腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
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36 巻, 4 号
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総 説
  • 香山 尚子
    2022 年 36 巻 4 号 p. 177-188
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

    病原微生物へのTh1, Th2, Th17応答は生体防御に必須であるが,過剰な炎症応答は組織恒常性維持の破綻につながる.そのため,Foxp3制御性T(Treg)細胞は,多様なメカニズムによりエフェクター応答を厳密に制御している.IPEX症候群では,Foxp3遺伝子変異にともなうFoxp3 Treg細胞の機能異常により,腸炎や自己免疫疾患が発症することより,Foxp3 Treg細胞が生体恒常性維持に極めて重要であることが示唆される.ヒトの腸管組織には40兆個も細菌が存在する.これまでに,腸内細菌の代謝産物や構成成分がFoxp3 Treg細胞の分化や機能を制御し,腸管恒常性維持に寄与することが報告されている.細菌叢の乱れが炎症性疾患,自己免疫疾患,神経系疾患に関与することが示唆されており,腸内細菌によるFoxp3 Treg細胞恒常性維持機構のさらなる解明が,多様な疾患の新規治療法開発につながることが期待される.

  • 竹内 直志, 大野 博司
    2022 年 36 巻 4 号 p. 189-198
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

    腸内細菌は様々な免疫細胞の誘導および機能成熟に関与するが,一方,腸内細菌を直接的に制御する免疫機構は限られている.免疫グロブリンA(IgA)は腸内細菌を制御する主要な免疫機構である.以前より,腸内細菌がIgAの誘導に重要であることは知られていたが,近年次世代シークエンサーの発展にともない,IgAが腸内細菌の組成や機能の制御に重要な役割を果たしていることが徐々に明らかになっている.本稿では,IgAと腸内細菌の相互作用に関わる要因に関して様々な知見を紹介し,IgAが腸内細菌の制御にどのような役割を果たしているかについて議論する.

報  文
  • 関 沙織, 小野寺 洋子, 岩堀 禎廣, 難波 利治, 海老原 淑子
    2022 年 36 巻 4 号 p. 199-208
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

    排便回数が週3~5回の41~61歳の健常成人20名を対象に,16種35株の乳酸菌およびビフィズス菌とその代謝物(乳酸菌生産物質)を含む豆乳発酵食品(商品名 FF16)の腸内細菌叢・排便に対する自覚症状・排便状況など,腸内環境への有用性についてランダム化二重盲検クロスオーバー比較試験により検討した.被験者にFF16(150 mg/日)を含む試験食品を摂取させたところ,日本語版便秘評価尺度(CAS-MT)において「排便回数」「排便時の肛門の痛み」「便の排泄状態」の各項目に加えて「総合評価」においても,開始時と比較して統計学的に有意な改善が確認された.また,試験食品摂取群において便のにおいと関わるなど潜在的有害菌として知られるBacteroidaceae, Sutterellaceae, Oscillospiraceaeがプラセボ食品摂取群と比較して統計学的に有意に減少し,また,感染症の減少に関わるなど潜在的有益菌として知られるDesulfovibrionaceae, Peptostreptococcaceae, Rikenellaceae, Eggerthellaceae, Actinomycetaceaeがプラセボ食品摂取群と比較して統計学的に有意に増加していた.以上の結果より,FF16の摂取により,排便に対する自覚症状の改善および潜在的有益菌の増加が確認されたことから,腸内環境の改善に有効であると考えられた.

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