獣医学科5年生144名に対して6種の症例シナリオを用いた医療面接実習を実施し,言葉遣い,傾聴,共感,信頼関係,満足度を問うLikert尺度(5件法)での学生評価を模擬クライアントに求めた。回収された142名の評価票の因子分析により,これらの設問項目は単一因子から構成され,総得点を算出することのできる適切な指標であると判断された。学生の性別,臨床経験,症例シナリオによる各項目得点および総得点の差違を検証したところ,臨床系学生では共感に優れていたこと,跛行あるいは下顎腫瘤を主訴とした症例シナリオでは得点が低かったことが明らかとなった。
16歳8カ月齢と15歳10カ月齢の雑種猫の頸部腫瘍を外科的に摘出した。病理組織学診断にて,甲状腺癌と診断された。1例は血管浸潤と被膜外浸潤も認められたが,2例とも摘出後に再発と転移は認められず,術後1年以上生存した。欧米では猫の甲状腺癌は非常にまれで,甲状腺腫瘍の2%程度と報告されており,その場合は再発および肺やリンパ節への転移が高率に起こり,予後不良と言われている。これに対して,日本では欧米と甲状腺癌の診断基準の差や,発生する腫瘍の組織型差により臨床経過が良い可能性があると示唆された。
雄,1歳のタイハクオウムが採食困難と唾が出るとの主訴で来院した。初診時,明らかな外被系異常は認められなかったが,臨床経過の中で進行性の嘴の過長および羽毛異常を認めた。臨床症状,各種臨床検査所見およびPCR検査によりオウム嘴羽病(PBFD)と診断した。嘴のトリミング,インターフェロン製剤および抗菌薬投与などの支持療法を行ったところ,一時的に自力採食が可能となった。しかしながら,嘴の壊死を中心とした外被系症状は進行し,免疫不全により第314病日に死の転帰をとった。
11歳の雑種犬の健康診断で末梢血リンパ球の著しい増加と体表リンパ節の腫大を認めた。末梢血液塗抹では小型リンパ球の著しい増加を認め,骨髄検査では有核細胞の大部分を小型リンパ球が占めていた。末梢血を用いたリンパ球クローン性解析ではB細胞のクローン性の増殖が認められB細胞性慢性リンパ性白血病(BCLL)と診断した。膝窩リンパ節の針吸引生検では中型リンパ球が一様に観察され,病理組織検査にて鼠径リンパ節および脾臓を低分化型リンパ腫と診断した。また,これらのリンパ球は免疫染色にてCD20にび漫性に陽性を示し,CD3陰性であったことからび漫性大細胞B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断した。University of Wisconsin -Madison プロトコール (UW-25プロトコール)に対する反応は良好で,プロトコール終了後も再発なく第1270病日現在経過は良好である。
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