地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
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85 巻, 5 号
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論説
  • ——個人および地域特性を考慮したマルチレベル分析——
    埴淵 知哉, 中谷 友樹, 村中 亮夫, 花岡 和聖
    原稿種別: 論説
    2012 年 85 巻 5 号 p. 447-467
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    社会調査の回収率は,標本から母集団の傾向や地域差を適切に推定するための重要な指標である.本研究では,回収率の地域差とその規定要因を明らかにすることを目的として,全国規模の訪問面接・留置調査を実施しているJGSS(日本版総合的社会調査)の回収状況個票データを分析した.接触成功および協力獲得という二段階のプロセスを区分した分析の結果,接触成功率・協力獲得率には都市化度や地区類型によって大きな地域差がみられた.この地域差は,個人属性や住宅の種類などの交絡因子,さらに調査地点内におけるサンプルの相関を考慮した多変量解析(マルチレベル分析)によっても確認された.したがって,回収状況は個人だけでなく地域特性によっても規定されていることが示された.しかし,接触成功率・協力獲得率には説明されない調査地点間のばらつきが残されており,その理由の一つとして,ローカルな調査環境とでも呼びうる地域固有の文脈的要因の存在も示唆された.
  • ——1970年代と2000年代の「釜ヶ崎」を事例として——
    原口 剛
    原稿種別: 論説
    2012 年 85 巻 5 号 p. 468-491
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    近年の人文地理学においては,場所は以下のように再定義されている.第1に,場所は内的な差異と争いに満ちている.第2に,場所とはさまざまな相互関係の結び目として形成される.本稿では,日雇労働市場として知られる簡易宿所街「釜ヶ崎」を事例として,以上の場所の定義を検証する.1970年代の「釜ヶ崎」においては,労働運動と地域住民という集合的アイデンティティが互いに対立しながら表象され,このような差異や争いの中で「釜ヶ崎」や「あいりん」という地名は社会的に再生産された.また,2000年代については,コミュニティ運動や地域経済の再生の活動では「萩之茶屋」「新今宮」という地名が再発見される一方,アート運動の活動においては「釜ヶ崎」という地名が新しく意味づけられている.これらの地名は,場所の内側と外側を結びつける主体の能動的な働きにより生み出されている.また,その中には,境界を多数化させる作用が見出される.
短報
  • ——利用者評価による分析——
    村中 亮夫, 瀬戸 寿一, 谷端 郷, 中谷 友樹
    原稿種別: 短報
    2012 年 85 巻 5 号 p. 492-507
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    本稿では,地域の防災・安全情報が記載されたWebマップをベースとした安全安心マップ(Web版安全安心マップ)について,利用者の活用意思とそれを規定する心理的な要因を分析した.分析資料としては,京都府亀岡市篠町のWeb版安全安心マップについて,紙地図ベースの安全安心マップ(紙地図版安全安心マップ)との対比から得られた利用者評価のデータを利用した.分析の結果,Web版安全安心マップでは紙地図版安全安心マップと比較して高い活用意思が表明され,Web版マップを積極的に活用する意義が示された.また,Web版マップを活用する意思の心理的な要因を検討する構造方程式モデリングの結果,Web版マップの利便性やそれを通して得られる地域の危険/安全箇所に関する認識の深まりの度合い,マップに掲載されている情報の充足性が,Web版マップの活用意思に正の影響を与えていることが示された.
  • 永田 玲奈, 三上 岳彦
    原稿種別: 短報
    2012 年 85 巻 5 号 p. 508-516
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,1901~2000年の100年において北太平洋高気圧西縁部の東西・南北変動を示す指数を定義し,その長期変動について明らかにするとともに,日本の17地点における夏季気温変動との関係について解析を行った.その結果,北太平洋高気圧の西縁部は過去100年に南西方向にシフトしていることがわかった.また100年を前半50年と後半50年に分けて比較したところ,前半50年と比べて後半50年には,高気圧西縁部が北(南)にシフトすると気温が上昇(低下)するという有意な正相関を示す地点が多く見られた.1951年以降,Pacific-Japan (PJ)パターンの励起と関係が深い,南シナ海と熱帯太平洋西部との間の夏季海面水温の東西傾度と,高気圧西縁部の南北変動との関係が強まっており,PJパターンが多く発生することで,高気圧西縁部の南北変動と日本の気温との関係が強まったと考えられる.
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