動物臨床医学
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10 巻, 3 号
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Original Article
  • 古川 修治, 永島 由紀子, 星 克一郎, 平尾 秀博, 田中 綾, 丸尾 幸嗣, 山根 義久
    2001 年 10 巻 3 号 p. 121-128
    発行日: 2001年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    犬に対する有効なドパミンの投与方法を確立するため、ドパミンが循環動態に及ぼす影響を検討した。各投与量(3、10、20μg/kg/min)のドパミンを麻酔下の健常雑種犬に持続点滴投与し、カラードマイクロソフェア法による各種臓器血流量の測定を行った。その結果、ドパミンの効果は、特異的ドパミン受容体やα、βアドレナリン受容体への作用以外に、生体の血流量調節機能にも影響をうけることが示唆された。脳では各受容体への作用が弱く、自己調節機能によって血流量が維持されていると考えられた。心臓血流量は心拍出量に対応した変化を示した。ドパミンが高用量投与になるほど、心拍出量と心拍数の増加が認められたことから、心臓に対する負荷の増大を考慮する必要があった。消化管(胃や腸)における血流量の変化からは、ドパミンの効果で増加した血液が、時間経過とともに、要求部位へ移動することが示唆された。ドパミンが高用量投与になるほど、各種臓器にαアドレナリン受容体刺激作用による影響が認められた。しかし、本実験では、10μg/kg/min投与群で、心臓と腎臓の十分な血流量増加が認められたことから、犬に対するドパミンの適応範囲拡大が示唆された。
  • 高島 一昭, 久野 由博, 政田 早苗, 片岡 智徳, 小笠原 淳子, 山根 義久
    2001 年 10 巻 3 号 p. 129-134
    発行日: 2001年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    犬、猫の全血を用いて、多項目自動血球計数装置であるシスメックスKX-21NVの評価試験(同時再現性試験および相関試験)を行った。KX-21NVは、白血球、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球色素量、平均赤血球色素量、血小板の8項目を自動分析する血球計数装置である。同時再現性試験では、全ての項目で犬猫ともに良好な結果が得られた。相関性試験では、犬46頭、猫36頭の血液を用いて、すでに市販されている動物用全自動血球計算器と比較した。その結果、平均赤血球色素濃度を除いた項目で、良好な相関が得られた。以上のことより、本装置は小動物臨床の場で有用であると考えられた。
Case Report
  • 竹中 雅彦, 下田 哲也
    2001 年 10 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 2001年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    頭部および頸部に結節状の皮膚病変を呈した13歳、雄の猫が来院した。病変部のスタンプ標本において厚い莢膜を有する大小の酵母様真菌が多数認められた。それらの酵母様真菌は真菌学的検査、病理組織学検査からCryptococcus neoformansと同定された。治療は病変部が皮膚に限局し、病理組織学的検査において菌体が毛包内に多数認められたことからketoconazoleとflucytosineの内用薬とketoconazole外用薬の併用にて実施した。その結果、第40病日は皮膚病変は正常となり真菌学的検査においても陰性となった。これらのことから皮膚などの表在性真菌症特にクリプトコッカス症の治療において内用薬と外用薬の併用は非常に有効であることが示唆された。
  • 吉本 憲史, 吉本 留美子
    2001 年 10 巻 3 号 p. 141-147
    発行日: 2001年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    ウサギの切歯不正咬合12例に対して矯正処置を行った。その結果 A)完全に正常に復したものが4例、B)月1回程度のわずかな矯正でほぼ正常に維持出来たものが4例、C)3カ月以上処置しても不良なものが4例であった。常生歯である兎の歯を矯正するためには、可能な限り頻回に処置を行う必要があると思われたので、無麻酔かつ短時間に処置出来るように、マイクロエンジン用の自作のバーカバーを考案し、保定法を工夫した。経過が不良な例 C)に対しては、指骨ネジや骨プレートによる外科処置や義歯の接着による抑制矯正などを行った。その後は経過観察中である。
  • 柴崎 哲, 片本 宏, 野村 紘一
    2001 年 10 巻 3 号 p. 149-152
    発行日: 2001年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    ワクチン接種時に心雑音を指摘され、精査となった3カ月齢の犬が来院した。聴診により、全収縮期性の心雑音(Levine III/VI)が聴取された。胸部X線背腹像および側面像では、右心室の拡大、頭部ウエストの消失および肺血管陰影の増強が認められた。心エコー図検査により、左ー右短絡の単独の小さな心室中隔膜性部欠損が確認された。しかし、4カ月齢時の心エコー図検査で、短絡血流によるモザイクパターンは消失し、心雑音も聴取困難となった。心室中隔欠損は自然閉鎖し、症例は現在無投薬にて順調に経過している。犬における非観血的な心エコー図検査は、VSDの経時的な病態評価に非常に有用であると考えられた。
  • 渡辺 貴之, 神志那 弘明, 倉林 秀光, 石田 譲, 田口 啓子, 坂田 郁夫
    2001 年 10 巻 3 号 p. 153-156
    発行日: 2001年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    13歳齢、未避妊雌の雑種犬が運動失調を主訴に来院した。低血糖に付随した高インスリン血症を呈しインスリン分泌腫瘍が疑われた。試験的開腹で膵臓と近接の腸間膜リンパ節に腫瘤を確認し切除した。病理組織学検査により局所リンパ節転移を伴ったインスリノーマと診断した。術後、持続的な低血糖を呈してはいるが、320日を経過した現在でも内科的治療により臨床徴候をコントロールしている。
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