地理学評論 Series A
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87 巻, 4 号
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論説
  • 鎌倉 夏来
    2014 年 87 巻 4 号 p. 291-313
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,住友化学,三井化学,三菱化学といった旧財閥系総合化学企業3社を取り上げ,研究開発組織や拠点の立地履歴,拠点間の知識フローを明らかにし,研究開発機能の空間的分業の特徴と今後の課題を検討した.化学産業では,地方の生産拠点に近接した研究開発拠点の立地が見られるが,特に住友化学では拠点ごとに分散した研究開発活動が行われていた.これに対し,1990年代のグループ内企業の合併により誕生した三菱化学と三井化学では,研究開発拠点の再編が進められ,基礎研究を担う首都圏の中核的な拠点への集約が顕著であった.こうした立地と組織の違いを反映して,住友化学では事業部ごとの「縦の」知識フローが,三井化学と三菱化学では研究開発組織間の「横の」知識フローがそれぞれ中心となって,研究開発機能の空間的分業が構築されていた.これらの差異は,海外拠点との研究開発機能の空間的分業にも現れていた.

短報
  • 秋元 菜摘
    2014 年 87 巻 4 号 p. 314-327
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    地方都市郊外では,高齢化に伴い自動車に依存しない生活環境を実現する必要性が高まっている.富山市のクラスター型コンパクトシティ政策は,郊外拠点と都心を結ぶ公共交通の運行頻度の向上と,公共交通沿線に設定された居住推進地区への人口の集約化を軸として,日常生活におけるアクセシビリティ問題の解決を図るものである.本研究では同政策の内容に即した条件を設定し,富山市婦中地域において生活関連施設へのアクセシビリティをシミュレーションすることで政策の効果を定量的に示した.その結果,周辺部の50%以上の人口が居住推進地区に移住した場合にアクセシビリティが最も改善されることが明らかになった.また,高齢者は周辺部での居住比率が高いためにアクセシビリティが改善されやすいことも判明した.中長期的視点から高齢者を中心として居住推進地区への移住を促進しつつも,短期的には公共交通の運行頻度を高めることがアクセシビリティの改善に効果的である.

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