長野県内の主要酪農地帯から収集した牛糞きゅう肥76点を対象に近赤外反射光分光分析法による全窒素,全炭素,粗灰分の測定の可能性を検討し,以下の結果を得た.1)供試試料を分析項目ごとに検量線回帰式作成用51点,有効性の検証用25点に分け,検量線回帰式の作成は固定フィルター型の近赤外分光分析計を用いて測定した19波長の吸光度データを説明変数,従来法による化学分析値を目的変数とする重回帰分析により実施した.さらに有効性の検証を行い,その結果に基づいて最適な重回帰式を選抜した.最適な重回帰式の波長数(説明変数の数)は全窒素が5波長,全炭素が6波長,粗灰分が8波長であった.また,最適重回帰式における選択波長を偏回帰係数の絶対値の大きいものから並べると,全窒素が2180,2208,2139,2270,2348nm,全炭素が2208,2180,1680,1778,2230,1445nm,粗灰分が1778,1818,2208,2180,1680,1982,1940,2310nmであった.2)有効性の検証における近赤外分析値と従来法による化学分析値間の相関係数は,全窒素が0.934,全炭素が0.971,粗灰分が0.985と高く,推定誤差の標準偏差は全窒素が0.17%,全炭素が1.45%,粗灰分が2.24%で,化学分析値のレンジ,すなわち全窒素1.86%,全炭素23.43%,粗灰分47.23%に対して十分に小さい値であり,これらの測定精度は,すでに一般化している近赤外反射光分光分析法による粗飼料の成分分析精度と同程度と考えられた.さらに本法は,その迅速性および簡便性を考慮すれば,農家がその測定結果を施肥設計に利用することを目的とした実用段階で有効な手法と考えられた.
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