ビフィズス菌は, ヒトや動物の大腸に棲息しているグラム陽性, 嫌気性菌で, 腸内腐敗を抑制したり, 腫瘍形成の抑制や免疫力を増強するなど, 宿主の健康維持に大切な役割を果たしている.ビフィズス菌はヨーグルトなどの乳製品や, 医薬品の生物資源として利用されているが, 将来は, ビフィズス菌に有用遺伝子が導入されてジーンデリバリーシステムや経口ワクチンなどへの利用が期待される.我々はビフィズス菌の中でも成人の腸管に多く見られる
Bifidobacterium longumから環状プラスミドを取り出し, その全域と大腸菌プラスミドpBR322およびグラム陽性菌で発現する
Enterococcus faecalis由来のスペクチノマイシン耐性遺伝子を組み込んで, プラスミドベクターpBLES100とpMASK23を構築した.電気穿孔法でこれらのプラスミドを
B.longumにtransfectしたところ, スペクチノマイシン耐性形質転換菌が約2×10
4/μg plasmidDNAの効率で得られ, 形質転換菌内のプラスミドは50世代培養後も失われることなく, 正常構造を保持していることがわかった.ヌクレオイドDNA結合蛋白質HUは, グラム陰性, 陽性いずれの原核生物にも広く保存されており, この遺伝子は高効率かっ恒常的に発現すると考えられている.我々はビフィズス菌で発現する高活性プロモーターを得るために,
B.longum ATCC15707株からHU産生遺伝子 (hup gene) をクローニングした.塩基配列からhup gene領域が明らかとなり, この遺伝子産物が
B.longum菌のヒストン様蛋白質HB1と同一であることがわかった.mRNA解析から, この遺伝子の転写開始点, プロモーターとターミネーター領域, リボソーム結合配列が明らかになり, この遺伝子がモノシストロニックであることと, 増殖の遅延期, 対数期, 静止期の各期で構成的に発現していることがわかった.この
hup geneをプラスミドベクターpBLES100に組み込み
B.longum105-A株に移入して
hup mRNAを測定したところ, プラスミド上でも
hup geneは効率よく転写されることが明らかになった.
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