人の医療ではCT室内の散乱線量や散乱線分布に関する報告は数多くあるが,動物医療におけるCT撮影時の具体的な散乱線量の調査は見当たらない。そこで今回,動物病院におけるCT検査時のCT室内の散乱線量を測定した。実際の臨床現場で使用する撮影条件を用いてCT室内の散乱線空間マッピングを,頭部・胸部・腹部・骨盤撮影ごとに作成した。マッピングの測定は,床からの高さは50,100,150,200 cmの4平面で行い,全260箇所で行なった。その結果,骨盤撮影時のガントリー中心から尾側50 cm離れた寝台上で最大の133 μSvの散乱線量が記録された。また,床からの高さ100 cmが最も散乱線が大きく,次いで150,50,200 cmの順に小さくなった。ガントリー脇は最も散乱線量が小さいエリアとなった。ガントリーの100 cm四方は散乱線量が大きく,寝台から離れるに従って小さくなった。
8カ月齢の子猫が採食後の吐出,発育不良を主訴に来院した。バリウム造影X線検査において心基底部より頭側の食道拡張を認めたため,精査のためCT検査を行った。その結果,血管輪異常による食道狭窄とそれに併発した狭窄前方部の食道拡張と診断した。症例の増体重を試みた後,異常血管切除術を実施した。そして,術後5日間の経鼻カテーテルによるチューブフィーディングを行い退院した。現在,第79病日が経過しており,吐出の頻度が激減し発育の改善が認められている。
低ナトリウム血症を伴うACVIM分類ステージCの僧帽弁閉鎖不全症犬に対してアルギニンバソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンを投与した。投与前134 mmol/lであった血漿ナトリウム濃度はトルバプタン投与から7週間後に147 mmol/lまで上昇した。トルバプタン投与に伴い,左室拡張末期径およびE/Emは29.9 mmから27.8 mm,19.0 から11.6にそれぞれ減少した。これらの結果はトルバプタンの水利尿効果により前負荷の軽減と電解質の正常化が同時に行われたことを示した。
うっ血性心不全を呈する僧帽弁閉鎖不全症(MR)の犬において,予後指標となりうる心臓超音波検査パラメータが報告されている。しかしながら,急性肺水腫の犬において,直ちに検査を実施することが困難な場合もある。そこで,肺水腫を呈したMR犬において,ピモベンダン開始後の生存期間と関連する心臓超音波検査以外の予後因子について回顧的に調査した。肺水腫を呈したMR犬25頭が調査対象となった。ピモベンダン開始時の発咳(P < 0.01),心雑音の強度(P < 0.01),びまん性肺水腫の有無(P < 0.05)およびピモベンダン開始前の利尿薬投与期間(P < 0.05)は,生存期間と有意に関連した。また,びまん性肺水腫を呈した個体群の生存期間は,非びまん性肺水腫を呈した個体群と比較し有意に短縮していた(それぞれ219および883日; P < 0.01)。したがって,これらをピモベンダン開始後の予後因子として考慮する必要がある。
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