腸管管腔内には病原性を持つ細菌を含む多様な細菌が存在しており,宿主細胞は種々の分子を管腔中へ分泌することで腸管管腔内の恒常性を維持している.宿主由来の分泌性分子による腸内細菌叢制御は,上皮細胞および免疫細胞の相互作用が必須である.本稿では,宿主による腸内細菌叢制御に関して,最新の知見も含め概説をする.
おびただしい数の腸内細菌が存在する腸管においては,腸管上皮細胞によって構築される上皮バリアが腸内細菌を,小腸では主に殺菌作用のある化学的バリアで,大腸では粘液層を中心とした物理的バリアで制御し,各腸管で恒常性が維持されている.それゆえ,何らかの環境要因により腸内細菌が変化する,または遺伝的素因により上皮バリアが脆弱化した場合には,腸内細菌の組織侵入を許すことになり,腸内細菌による過剰な免疫応答により,炎症性腸疾患が発症する.