腸内細菌学雑誌
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14 巻 , 2 号
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  • 矢田 純一
    2001 年 14 巻 2 号 p. 61-66
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    食物アレルギーは主にIgEクラスの抗体と食物抗原との反応によって生じると考えられる.IgEへのクラススイッチにはIgE定常部遺伝子上流の1領域からのgerm line transcriptの転写とそれに伴うS領域のレコンビナーゼによる切断が関係する.これらはB細胞表面のIL-4レセプターとCD40分子への刺激によって誘導され, IFN-γ の作用によって抑制される.したがってIL-4を産生するTh2細胞とIFN-γ を産生するTh1細胞のバランスがIgEの産生には重要で, Th2優位に導く要因がアレルギーの発生に関わる.消化管の免疫系は通常の免疫系とはある程度独立していて, そのリンパ組織にはTGF石やIL-10を産生するようなT細胞が多く存在する.TGF-β はIgAへのクラススイッチを誘導するので, 消化管における分泌型IgA抗体を産生するのに好都合である.一方IL-10はTh1細胞を抑制するので, IgE産生には有利な条件をもたらす.細菌DNAの非メチル化CpGモチーフはマクロファージからIL12産生を誘導する.IL-12はTh1細胞を誘導するので, IgE産生を抑制する条件をもたらす.食物アレルギーの発生については, Th2細胞を活性化しやすい抗原や誘導物質の存在, Th1細胞を誘導しやすい細菌DNAなどの存在との力関係が関与しよう.
  • 五十君 静信
    2001 年 14 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    従来のワクチン研究から, 一般に, ある感染症に対するワクチンはその感染症の感染経路に従って投与するのが最も効果的であると考えられている.従って, 腸管粘膜から侵入してくる感染症に対するワクチンは, 経口および腸管粘膜上皮からの投与が望ましく, 粘膜局所のIgA抗体産生の増強が重要である.しかしこの経路を投与方法とするワクチンである粘膜ワクチンの開発は遅れている.現在用いられているワクチンは, いかにして病原体を弱毒化するかといった手法で開発されてきた.一方, 近年のバイオテクノロジーの進歩により, 必要と思われる部分を組み合わせてワクチンを作り上げるコンポーネントワクチンの考えが導入され, ワクチンをデザインして作るという考え方が主流となっている.この場合, 粘膜ワクチンはそれに適する運搬体と感染防御抗原を組み合わせワクチンを構築する.腸管の粘膜局所での抗体産生を期待する粘膜ワクチンでは, その抗原運搬体として腸管内で抗原提示の可能な細菌や人工膜が検討され, 腸管侵入性細菌の弱毒株や無毒で腸管内でのエピトープの発現が可能な細菌およびリポソームなどが用いられてきた.粘膜ワクチンとして, 乳酸菌を抗原運搬体として用いるワクチンは, 挿入する遺伝子を遺伝子レベルで無毒化することにより, 病原体を弱毒化したワクチンに比べ, より安全な経口ワクチンの開発が可能であると考えられている.本稿では, 腸管感染症に対する粘膜ワクチンの現状と, 組換え乳酸菌を用いた粘膜ワクチンの開発について解説する.
  • 加納 康正, 河野 享子, 松村 肇, 竹内 昭雄, 山田 靖子, 古池 史
    2001 年 14 巻 2 号 p. 75-85
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ビフィズス菌は, ヒトや動物の大腸に棲息しているグラム陽性, 嫌気性菌で, 腸内腐敗を抑制したり, 腫瘍形成の抑制や免疫力を増強するなど, 宿主の健康維持に大切な役割を果たしている.ビフィズス菌はヨーグルトなどの乳製品や, 医薬品の生物資源として利用されているが, 将来は, ビフィズス菌に有用遺伝子が導入されてジーンデリバリーシステムや経口ワクチンなどへの利用が期待される.我々はビフィズス菌の中でも成人の腸管に多く見られるBifidobacterium longumから環状プラスミドを取り出し, その全域と大腸菌プラスミドpBR322およびグラム陽性菌で発現するEnterococcus faecalis由来のスペクチノマイシン耐性遺伝子を組み込んで, プラスミドベクターpBLES100とpMASK23を構築した.電気穿孔法でこれらのプラスミドをB.longumにtransfectしたところ, スペクチノマイシン耐性形質転換菌が約2×104/μg plasmidDNAの効率で得られ, 形質転換菌内のプラスミドは50世代培養後も失われることなく, 正常構造を保持していることがわかった.ヌクレオイドDNA結合蛋白質HUは, グラム陰性, 陽性いずれの原核生物にも広く保存されており, この遺伝子は高効率かっ恒常的に発現すると考えられている.我々はビフィズス菌で発現する高活性プロモーターを得るために, B.longum ATCC15707株からHU産生遺伝子 (hup gene) をクローニングした.塩基配列からhup gene領域が明らかとなり, この遺伝子産物がB.longum菌のヒストン様蛋白質HB1と同一であることがわかった.mRNA解析から, この遺伝子の転写開始点, プロモーターとターミネーター領域, リボソーム結合配列が明らかになり, この遺伝子がモノシストロニックであることと, 増殖の遅延期, 対数期, 静止期の各期で構成的に発現していることがわかった.このhup geneをプラスミドベクターpBLES100に組み込みB.longum105-A株に移入してhup mRNAを測定したところ, プラスミド上でもhup geneは効率よく転写されることが明らかになった.
