耐応力腐食割れ (SCC) 材として開発された低炭素ステンレス鋼を採用したBWRの炉心シュラウドあるいは再循環系配管において顕在化したSCCについて, 発生機構と対応策および今後の研究課題を, 日本原子力学会材料部会が中心となって組織した「炉心シュラウド等材料問題検討会」で議論し, その検討結果をまとめた。
低炭素ステンレス鋼は, 粒界型SCC (IGSCC) の発生抑制に顕著な効果を有するが, 今回のSCCでは, まず粒内型SCC (TGSCC) が材料表面の加工硬化層から発生し, これが材料内部でIGSCCとして進展するという想定外の事象として発生, 進展したものと考えられる。低炭素ステンレス鋼のSCC発生, 進展機構の解明には, まだ時間を要すると予想されるため, 当面のSCC対策としても, 各種の応力および環境の改善技術が重要となる。時を同じくして, 認可された維持基準のもと, シュラウド等圧力バウンダリー以外のひび割れについては, 従来からの即補修, 即交換といった対応のみでなく, ひび割れの存在を容認した運用も開始された。維持基準への対応のためには, ひび割れの大きさの把握が必須で, 非破壊検査の重要性が従来以上にクローズアップされている。今後, 新設されるプラントでは, 溶接線に沿って, 各種ピーニンク処理を施し, 表面層の引張残留応力を圧縮残留応力に変える対策を施すことになっている。
21世紀環境に適合した原子力開発が人類エネルギーの切り札として脚光を再度浴びることが予見されるが, 従来どおり原子力の開発を国策として中央で決め, 地方に施設を受け入れさせるという構図は成り立たない。原子力技術を社会に定着させるには, 技術を受け止める社会体制が必要である。産官学―地域連携によって「原子力開発は地方から」と考えてみると, 世の中の仕組みが逆さになる。発想を逆転させると新たな視点が見える可能性もある。今までのしがらみを一切取り外し, あえて「地域から原子力を」と考えてみたい。