地理学評論 Series A
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84 巻, 1 号
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論説
  • ――北海道西別川を例に――
    阿部 亮吾
    原稿種別: 論説
    2011 年 84 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2015/01/16
    ジャーナル フリー
    旧河道の陸化過程と植物群落の発達との対応関係を示すため,旧河道の陸化過程を自然区間と河川改修区間に分けて分析し,さらに自然区間では分断後約100年間の植物群落の変化と,内部の植物群落の分布構造を明らかにした.河川改修区間では人工堤防と流路の直線化によって陸化過程が変化した.自然区間では洪水撹乱の減少と細粒物質の堆積によって,分断後45~60年を境に木本種が先駆種から湿地林の構成種に変化した.分断後100年以上経過した旧河道では植物群落が地下水位に応じて分布した.上流側陸化部分では洪水時の土砂堆積によって陸化と樹林化が進展した.下流側陸化部分では旧河道内部からの流水により陸化部分の拡大が制限され,さらに,分断初期の地表面の乾燥化により植物群落の発達が遅れていた.旧河道内部の洪水撹乱が弱い場所では分断以前に形成された地形面に従って植物群落が分布し,谷壁斜面からの土砂流入によって陸化と樹林化が進展した.
  • ――明治期から昭和戦前期を中心として――
    加藤 晴美
    原稿種別: 論説
    2011 年 84 巻 1 号 p. 22-43
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2015/01/16
    ジャーナル フリー
    現在,合掌造りの里として知られる飛騨白川村は,明治・大正期には山奥の別世界とみなされ,大家族制をはじめとする「奇異」な風習が残る地域として認識されていた.本稿では,このような認識が変容し,白川村が「古い文化」を有する貴重な地域として高い評価を獲得していくのはいつ頃であるか,またその背景はいかなるものであったかを検討し,山村が近代日本の中でどのように位置付けられていたのかを考察した.本稿では山村像が変容した時期を昭和戦前期と位置付け,この時期における白川村の生活変容や,当時盛んに行われた郷土研究や観光開発などが,白川村に対する認識の変容に影響を与えたことを明らかにした.白川村はブルーノ・タウトによってその価値が初めて認められたとも言われるが,実際にはタウト以前に始まった日本人郷土研究者らによる認識像の変容が,白川村に対する評価の高まりを導いたと考えられる.
短報
  • 青山 雅史
    原稿種別: 短報
    2011 年 84 巻 1 号 p. 44-60
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2015/01/16
    ジャーナル フリー
    飛騨山脈南部槍・穂高連峰における山岳永久凍土の有無およびその分布状況を明らかにするため,小型自記温度計を用いて,気温および地温の観測をおこなった.気温観測の結果,槍・穂高連峰主稜線上は不連続永久凍土帯の気温条件下にあることが判明した.また,地表面温度観測の結果,本山域のカール内に存在する岩石氷河や崖錐斜面上の多数の地点における晩冬季の積雪底地表面温度(BTS)の値は,それらの地点に永久凍土が存在する可能性があることを示した.特に,大キレットカール内の岩石氷河上では,永久凍土が存在している可能性が高いことを示すBTSや年平均地表面温度などの値が複数年にわたって得られた.地表面が特に粗大な礫から成る地点では,冬季の地表面温度の低下が他地点よりも顕著であった.これは,冬季に粗大礫の上部が積雪面上に露出し,その露出部が寒冷な外気により冷却され,礫自体の冷却が進行していくことによりもたらされたものと考えられる.
  • 吉田 真弥, 高岡 貞夫, 森島 済, Mario B. COLLADO
    原稿種別: 短報
    2011 年 84 巻 1 号 p. 61-73
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2015/01/16
    ジャーナル フリー
    ルソン島中央平原に位置するパイタン湖の湖底堆積物において植物珪酸体分析を行い,過去およそ2,500年間の植生変遷について検討した.本地域では,堆積物の上位よりゾーン1~5の局地植物珪酸体帯が認められた.すなわち,コゴンを中心とする草本植生が卓越したゾーン5(2,460~1,410年前),草本植生とともに針葉樹による植生が増加したゾーン4(1,410~1,240年前),コゴン以外の草本種から成る植生が成立し木本種による植生も増加したゾーン3(1,240~1,150年前),コゴンやそれ以外の草本から成る植生とゾーン3とは異なる木本植生が成立したゾーン2(1,150~350年前),木本植生が著しく減少し栽培イネが卓越するゾーン1(350年前~現在)の五つである.森林に乏しい現在の植生景観の成立には人間活動が深く関わっていると考えられる.また,ゾーン5においてコゴンの草原が卓越することは,乾燥化などの人間活動以外の要因の影響も考えうる.
  • 小川 滋之, 沖津 進
    原稿種別: 短報
    2011 年 84 巻 1 号 p. 74-84
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2015/01/16
    ジャーナル フリー
    日本列島のヤエガワカンバ林は本州中部と北海道の一部に分布するが,分布を規定する要因には未解明な点が多い.本研究では,埼玉県外秩父山地において地すべり地の微地形と表層土壌に着目してヤエガワカンバ林の分布要因を検討した.ヤエガワカンバは,地すべりにより形成された緩斜面に多く,この中でも礫質土となる区域に集中して分布していた.礫質土区域は,数十年周期で発生する地すべりに由来する土砂礫が堆積した区域であり,外秩父山地で主要優占種となるコナラやミズナラの侵入が少なく抑えられている.地すべり地におけるヤエガワカンバの分布は,地すべりで緩斜面が形成されることにより,種子や実生が流失することなく定着しやすいことや,数十年周期で発生する地すべりにより開放地が形成されることが要因として考えられる.ヤエガワカンバは,この開放地にいち早く侵入して生長速度の速さから林分を形成していると結論付けた.
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