舌下免疫療法(SLIT : sublingual immunotherapy)の有効性および安全性を評価するために,オープン化前向きパイロット臨床トライアルを行った。血清抗原特異的 IgE 検査(Heska アラセプト,富士フイルム VETシステムズ(株))によるコナヒョウヒダニ (Df)と ヤケヒョウヒダニ(Dp)抗原の何れかに陽性反応を示した犬アトピー性皮膚炎(CAD)の15例を対象とした。SLITは導入相と週1回の維持相6カ月の期間に分けた。臨床症状の変化は,犬アトピー性皮膚炎症度指数(CADESI-4)を用いて,治療前をベースラインとして治療後と比較した。抗原液は,DfとDpを混合したハウスダストマイト抗原の国内医薬品(治療用ダニアレルゲンエキス100,000 JAU/ml,鳥居薬品(株),日本)を用いた。結果,2 例の犬が脱落し,13 例の犬がトライアルを終了した。トライアルを終了した13症例のCADESI-4 のベースラインは平均値±SDが40.3±25.9であった。SLITを行った6 カ月後の CADESI-4は,22.5±22.0 であった。ベースライン値と比較して6カ月後は,53.8±39.2 %(46.2 %改善した)に減少した(p < 0.01)。13 症例の内 10症例(77%)は,CADESI-4が30 %以上と著しく改善して,2 症例は (15 %) はCADESI-4 が悪化した。このトライアルの間,アナフィラキシーのような重大な副反応は観察されなかった。このことから,CAD に対する国内医薬品 のハウスダストマイト抗原液によるSLITは犬に安全であり,6 カ月間の効果が CADESI-4の 減少から示唆された。
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