腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
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23 巻, 1 号
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総  説
  • 國澤 純
    原稿種別: 総  説
    2009 年 23 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    多くの腸内細菌や食餌性成分が存在する腸管には,粘膜免疫システムと呼ばれる恒常性維持のためのユニークな免疫システムが備わっている.そこには脾臓などの全身系免疫システムと共通の性質を示す免疫担当細胞に加え,腸管免疫システムに特有の免疫担当細胞が配備されている.これまでの研究から,これら腸管免疫システムでは生体内における細胞間相互作用に加え,腸管に存在する腸内細菌や食餌性成分などの腸内環境因子との相互作用を介し免疫制御を行っていることが示唆されており,その分子基盤が徐々に明らかとなりつつある.本稿においては,食餌性成分や腸内細菌により産生や代謝制御を受けると考えられる脂質メディエーターのうち,最近著者らが研究を進めているスフィンゴシン1リン酸を介した腸管免疫制御機構について紹介したい.
  • 江石 義信
    原稿種別: 総  説
    2009 年 23 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    常在性細菌と疾患との関連性があちこちで話題になりつつある.なかでもサルコイドーシスとアクネ菌についてわが国では長年の研究蓄積を有しており,最近では本症の奇異な病態を説明しうるようなアクネ菌の興味ある生体内特性や内因性感染症としての新しい疾病発生機構が徐々に見えつつある.既によく知られている「帯状疱疹ウイルスのストレスによる活性化」や「結核の内因性再燃」などの現象と同様に,初期感染(不顕性感染)後に宿主の細胞内で冬眠状態にある細胞壁欠失型アクネ菌が内因性に活性化することが,サルコイドーシスという全身性肉芽腫疾患の発症をトリガーしている可能性がある.疾病素因として本菌に対するアレルギー素因を有する個体では,内因性に本菌が活性化するたびごとに増菌局所で肉芽腫反応が生じてくるものと想定され,細胞内細菌に感受性のある抗生剤の投与は,新たな細胞内増菌を防止する観点から肉芽腫形成の予防に有効である可能性が高い.また,本症からの完全寛解を目指すためには,代謝活性を低下させて生き残りを図る冬眠状態の菌も含めて排除する必要があり,近年では米国患者団体が主体となり通常の感染症とは異なる除菌プロトコール(マーシャルプロトコール)が検討されつつある.
  • 高橋 典俊
    原稿種別: 総  説
    2009 年 23 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年,プロバイオティクスによるアレルギー疾患予防や治療効果が報告されている.ヒト腸管より単離され,発酵乳製品など広範に利用されているBifidobacterium longum BB536を用いたヒト臨床試験でも,花粉症症状の緩和効果や血中マーカーの改善が報告されたが,その作用機序は不明な点が多く,腸管免疫との関わりを明らかにする為にも,基礎的知見としてプロバイオティクスの抗アレルギー作用に関与する菌体成分を解明して行く必要がある.本研究では,近年自然免疫学で注目されている微生物のゲノムDNA成分に着目し,BB536の同成分の免疫調節作用を検討することを目的としている.
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