腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
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29 巻 , 3 号
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総  説 <特集:腸内細菌叢Microbiotaの分子生物学的解析法の成果と未来>
  • 高田 敏彦, 角 将一, 野本 康二
    2015 年 29 巻 3 号 p. 123-134
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    複雑な腸内フローラを正確かつ詳細に解析するために,種々の分子生物学的手法が開発されている.Fluorescence in situ hybridization(FISH)法は,形態を保持したまま細菌を検出するため,細菌の空間分布解析に有用である.さらに,複数の標識プローブを同時に用いる多重染色FISH法は,腸管局所における細菌の構成,分布を同時に解析できるため,通常のFISH法よりも複雑な腸内フローラ解析が可能である.我々は,ヒトの糞便から分離される7種のBifidobacterium属菌種を同時に検出できる多重染色FISH法を開発した.さらに,マウス盲腸粘膜組織を用いて,多重染色FISH法により腸管粘膜細菌叢を解析するための至適条件を構築した.多重染色FISH法により炎症性腸疾患患者の糞便および腸管粘膜細菌叢を解析した結果,両者では細菌構成が異なることを見出した.今後,細菌の機能遺伝子を標的とするFISH法の開発により,ヒトの健康と疾病に関与する腸内細菌の解明に繋がることが期待される.
  • 東 佳那子, 中山 二郎
    2015 年 29 巻 3 号 p. 135-144
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    次世代シーケンサー(NGS)が登場し,自然界の複雑な微生物コミュニティーのプロファイリングが実現可能となった.100兆個100種を超える細菌がひしめく腸内フローラの研究にも今やNGSは必須のアイテムとなった.しかし,NGSは進化を続け世代交代の時期を迎えている.それにともないNGSを用いる菌叢解析のプラットフォームも変更の必要性が生じる.ここでは,これまで腸内細菌叢研究に最も多く用いられてきたロシュ社454ピロシーケンサーと,近年発展の目覚しいイルミナ社MiSeqのデータを比較検討した.また,シーケンスする16S rRNAの可変領域の検討もin silicoと実際のサンプルデータの両者を用いて行った.その結果,系統解析にはV3-V4が最も良好な結果を与えた.定量性はV6-V8が全体的に良好な結果を示したが,ユニバーサルプライマーによる一部の細菌グループに対する増幅効率のバイアスがどの領域でも見られた.しかし,UniFrac-PCoA解析にて示される菌叢の全体的な傾向はどのデータでも同様に観察され,NGSによる腸内細菌叢解析の堅牢性が示された.数あるNGSの中において,MiSeqはランニングコストや操作性という観点からも腸内細菌叢解析に適しており,今後本分野の研究に頻用されていくであろう.
  • 福田 真嗣
    2015 年 29 巻 3 号 p. 145-155
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    メタボロゲノミクス(Metabologenomics)とは,代謝物質を網羅的に解析するメタボロミクス(Metabolomics)と,腸内細菌叢遺伝子を網羅的に解析するメタゲノミクス(Metagenomics)とを組み合わせた研究アプローチである.われわれの腸管内には多種多様な腸内細菌が生息しており,それら腸内細菌叢が宿主腸管細胞と相互作用することで異種生物で構成される複雑な腸内生態系,すなわち腸内エコシステムを形成している.腸内エコシステムの恒常性を維持することがヒトの健康維持・増進に大きく寄与していることが近年明らかになりつつあるが,逆に腸内細菌叢のバランスが崩れることで腸内エコシステムが大きく乱れると,大腸がんや炎症性腸疾患といった腸管関連疾患のみならず,自己免疫疾患や代謝疾患といった全身性の疾患につながることも報告されている.したがって,腸内細菌叢を異種生物で構成される一つの臓器として捉え,その機能を理解し制御することが,疾患予防・健康維持における新たなストラテジーとして重要と考えられる.近年,特に腸内細菌叢のメタゲノム解析やメタトランスクリプトーム解析により,個々人の腸内細菌叢遺伝子地図や推定される遺伝子機能に関する研究は盛んに行われている.しかし,腸内細菌叢による宿主への直接的な作用を理解する上で重要なカギを握るのは,腸内細菌叢から産生される種々の代謝物質と考えられる.本稿では,腸内細菌叢由来代謝物質が宿主の健康状態にどのように影響しているのかについて,メタボロミクスによる全容理解に向けた近年の取り組みについて紹介するとともに,腸内細菌叢変動とも組み合わせたメタボロゲノミクスの有用性についても議論する.
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