総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会では, 2006年再処理工場が稼動し40年間操業すると想定した場合, バックエンドコストは18.8兆円になると試算結果を発表した。この試算が前提としているわが国のバックエンド事業のあり方については, 各方面において関心・議論が高まっており, 原子力委員会でも, 新原子力長計策定の一環として, 策定会議の下に, 8月初旬に使用済燃料の処分にかかるコスト等を専門的に検討する小委員会を立ち上げるなど, 議論はいよいよ本格化してきている。そこで, 編集委員会では, 「バックエンドコストと今後のバックエンド事業」について緊急の特別企画として本特集を計画した。
本特集は, 最初に総合資源エネルギー調査会の試算結果を概説した後, 本年 (2004年) 4月23日の原産年次大会で取り上げられた「自由化のもとでバックエンド事業をいかに進めるか」の基調講演とパネル検討会に出席された4氏に依頼してそれぞれの立場の考え方を述べて頂いた。
なお, 本特集はバックエンドコストとその問題点を理解し易くするため, 以下の構成とした。
Ⅰ. バックエンドコストについて 田中 知 (東京大学), 森 信昭 (産業創造研究所), 諸葛󠄀 宗男 (東芝)
Ⅱ. 資本市場からみた電力自由化 圓尾 雅則 (ドイツ証券)
Ⅲ. バックエンドはどうあるべきか
[1] 原子燃料サイクルについて―なぜ, 今再処理を進めるのか 佐竹 誠 (東京電力)
[2] バックエンド事業―今何をなすべきか 神田 啓治 (エネルギー政策研究所)
[3] バックエンド政策の問題点 山地 憲治 (東京大学)
失われた原子力への社会の信頼を回復するのに, 重要な行動は何かを正しく認識する必要がある。日本原子力学会社会・環境部会に設置された「原子力コミュニケーション」コアグループは, 社会・行動科学の諸学会の協力者との連携のもと, 原子力に係わる情報の担い手と受け手の間に相互の信頼感を醸成できる社会的コミュニケーションのあり方を探り, 施策を提言することを目的として研究会を重ね, 講演会等を開催している。本稿では, 2004年2月に学習院大学で開催された報告会の概要と質疑等を解説を含めてまとめた。
PWR炉物理検査の手法については, 測定精度向上, 測定操作簡素化の観点から高度化が進められている。炉物理検査は定期検査上検のクリティカルパスであることから, 原子炉の稼働率向上の観点から測定時間を短縮するための努力を続けている。BWRにおいては近年, PWR炉物理検査にて使用する原子炉反応度計を使用した制御棒価値や等温温度係数の測定を試験的に実施している。本稿では, PWRにおける最近の炉物理検査の進展および原子炉反応度計によるBWR炉心特性パラメータの測定について紹介する。
核分裂エネルギーは100万年のエネルギーといえる。定まった燃料管理方法で一定のエネルギーを生産しつづけたとすると, システム中の放射性物質のそれぞれの量は一定となる。このような状態を未来核平衡状態と呼んでいる。未来核平衡状態は核平衡方程式を解くことにより求められる。本研究は核平衡方程式の性質を明らかにし, それに随伴する核種インポータンス (要求される評価値に対して1個の原子核の示す重要度) について検討するとともに, 連続燃料交換を仮定した簡単な場合について, 未来核平衡状態の種々の基本的な一般特性を明らかにした。