  • 佐々木 隆, 佐々木 泰子, 伊藤 喜之
    2001 年 14 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    遺伝子操作によって改良した乳酸菌などの微生物を将来食品分野で応用する場合, 安全性の確保が最も重要である.そのためには, 食品としてふさわしい遺伝学的材料のみを用いること, また育種された微生物が遺伝的に安定でかっ安全であることなどが求められる.これらの課題を達成するために, 筆者らはヨーグルト製造に用いられる2種の乳酸菌 (ブルガリア菌とサーモフィルス菌) で, 安全な遺伝子組み換え体を作成するための基本的な技術を検討した.すなわち, 二重交叉によって目的遺伝子のみを染色体に組み込む技術を確立することと, 安全な遺伝子材料のみを用いて宿主ベクター系を構築することである.これまでの検討で一応の成果が得られ, 安全性確保に向けて今後の基礎を築くことができた.
  • 松本 光晴, 今井 哲哉, 廣中 貴宏, 久米 仁司, 渡辺 正利, 辨野 義己
    2001 年 14 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    排便状況が不調 (4回/週以下) の健常成人30名 (男性5名, 女性25名, 平均年齢30.1歳) に, Bifidobacterium lactis LKM512, Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus LKM1759およびStreptococcusthermophilus LKM1742で調製したヨーグルト (LKM512ヨーグルト) を100g/日, 2週間投与した.なお, LKM512ヨーグルトにはL.delbrueckii subsp.bulgaricusおよびS.thermophilusの菌数4.7×108cfu/g; B.lactisの菌数5.2×107cfu/gを含有していた.LKM512ヨーグルト投与前に比べて排便回数は有意 (p<0.05) に増加し, 糞便水分含量の増加傾向も認められた.さらに, その中から無作為に7名を選出して糞便内細菌叢を検索したところ, LKM512ヨーグルト投与2週目にBifidobacteriumが有意 (p<0.05) に増加し, 総菌数に対する占有率も6.6%から17.0%に有意 (p<0.05) に増加した.一方, プラセボ (L. delbrueckii subsp. bulgaricusおよびS.thermophilusを5.0×108cfu/gを含有するヨーグルト) 投与では全ての試験項目でLKM512ヨーグルトと同様な傾向が認められたが, その変化には有意差は認められなかった.以上の成績は, LKM512ヨーグルト投与が便性や糞便内細菌叢の改善に有効であることを示している.
  • 影山 亜紀子, 辮野 義己
    2001 年 14 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    抗生物質は各種細菌感染症の治療に用いられているが, 治療の結果, 正常フローラを変化させることが明らかにされている.どのような抗生物質が腸内細菌に影響を与えるのかを調べるためにCollinsella属をはじめとするヒト腸内最優勢菌種について, 9種類の抗生物質に対する感受性試験を行った.Collinsella属は全体的に薬剤感受性だが, セフェム系薬剤の一部やモノバクタム系の薬剤に対して耐性を持っことが明らかとなった.よって治療にはセフェム系やモノバクタム系の薬剤を用いた方が, 腸内のCollinsella属に対する影響は少ないと考えられる.また, Collinsella属3種の分類指標としても薬剤感受性の違いが用いられることも分かった.
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