動物臨床医学
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21 巻, 3 号
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特別寄稿
原著
  • 今本 成樹, 岩崎 隆, 三好 紀彰, 三好 喜久雄, 増田 国充, 二本松 昭宏, 渡辺 修一郎, 山下 洋平, 射場 満, 今本 三香子 ...
    2012 年 21 巻 3 号 p. 96-102
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2013/10/10
    ジャーナル フリー
    一般病院に来院した犬1,104 頭,実験用ビーグル犬74 頭,2 つの繁殖場の犬120 頭の3 群に分け,Heat extract enzyme-linked immunosorbent assay(HE-ELISA)およびマイクロプレート凝集反応(MA)を用いて,抗Brucella canis B.canis)抗体の保有状況の調査を実施した。一般病院群における検査においては,6 頭(0.54%)が抗B.canis 抗体陽性であり,1,073 頭(97.2%)は抗体保有が確認されなかった。実験用ビーグル群とカイ2乗検定を用いて比較すると,p-value < 0.0001 となった。 抗体陽性犬の6 頭のうち4 頭が繁殖場から引き取られた犬であった。この6 頭全てにおいて臨床症状は確認されなかった。一方,繁殖場の犬においては,26 頭(21.7%)が抗B.canis 抗体陽性と判定され,流産や精巣炎といったブルセラ症を疑わせる臨床症状を示す犬は抗体陽性犬のうち3 頭に過ぎなかった。 B.canis 感染を診断するにあたり,感染してからの期間,治療歴,発情,検査方法により診断結果に差が生じることや, B.canis 感染犬が必ずしも臨床症状を示すわけではないことは,既に知られている。今回の結果でも,抗体陽性犬の全てが,臨床症状を示したわけではない。そのため,B.canis 感染の検査においては,定期的・複数回の臨床症状の観察やB.canis 抗体検査を実施することが望ましい。B.canis 感染の蔓延を防ぐための犬のブルセラ症の監視・管理方法については,一般病院においては,感染症例に遭遇することは今回の結果からも非常に少ないと考えられるので,繁殖場をはじめとした集団飼育施設における管理について,今後さらなる対応を検討する必要があると考えられる。
  • 印牧 信行, 市川 陽一朗, 木下 徹, 住吉 俊夫, 浦野 岩雄, 田中 一則, 藤野 和彦
    2012 年 21 巻 3 号 p. 103-108
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2013/10/10
    ジャーナル フリー
    ジフルプレドナート(以下,DFBA)は,べタメタゾン(以下,BM)に匹敵する強力な抗炎症効果を示すプレドニゾロン誘導体である。今回,犬前部ぶどう膜炎における0.05%DFBA 乳濁点眼液と0.1%BM 配合点眼液の有効性に関する調査を実施した。前部ぶどう膜炎症例₅₁頭₅₁眼を用いた両点眼液の有効率は,DFBA で86.2%(25/29),BM で86.4%(19/22)であり,両点眼液に違いがなかった。臨床症状では,2週点眼の両点眼液は流涙,羞明,眼瞼痙攣,眼脂で改善がみられた。また,前部ぶどう膜炎の臨床所見である毛様充血と前房混濁でも,両点眼液で改善がみられた。 しかし,縮瞳,虹彩充血および虹彩の腫脹では,DFBA 点眼で改善されたが,BM点眼では改善されなかった。眼圧上昇はDFBA ではなかったが,BMでみられた。DFBA は,BMより虹彩への浸透性が高いことが示唆された。両点眼液の副作用はみられなかった。以上から,犬前部ぶどう膜炎におけるDFBA 点眼液は,BM点眼液に匹敵する効果があった。
症例報告
  • 竹中 雅彦, 佐藤 れえ子, 山根 義久
    2012 年 21 巻 3 号 p. 109-116
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2013/10/10
    ジャーナル フリー
