腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
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ISSN-L : 1343-0882
32 巻, 1 号
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総  説 <特集:脳神経系と腸内細菌叢Microbiota>
  • 福土 審
    2018 年 32 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/29
    ジャーナル フリー
    過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)の病態に腸内細菌が大きく関与している可能性が高くなっている.感染性腸炎後にIBSが発症し,IBS患者の腸内細菌組成も健常者と異なる.ストレスは腸内細菌組成を変容させ,粘膜透過性亢進と内臓知覚過敏を招き,IBSの病態に沿った病理変化を起こす.IBS患者の腸内細菌を変容させ,症状が改善する場合には,同時に抑うつを中心とする中枢機能が改善する.IBS患者の糞便中の短鎖脂肪酸の濃度は消化器症状,quality of life,性格傾向にまで影響している.短鎖脂肪酸の種類による健康維持とIBS病態の分水嶺を腸内細菌が左右するモデルが注目される.IBS患者の腸内細菌を脳腸相関に沿ってさらに検討する活動が有望である.
  • 功刀 浩
    2018 年 32 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/29
    ジャーナル フリー
    うつ病は慢性ストレスを誘因として発症することが多いが,腸内細菌叢とストレス応答との間に双方向性の関連が示唆されている.動物実験によりプロバイオティクスがストレスに誘起されたうつ病様行動やそれに伴う脳内変化を緩和することが示唆されている.うつ病患者における腸内細菌に関するエビデンスはいまだに乏しいが,筆者らはうつ病患者においてLactobacillusBifidobacteriumが減少している者が多いことを示唆する所見を得た.最近,プロバイオティクスがうつ病に有効であるという臨床試験の結果も報告されるようになった.自閉症スペクトラム障害においては,消化器症状を示す者が多いことが知られ,重症度とも相関することから,古くから腸内環境の関与が検討されている.患者の腸内細菌叢に関する検討では,ClostridiumSutterellaなどいくつかの菌の変化が指摘されているが,結果は必ずしも一致していない.プロバイオティクスや便の細菌移植などの治療法が探られており,ASDの有効な治療法は殆どないことから,今後の発展が期待される.
トピックス
  • 阿部 高明
    2018 年 32 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/29
    ジャーナル フリー
    慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)は糖尿病,高血圧,慢性糸球体腎炎などを原疾患として慢性の経過で腎機能が徐々に低下していく進行性の病態である.CKDの治療の原則は高血圧と糖尿病の治療のための食餌療法(カロリー制限と減塩)およびレニンアンジオテンシン系抑制薬の使用が重要であるが,近年腸内細菌叢の関与が明らかになってきた.なかでもインドキシル硫酸,p-クレシル硫酸,トリメチルアミンN-oxide(TMAO)は100%腸内細菌によって作られ,かつそれらはCKD患者の腎予後,生命予後に密接に関連することが知られてきた.したがって,便秘改善を含め腸内細菌叢を介してこれらを減少させることがCKDの新しい治療介入法として期待されている.
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