京都の伝統的な漬物である「すぐき」から分離された乳酸産生菌Lactobacillus brevis KB290が,ビタミンA併用投与によりマウス腸炎モデルの腸炎発症進展を抑制することを明らかにしてきた.この腸炎抑制効果には,大腸粘膜において炎症抑制的に作用するCD11c+マクロファージと炎症促進的に作用するCD103−樹状細胞の比率を増加させることが関与していた.さらに,Lactobacillus brevis KB290とβ-カロテン併用療法による下痢症状に対する有効性を検証するために,下痢型過敏性腸症候群様症状の日本人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験を実施したところ,排便頻度が低下し,腹部症状による労働生産性の低下を改善した.また,糞便細菌叢の解析でBifidobacterium属が有意に増加し,Clostridium属が有意に減少することが示された.
「運動」はその腸内細菌の構成を変化させ,有益な代謝系をもつ腸内細菌叢に変化させることがわかってきた.すなわち,身体にダメージを受けるような練習や試合をするアスリートの腸内細菌叢は,運動(と食事)によりそのダメージを修復し高エネルギー獲得系の腸内細菌叢に変化させていることは興味深い.一方で,「肥満型」の腸内細菌叢と同様,本来,個人の腸内細菌叢は非常に多様であり,個人により保有する腸内細菌は本質的に異なることから,特定の1菌種や1菌株のもつ機能ではなく,細菌叢全体の細菌で「アスリート型」の腸内細菌叢を形成しているのではないかと推察されている.