    細菌性膀胱炎の治療中およびノミと回虫の駆除後に尿中蛋白,尿円柱の増加,尿濃縮機能低下などが認められた猫2頭を薬剤性腎障害と診断した。症例1は抗生剤選択の誤りと過剰投与が原因として考えられ,尿細管障害が認められた。治療は適切な抗生剤と投与量により治癒した。症例2は若齢動物への寄生虫駆除剤投与が中毒量に達し,糸球体,尿細管,間質障害が強く認められた。治療において,ステロイドに著明に反応したが尿濃縮機能障害が残存した。薬剤性腎障害の背景として症例1は,転院するごとに抗生剤の投与量が増加したことが推察され,症例2においては,腎機能が未発達な若齢動物への薬剤の過剰投与が考えられた。臨床獣医師にとって薬剤の投与量は慎重に決定されるべきである。
  • 岡澤 悦子, 関 拓真, 村田 香織, 村田 元
    2012 年 21 巻 3 号 p. 117-120
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2013/10/10
    ジャーナル フリー
    過去7 年間における当院で実施したパピークラスへの参加頭数は合計411 頭であった。参加犬種はトイ・プードル,チワワ,ミニチュア・ダックスフンドが多かった。その3犬種においてパピークラス参加群とパピークラス不参加群を比較したところ,その後の不妊・去勢手術実施率,ワクチン接種率,フィラリア予防率,年間平均来院回数に差がみられ,すべてにおいてパピークラス参加群の方が高くなった。以上からパピークラスに参加すると,子犬の社会化や正しいしつけの方法を伝えることができるだけでなく,健康管理に対する意識の高まりや,パピークラス終了後も継続して同じ動物病院を受診するというさまざまな効果が得られることが示された。
  • 古川 敬之, 塚田 祐介, 鈴木 学, 穴澤 哲也, 吉原 啓太, 前田 菜穂子, 林 計道, 福田 真平, 細川 昭雄, 圓尾 拓也, 杉 ...
    2012 年 21 巻 3 号 p. 121-125
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2013/10/10
    ジャーナル フリー
    グレート・ピレニーズ,去勢雄,6歳齢が左側鼻腔内からの出血を主訴に来院した。頭部単純X線検査にて左側鼻腔内の不透過性亢進を認めたことから,第1病日に頭部CT 検査および生検を行った。病理組織学的検査結果は骨肉腫であった。 進行度はWHO のTNM分類に基づき,T1N0M0と診断した。第24 病日に鼻腔内骨肉腫の減量手術を行った後,第29病日より高エネルギー放射線治療装置による放射線療法を36Gy/6 回/3週にて行った。第416病日,腐骨となった鼻骨片除去を行い,同時に鼻腔内粘膜の生検を行ったところ,骨肉腫の再発が認められた。第969病日,肺腫瘤および脾臓腫瘤を認め,第1012病日自宅にて死亡した。鼻腔内骨肉腫の犬に対して,減量手術および術後小分割放射線療法を行い,死亡までの2年9カ月良好な経過を得ることができた。
短報
  • 相馬 武久, 大日向 剛, 青木 恵美子, 栗田 克巳
    2012 年 21 巻 3 号 p. 126-129
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2013/10/10
    ジャーナル フリー
    全国5 箇所のペットショップの4~9週齢の臨床上健康な犬,合計155 頭の犬コロナウイルスⅠ型(CCoV- Ⅰ),Ⅱ型(CCoV- Ⅱ)および犬パルボウイルス2型(CPV-2)の感染状況をRT-PCR 又はPCRを用いて検討したところ,それぞれ84頭(54.2%),39頭(25.2%),4頭(2.6%)の直腸スワブからこれらウイルス遺伝子が検出された。この結果と我々が過去に同じ測定法で検討した1 歳未満の下痢症例での結果(Soma et al 2011)を比較したところ,CCoV- Ⅰの検出率は両者に有意差はなかったが(p>0.05),CCoV- ⅡとCPV-2 については今回の健常例が下痢症例に比べて有意に低い検出率であった(それぞれ47.5% p=0.0005,43.8% p<0.0001)。以上の結果からこれら3種のウイルス,特にCCoV-I とIIは少なからずショップ内に潜在しており,その中でCCoV- ⅡとCPV-2は重要な下痢因子であることが示唆された。
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