地理学評論 Series A
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88 巻 , 4 号
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論説
  • 石﨑 研二
    2015 年 88 巻 4 号 p. 305-326
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,中心地理論における市場地域網の重ね合わせ問題を,数理計画法を用いた組合せ最適化問題としてとらえ,レッシュの中心地システムの合理性を検証しつつ,階層構築からみたレッシュとクリスターラーの理論の体系的な位置づけを試みた.その結果,発見的解法に基づく階層構築に頼らざるを得なかったレッシュの中心地システムは,システム全体の合理性に欠けることがわかった.レッシュの階層構築の目的を財の集積効果として再解釈し,単一財の配置原理の目的と合わせて定式化したモデルに基づくと,レッシュの理論が単一財の配置原理を最優先するのに対して,クリスターラーの理論は財の集積効果を最優先するモデルであると解釈できる.本稿で提示したモデルは,多様な階層性を有した中心地システムを導出しうる,階層構築における中心地理論の一般化モデルであると考えられる.

  • 林崎 涼, 白井 正明
    2015 年 88 巻 4 号 p. 327-340
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    石英や長石などの鉱物粒子は,光を浴びることで自身も発光する光ルミネッセンス(OSL)という性質をもつ.OSLの発光強度は放射線の被曝量に比例して増加し,露光により急減する.本研究では,アルカリ長石粒子の露光状態の違いに起因する残存OSL強度と,残存OSL強度がほぼ0,すなわち最近露光した粒子の含有率を示す露光率の変化傾向から,信濃川大河津分水路河口周辺の海岸における砂質粒子の運搬過程を推定した.その結果,分水路河口付近の野積海岸から北東に約17kmの角田浜まで,残存OSL強度の減少および露光率の増加が見られることから,この区間で北東方向へ砂質粒子が運搬されていることが推定された.一方で,野積海岸周辺では単純な変化傾向は見られず,近年の海岸侵食による残存OSL強度の大きい粒子の混入が示唆された.ごく最近の砂質粒子の運搬過程を推定する手法として,残存OSL強度と露光率は有効であり,より正確な運搬過程を把握できる可能性がある.

  • 福本 拓, 藤本 久司, 江成 幸, 長尾 直洋
    2015 年 88 巻 4 号 p. 341-362
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,三重県四日市市を事例に,日本人住民の外国人受入れ意識について,地域内の住民構成や両者の接触などの要因に加え,ブラジル人の集住する郊外空間の変容との関連を明らかにするために,新たに集合的消費の観点を加味した分析を行った.これらの要因を比較検討する意味で,住居種別(一戸建て・UR住宅・県営住宅)間の差異に着目して検討した結果,外国人増加への認識や受入れの方向性について住宅種別間の差異は見出せなかった.しかし,ブラジル人に関連して問題視される具体的内容をみると,UR・県営では日常生活に関わる項目が中心であった一方,一戸建てでは過去の良好なコミュニティ像との対比から,特に教育環境の変化に焦点が当てられていた.これらの結果から,ブラジル人の存在が問題化される背景には,日常生活上の軋轢だけでなく,再生産される労働力の質に関わる,郊外空間における集合的消費の変質があることを指摘した.

総説
  • 益田 理広
    2015 年 88 巻 4 号 p. 363-385
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    地理学はしばしば「空間の学」と称される.これは斯学が空間なる概念を根本対象あるいは方法,すなわち理論上の基礎として遇していることを意味するが,その重用とは裏腹に,現今の地理学的空間は確乎たる意義を失し,ただその名のみが無数の概念を覆う事態に陥っている.本研究は,この空間概念の混乱という理論上の危機を打開すべく,事物の本質的な結果のみを重んじるプラグマティズムに範を取り,演繹法を用いた分析によって地理学的空間概念の一般的性格を見出した.その際には,空間に関する古典論から基本的な4類型を示し,中でも地理学理論に深く関係する3類型を分析した.結果,地理学においては空間を物質そのものとみなす傾向が甚だ強く,加えてそれらの大半が可視的な性質を伴っていることが理解された.さらに,この一般的性格が,空間論の興隆と同時期に衰微したラントシャフト概念と共通する特徴をもつ,一種の後継概念と目される点についても指摘した.

短報
  • 近藤 祐磨
    2015 年 88 巻 4 号 p. 386-399
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本稿では福岡県糸島市の二つの地区における海岸林保全団体を取り上げ,人工的に作られて維持・管理されてきた海岸林において,保全活動がどのように始まり展開してきたのかを,主体間ネットワークや活動理念に注目しながら比較検討した.地域行政の事業を契機として保全活動を始めた団体は,既存の地域共同体を基盤とした体制的な性質を持続させ,地域内の主体との連携を強めながら属地的な理念で活動している.一方,行政のマツ枯れ対策事業に対して懐疑的な立場の人々が始めたオルタナティブな保全活動の団体は,地域外の理念の近い主体と人的な連携を強め,普遍的な理念に基づいて活動している.しかし,かつての対抗的な運動とは異なり,問題意識を共有できる部分では理念の異なる行政などの主体とも連携する戦略的な行動を選択する点では,体制的な活動が支配的な今日の環境保全活動の状況において注目される.

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