腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
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ISSN-L : 1343-0882
25 巻, 4 号
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総説
  • 高橋 恭子
    原稿種別: 総説
    2011 年 25 巻 4 号 p. 213-219
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/16
    ジャーナル フリー
    腸管には莫大な数の腸内細菌が生息し,また,生体最大の免疫系が存在する.腸内細菌は生体にとって異物でありながら腸管免疫系により排除されてしまうことなく,“共生”している.腸管の広大な粘膜面は単層の上皮細胞で覆われていることから,これらの腸管上皮細胞は,腸内細菌,食品,病原菌など腸管管腔からの様々な抗原刺激を最前線で受け取る細胞であると言える.腸管上皮細胞は,管腔の様々な抗原情報を粘膜固有層に存在する免疫細胞へと橋渡しをし,腸管における免疫応答の誘導,方向づけに重要な役割を果たす.本稿では腸内細菌と腸管上皮細胞の相互作用を取り上げ,両者のクロストークの基盤として腸管上皮細胞における菌体認識分子の発現及び機能の制御,そして腸内細菌と腸管上皮細胞のクロストークによる上皮バリア機能及び免疫応答の制御について概説した.
  • 中山 二郎
    原稿種別: 総説
    2011 年 25 巻 4 号 p. 221-234
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/16
    ジャーナル フリー
    一見孤立無縁に生きているように見える単細胞生物である細菌も,細胞間でコミュニケーションをとりながら,集団として生育し,集団としてのパワーを最大限に発揮していることが分かってきた.細菌の場合は,細胞間コミュニケーションの媒体として化学物質を利用することが多い.中でもよく研究されているのが,クオラムセンシングと呼ばれる現象で,同種菌の生産するシグナル物質“オートインデューサー”の菌体外濃度を感知することで,同種菌の菌密度を感知し,それに合わせて,さまざまな遺伝子の発現をコントロールするというものである.本稿では,このような細菌の細胞間ケミカルコミュニケーションの分子機構について,グラム陰性菌からグラム陽性菌までその知るところを概略し,紹介する.
  • 後藤 義幸, 清野 宏
    原稿種別: 総説
    2011 年 25 巻 4 号 p. 235-243
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/16
    ジャーナル フリー
    近年,シークエンス技術や質量分析技術が発展するにつれて,腸内フローラのメタゲノム解析やメタボローム解析などの網羅的解析が可能となり,腸内フローラに関する研究が急速に拡大している.なかでも,腸内フローラと宿主粘膜免疫システムのクロストークについての研究の進展はめざましく,これまでに分泌型IgAに代表される免疫分子が腸内フローラならびに宿主腸管の恒常性維持に寄与していることが明らかとなってきた.一方,腸内フローラは「正」と「負」の免疫応答を主導するT細胞を誘導し,腸管において生理的炎症状態という生体にとって有用な環境を創出することで,宿主粘膜免疫の構築と維持に重要な役割を果たしている.この生理的炎症状態は,腸内フローラと粘膜免疫のクロストークによって巧妙に制御されているものの,この恒常性が崩れると炎症性腸疾患をはじめとする免疫疾患発症へと繋がる.腸内フローラ,および粘膜免疫の恒常性維持機構を明らかにすることは,これら疾患の新規治療法開発の基盤となる重要な情報を提供するのみならず,次世代型ワクチンとして期待されている経口ワクチンに代表される粘膜ワクチン開発に向けても貴重な開発戦略基盤を提供することができるであろう.
  • 平山 和宏, 伊藤 喜久治
    原稿種別: 総説
    2011 年 25 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/16
    ジャーナル フリー
    腸内菌叢は非常に活発な代謝活性を持ち,我々の健康や疾病に重要な役割を果たしている.しかし,腸内菌叢は膨大な種類の細菌が相互に関わりあった非常に複雑な生態系であり,代謝活性も宿主の全代謝を超えるといわれるほど活発であるため,腸内菌叢の生態や代謝,宿主に対する影響などを研究することは容易ではない.また,我々の腸内は高度な嫌気的な状態であることをはじめとして,栄養学的にも宿主側からの様々な要因が影響するなど,非常に特殊な環境であるために実験室内でその環境を再現し,腸内の状態をシミュレーションすることは困難である.そのため,腸内菌叢の代謝や役割を研究するためには特殊な技術が必要となる.本稿では腸内菌叢を研究するためのin vitroおよびin vivoにおける実験系について代表的な手法を紹介し,それぞれの特徴と問題点を概説する.
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