腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
Print ISSN : 1343-0882
ISSN-L : 1343-0882
37 巻, 4 号
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総 説
  • 三宅 幸子
    2023 年 37 巻 4 号 p. 179-185
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    腸内環境は様々な疾患との関連が注目されている.腸と中枢神経は腸脳相関として関連が深いことが以前から注目されていた.さらに,腸は免疫系との関連が深く,中枢神経と免疫系も関連が深い.近年,多発性硬化症のような免疫疾患ばかりでなく,パーキンソン病などに代表される変性疾患においても炎症反応などの免疫応答が病態形成に関与することが注目されている.腸内細菌との関連では,免疫性神経疾患の代表である多発性硬化症においても,病態形成への腸内環境の関与が注目されているパーキンソン病においてもdysbiosisが報告されている.腸内環境が神経炎症に影響を与える機序については動物モデルを使って研究がなされており,腸内細菌の代謝産物や細菌成分が免疫系に影響を与えるだけでなく,グリア細胞にも影響して病態に関与する可能性が示されている.

  • 下条 直樹
    2023 年 37 巻 4 号 p. 187-198
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    ヒトの腸内細菌叢は,出生後から乳幼児期にかけてダイナミックに変化し,3歳までに安定するといわれている.乳幼児期に形成される腸内細菌叢は,アレルギー疾患も含めてヒトの健康・疾病に大きくかかわっており,その乱れ(dysbiosis)は短期的のみならず,長期的な影響を健康状態に及ぼす可能性がある.小児の代表的なアレルギー疾患である,アトピー性皮膚炎,喘息,食物アレルギーで発症前からのdysbiosisが報告されているが,特定の菌属の関与は明らかではない.腸内細菌の代謝物のなかで酪酸のアレルギー疾患の寛解における関与を示す研究はいくつかあるが,発症における短鎖脂肪酸の関与についてはまだ不明な点が多い.腸内細菌叢の形成・発達には,出産様式,抗生物質の使用の有無,乳児期の栄養法などが大きく影響する.プロバイオティクスなどによるアレルギー疾患の予防では,出産後の介入は効果はなく,妊娠中からの介入の有効性が報告されている.特に食品・栄養素が腸内細菌叢に与える作用についての解析が今後望まれる.

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