これまでの世界地誌における北極地誌は,北極地域の範囲(南限)をツンドラ地帯の南限(北方林あるいは亜寒帯針葉樹林の北側の森林限界)とする自然地誌であった.一方,人文地理学的な北極地域の範囲を明確にした北極地誌は存在しなかった.北極地域の国際的な協議・管理機構である北極評議会は,環境評価や人間活動調査のための北極地域をそれぞれ設定した.これらは環境問題や人文地理学のための北極地域として有効な区分である.しかし,これらの南限は従来の自然地理学的な北極地域の範囲から大きく南にシフトし,北極的なツンドラ環境だけではなく亜寒帯の森林地帯も広く含むことになった.人間活動を中心に考えると,北極地域は北極海を取りまく環北極海地域であり,これは機能地域である.したがって,北極地誌は,従来の等質的な各国地誌と重複する形で記述されることになる.
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