循環シャントの外科的治療を受けた14頭の犬を対象にバランス麻酔法を検討した結果,レミフェンタニルの持続静脈内投与(投与速度;18-42 μg/kg/hr)とイソフルラン吸入麻酔(終末呼気濃度;0.77-1.19%)で円滑に外科的治療が実施可能であった。血清アンモニア濃度の中央値(最大値―最小値)は術前130 μg/dl(16-304)から術後49 μg/dl(11-135)に,(p = 0.0295),血清総胆汁酸濃度は術前73.6 μmol/l(6.3-44.1)から術後24.4 μmol/l(2.6-97.9)とそれぞれ有意に低下した(p = 0.0058)。麻酔中には低血圧,低体温,頻脈,および低炭酸ガス血症を認め,麻酔後48時間後までには神経症状(発生率50 %),消化器症状(29 %),および腎泌尿器症状(7 %)が観察されたが、深刻な麻酔関連偶発症を引き起こすことなく安全に実施可能であった。

  • 森田 真央, 亀田 景子, 島袋 泰治, 橋本 砂輝
    2022 年 31 巻 4 号 p. 140-144
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    下顎皮膚に認めた難治性の腫瘤を主訴に3歳のトイプードルが来院した。来院時には腫瘤周囲に複数の瘻孔を形成しており,活動性や食欲の低下が認められた。瘻孔の浸出液よりPasteurella multocida が分離同定されたため,歯科疾患を疑い,全身麻酔下で口腔内の精査を実施した。その結果,両側下顎第1後臼歯の奇形歯の存在と,歯科X線写真における歯根周囲の重度の骨透過像を認めた。以上より,下顎皮膚の病変は奇形歯による外歯瘻と診断し抜歯を行った。術後経過は良好である。本症例により,顎顔面の皮膚に炎症性病変を認めた場合,若齢であっても歯科疾患の可能性を想定し,鑑別のため口腔内の精査及び歯科X線撮影による評価を実施する必要があると考えられた。

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