本稿では多様化する認可保育所の設置主体間の保育士確保戦略について考察することで,保育サービス供給に関わる規制緩和が保育サービス供給の偏在にいかに影響しているのかを明らかにした.東京都内において古くから保育サービスを提供してきた社会福祉法人は,制度的に公的機関から優遇を受けており,養成校や地域との結びつきの中で,優先的に保育士を確保することができていた.一方,規制緩和によって新規参入が認められた株式会社法人は,保育士採用に関する養成校とのネットワークから排除されているため,採用コストをかけ,地方からも保育士を採用することで施設を増設させていた.このことは,地方出身保育士などによって保育サービスの拡充が図られていることを示している.こうした保育労働市場の構造はニーズに合わせた新規施設の立地を阻害する側面を有しており,単一の制度の中でのサービス供給を可能とすることが望まれる.
本稿の目的は,沖縄県の合計出生率が本土よりも高くなるメカニズムを解明することである.分析では,筆者らが独自に実施した質問紙調査や,政府統計の1つである第4回全国家庭動向調査等を資料として,沖縄県と本土の出生行動を比較した.その結果,沖縄県の合計出生率が本土よりも高いのは,沖縄県に特有の文脈効果の影響,具体的には,多くの子どもを持つことを望ましいとする価値観,結婚前に子どもを授かることへの寛容さ,家系継承が父系の嫡出子に限定されるという家族形成規範の3つの家族観が出生行動に影響を及ぼし,沖縄県の有配偶女性の子ども数が多くなるからであった.考察では,沖縄県における3つの家族観の内実にゆらぎがみられること,所得水準や待機児童などの出生に関連する沖縄県の社会経済状況が本土より劣位にあることを踏まえ,沖縄県の合計出生率が今後低下して本土の水準に近づく可能性があることを論じた.
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