地理学評論 Series A
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86 巻, 2 号
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論説
  • ——寒候期のパターン——
    加藤 央之, 永野 良紀, 田中 誠二
    原稿種別: 論説
    2013 年 86 巻 2 号 p. 95-114
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2017/12/02
    ジャーナル フリー
    将来の地域気候予測に用いる統計ダウンスケーリング手法に利用するため,東アジア地域における海面気圧分布パターンの客観分類を行い,寒候期を対象として,平均分布型,出現の卓越季節,従来手法による分類結果などを参照し,得られた各パターンの特徴を明らかにした.本手法は,分布パターンを主成分スコアという客観指標に置き換え,主成分空間内でクラスター分析によりこれを分類するものである.対象領域における30年間(1979~2008年: 10958日)の午前9時の海面気圧分布パターン分類を行った結果,寒候期のパターンは強い冬型(3グループ),弱い冬型(3),低気圧型(1),移動性高気圧型(2),移動性高気圧・低気圧型(2),その他(1)の12のグループに分類された.各グループの継続性,グループ間の移行特性(特定のグループから特定のグループへの移行しやすさ,しにくさ)について,確率を用いて定量的に明らかにした.
  • 杉江 あい
    原稿種別: 論説
    2013 年 86 巻 2 号 p. 115-134
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2017/12/02
    ジャーナル フリー
    本稿は,バングラデシュ農村部における「物乞い」と施しの慣行の実態を実証的に明らかにし,今日の「物乞い」をめぐる制度展開を批判的に検討した.本稿の対象地域の「物乞い」は,障害や高齢によって労働すること,また,家族の経済状況により扶養されることが困難な者である.障害を持つ男性の「物乞い」は,居住地から比較的遠い市場に行っていた.特に大規模な定期市は,彼らに特別な施しが与えられる場となっている.一方,女性の「物乞い」は社会的な規範により,徒歩で集落を中心にまわる者が多い.彼らは施しを与えられるだけでなく,交通費免除や場所提供など,「物乞い」をするための手助けも受けている.特に障害を持つ「物乞い」は,そうした優遇措置を受けやすい.「物乞い」と施しの慣行は宗教的,社会的な意味を持ち,地域社会の仕組みに埋め込まれている.しかし,体制側は経済的,社会的に周縁な領域として廃止しようとしている.
  • 古川 智史
    原稿種別: 論説
    2013 年 86 巻 2 号 p. 135-157
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2017/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,1990年代以降の広告産業を取り巻く環境の変化の中で,東京における広告産業の組織再編の実態と地理的集積の変容を考察することである.広告関連企業の分布を1980年と2010年で比較した結果,銀座や神田を中心に,依然として都心部5区に集中する傾向が強いものの,グローバル化による外資系広告会社の立地の増加や,渋谷周辺にインターネット広告企業の新たな集積の形成がみられた.このうち,大手広告会社は,2000年以降,従来外部化していた広告制作の垂直統合,積極的な専門広告会社の設立,他企業の買収を進め,グループの競争力を強化している.その結果,都心部にグループ企業の集積が形成されている.広告制作会社は,広告主のニーズに対応するため,Webを中心として業務範囲を広げ,外注先と柔軟な関係を形成する傾向にある.そのため,広告制作会社にとって都心部に立地する利点は大きく,このことが地理的集積の維持に寄与していると考えられる.
短報
  • ——長宗我部地検帳と明治期土地台帳に基づく市町比定地の再検討——
    片岡 健
    原稿種別: 短報
    2013 年 86 巻 2 号 p. 158-172
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2017/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究では,土佐国の長宗我部氏の市町であった岡豊新町を復原した.従来の研究成果を踏まえ明治期地籍図の地筆を基に,天正期『長宗我部地検帳』と明治期土地台帳の記載面積を使用して比定地の地割を再検討した.さらに,同時代史料により岡豊新町周辺の河道を復原して比定地との整合性を検討した.『長宗我部地検帳』と明治期土地台帳の比較によると,『長宗我部地検帳』の測量精度は高い.そこで,地籍図に示される地割のみでなく,天正期以降に地割が再施工された可能性を考慮して,地筆ごとの面積に基づいて屋敷地レベルで比定した.本稿の手法は,発掘成果のない状況で精緻な景観復原を可能にし,さらに,文献史料を基に地割の存続した時期を検討する一つの可能性を示すものである.検討の結果,岡豊新町西部分は定説より南に存在するという新しい復原案を示すことができた.岡豊新町の東町の地割は16世紀後半の景観を反映しており,それが明治期まで残存していた.
  • ——河南省鶴壁市の事例——
    殷 冠文, 劉 雲剛
    原稿種別: 短報
    2013 年 86 巻 2 号 p. 173-188
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2017/12/02
    ジャーナル フリー
    中国の都市形成の特徴は,政府が主導的な役割を果たしていることである.特に1990年代以降の分権化政策によって,地方政府主導による都市建設が進み,とりわけ内陸ではそれが顕著となった.本稿では,中国内陸部の鶴壁市を事例として,中国の都市形成のプロセス,とりわけ地方政府の役割に注目する.鶴壁市における新市街地開発事業へのフィールド調査によって,インフラの整備から,住民の移住への動員,企業誘致など広範囲にわたって,地方政府が都市形成に主導的役割を果たしていることがわかった.行政主導的な開発方式で,新しい都市空間が急速に形成され,新たな都市イメージと居住環境が作られた.しかし,その一方で,旧区への配慮が不足したため,旧区全体の衰退および新旧区間の格差の拡大などの問題が生じた.このようなジレンマをどう受け止めるか,それは現代中国の都市形成を読む上で現実的かつ理論的な課題であろう.
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