原子力学は, この20年来, 諸般の状況が重なり, 次第に若い人に魅力の乏しい分野になりつつある。しかし, 原子力は将来とも1次エネルギーとして最重要であると予想され, 産業界・学会を含めて活力ある原子力の発展・維持のために意欲的で優れた人材が求められる。このような状況を受けて, 新しい時代の原子力学研究と教育のあり方を検討する必要がある。そこで, 大学における原子力学教育の再構築を目指し, 21世紀の原子力教育のあり方, 原子力学と地域共生, 大学の教育と産官学連携, 産業界からの要請, 日本原子力研究所における原子力教育研究, 米国における原子力教育の状況, 新専攻設立による新しい原子力教育, など多方面の視点からこれからの原子力学教育を展望し, 原子力学再構築の方向性を示す。
わが国の核燃料サイクルに対して海外より延期また中止を示唆する所見が飛び交っているが, 最近, 日本原子力文化振興財団主催の講演会で米国エネルギー省 (DOE) から頼もしい援助・推進の発言があった。現在までに米国の民間再処理およびFBRの研究開発は中止されていたが, これらを復活するため, 原子力政策の変更をしたのである。
中国を初めとする発展途上国の急激な経済成長, 中東を中心とする国際情勢の変化, 化石燃料埋蔵量の調査結果などより, 米国は将来のエネルギー安定確保の観点から原子力政策を改定するに至ったのである。これは1978年民間再処理凍結以来の根本的な改定である。この背景を調査したものである。
高温ガス炉, 高温の熱利用による原子力エネルギーの利用を拡大でき, 経済性を大幅に向上できる次世代原子力システムとして, 国内外を問わず, 水素エネルギー社会の構築に向けた最優先の研究開発課題となっている。日本原子力研究所は, 高温工学試験研究炉 (HTTR : High Temperature Engineering Test Reactor) プロジェクトにおいて, 2004年4月に原子炉出口冷却材温度950℃を世界で初めて達成し, また, 2003年8月にベンチスケール規模のISプロセスで6.5時間の連続水素製造に世界で初めて成功するなど, 高温ガス炉システムの研究開発で世界のトップを走っている。本稿では, HTTRプロジェクトの研究開発を中心に, その経緯, これまでの主要な成果, 現状, 国際的な高温ガス炉開発の動向, 我が国における高温ガス炉水素製造システムに関する将来計画を紹介する。
原子力委員会の下で新しい原子力長計を審議するための「新計画策定会議」での審議を経て, 「核燃料サイクル政策についての中間とりまとめ」がまとめられた。これは, 使用済燃料の管理方策についての総合的な評価と審議を行った結果を反映して, 我が国における今後当面の核燃料サイクル政策の基本的な考え方をまとめたものである。これに至る審議においては, 全量再処理路線や全量直接処分路線などの複数のシナリオを想定し, それぞれについて経済性, 資源節約および供給安定性, 環境適合性などの複数の評価視点からの詳細な評価が行われた。特に着目を集めた経済性については, 使用済燃料の直接処分の設計評価を行った上でそのコストを算出し, 全量再処理路線と直接処分路線の発電コストの比較評価が行われた。この結果, 再処理路線の発電コストが直接処分路線よりも, 0.5~0.7円/kWh高くなることが確認されたが, その他の視点での再処理路線の優位性や様々な現実性を勘案して, 再処理リサイクル政策が総合的に妥当であると結論された。この中間とりまとめに至る審議の状況とその要点を解説する。