地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
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ISSN-L : 1883-4388
92 巻, 4 号
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短報
  • 石川 慶一郎
    2019 年 92 巻 4 号 p. 203-223
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    本稿は,東京都区部のシェアハウスの立地特性および台東区を事例としたシングル女性のシェアハウス居住の実態を明らかにした.分析結果から,シェアハウスの多くは,都心周辺部の鉄道駅付近に立地し,単身者向け賃貸住宅と比較して居住性が高いことが示された.それらは,ファミリー世帯の需要が低い商業地区に立地する住宅が転用されたものである.台東区の女性シェアハウス居住者は,低所得層の者が多い.彼女たちにとってのシェアハウスの優位性は,家賃が低いにもかかわらず,交通利便性の高い場所に住むことができ,台所や浴室といった住宅設備を快適に利用できることだった.一方,シェアハウス運営事業者はその管理物件にシングル女性のニーズを反映させていた.近年のシェアハウスの増加の背景には,都心周辺部での余剰住宅ストックの増加と,職住近接や生活の質の向上を指向するシングル女性のライフスタイルの存在があると考えられる.

  • 久島 桃代
    2019 年 92 巻 4 号 p. 224-240
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    本稿では,女性に再生産役割を期待しがちな農山村において女性移住者たちが抱えている戸惑いと,地域に関わりたい,村で暮らし続けたいという意思や実践が生み出されていく過程を考察した.本稿が対象とする福島県昭和村では,「からむし」と呼ばれる植物を素材とする織物作りが行われ,「織姫」と呼ばれる女性移住者たちが技術を学んでいる.「織姫には嫁として村に残って欲しい」という村民たちの期待は小さくなく,それが独身の織姫の疎外感に結び付くことがある.また,経済的に不安定であることが,彼女たちの「刹那的な場所感覚」を形成していた.しかし織姫は,栽培農家とからむしを育てることを通じて,そこに埋め込まれた地域の記憶や,栽培農家に対する理解を深めていった.村の文化を次世代に伝えたい,村で暮らし続けたいという織姫の生き方は,性別役割とは別の形で地域に関わるものであり,彼女たちが去った後も村に影響を及ぼしている.

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