腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
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最新号
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総 説
  • 松本 靖彦
    2024 年 38 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    腸内微生物叢の破綻は,感染症だけでなく生活習慣病や癌など様々な疾患の発症や増悪に影響する.よって,腸内微生物叢でおこる微生物間,および微生物と宿主の相互作用を理解することはそれらの疾患の予防や治療に繋がる.一般的な基礎研究では,抗菌薬で処理されたマウスやノトバイオートマウスが用いられるが費用や倫理的な問題が生じる.本稿では,代替動物としてカイコを利用した基礎研究のなかで疾患モデルにフォーカスを当てて概説する.無脊椎動物であるカイコは倫理的な問題が少ないので多数の個体を用いた実験が可能である.カイコを実験動物として感染症および糖尿病の病態モデルが確立されている.これらのカイコの病態モデルを利用して感染症や糖尿病に対する予防効果が期待できる乳酸菌が同定されており,その実験動物としての有用性に関して紹介する.

  • 中台(鹿毛) 枝里子
    2024 年 38 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    腸内細菌やプロバイオティクスによる疾患や健康の制御に向けたアプローチが盛んに試みられる一方,腸内細菌と宿主間の相互作用の分子的実体には未解明な点も多い.線虫Caenorhabditis elegans (C. elegans)は,3つのノーベル賞研究をはじめとして,さまざまな生命現象の発見において重要な役割を果たしてきたモデル生物の一つであるが,腸内細菌研究においても例外ではない.乳酸桿菌やビフィズス菌による線虫の寿命延伸作用が報告されて以降,哺乳動物実験の削減・廃止の動きも相まって,線虫を代替モデルとしたプロバイオティクスや有用菌の生体作用に関する知見が急速に蓄積している.線虫固有の腸内細菌叢についての理解も進むなか,腸内細菌叢―宿主間相互作用の解明に向けて線虫モデルの活用がますます期待される.

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