腸内細菌学雑誌
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24 巻 , 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総 説
  • 中村 康則, 大木 浩司
    原稿種別: 総 説
    2010 年 24 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/25
    ジャーナル フリー
    乳酸菌Lactobacillus helveticusは,発酵中に乳蛋白質を分解し,潜在するペプチドvalyl-prolyl-proline,isoleucyl-prolyl-prolineを産生する.両ペプチドは,アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する.この酵素は,アンジオテンシンIに作用し,強力な血圧上昇物質アンジオテンシンIIを産生することで知られる.動物実験および in vitro試験の結果は,経口摂取された両ペプチドの一部が,インタクトな形で消化管より吸収され,組織レニン・アンジオテンシン系に作用し,血圧を降下させることを示唆している.我々が実施したヒト飲用試験では,両ペプチドを含有する発酵乳の摂取により,高血圧者の収縮期および拡張期血圧が有意に降下することを確認した.アンジオテンシン変換酵素は,NO産生を促進するブラジキニンを分解・失活する酵素でもある.従って,両ペプチドには,NOによる血管内皮機能の維持,動脈硬化予防の可能性が期待される.NO合成酵素阻害剤NG-nitro-L-arginine methyl ester hydrochlorideを投与したラットの胸部大動脈を摘出し,アセチルコリンに対する内皮応答性を調べた結果,いずれのペプチドも阻害剤と同時摂取させたとき,阻害剤による応答性低下の改善を認めた.また,我々が実施したヒト試験では,両ペプチドの摂取により,プレスティモグラフィーにおける上腕の駆血解放後の血流量の増大が認められ,このとき,血圧に変化はなかったため,両ペプチドによる,血管内皮機能の改善が示唆された.以上のことから,両ペプチドは,血圧降下という作用のみならず血管内皮機能改善作用によってメタボリックシンドロームの予防,改善に寄与するものと考えられる.
  • 川瀬 学, 何 方
    原稿種別: 総 説
    2010 年 24 巻 4 号 p. 265-271
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/25
    ジャーナル フリー
    筆者らは,血清コレステロール低下をはじめとする血清脂質改善効果に焦点を当ててそれに適した乳酸菌の選抜とその有効性について,動物実験からヒト臨床試験まで行って検討してきた.一方,乳の抗肥満効果についての研究が進み,そこに含まれるカルシウム等の乳成分に,高い抗肥満作用があることが知られるようになった.本稿では,筆者らが血清脂質改善効果に着目して選抜した乳酸菌による複合発酵によって,高カルシウム乳の抗肥満効果がさらに上昇したとする最新の研究結果を中心にプロバイオティクス発酵乳の抗肥満作用について述べる.
  • 大野 裕史
    原稿種別: 総 説
    2010 年 24 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/25
    ジャーナル フリー
    我が国の糖尿病患者数は予備軍を含め,生活習慣と社会環境の変化に伴って急速に増加している.その大部分を占める2型糖尿病は,医療費の増加を生じさせている一重大疾患であり,その対策として発症の予防,早期発見による治療等が重要である.近年,この疾患に対するプロバイオティクスの効果について,いくつかの動物モデルで検討が行われ,有用性が示されているが,その作用メカニズムについては,糖尿病自体の発症メカニズムが複雑な部分も相俟って明確にされていない.本稿では,プロバイオティクスが有する脂質代謝改善作用,抗炎症作用および腸内菌叢改善作用の観点からそのメカニズムを考察するとともに,重要課題とされる予防・初期治療を含め,臨床におけるプロバイオティクスの役割について述べる.
  • 近藤 しずき, 清水(肖) 金忠
    原稿種別: 総 説
    2010 年 24 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/25
    ジャーナル フリー
    プロバイオティクスによるコレステロール低下などの血中脂質改善作用に関しては, in vitro実験,動物実験およびヒト試験にて多数の報告があった.その作用機序としてコレステロールの菌体への吸着や脱抱合型胆汁酸との共沈による吸収抑制,ビフィズス菌や乳酸菌の持つ胆汁酸脱抱合酵素の作用による胆汁酸排泄促進および,腸管において産生される短鎖脂肪酸によるコレステロール合成抑制などが考えられている.ヒト試験において,特に高い胆汁酸脱抱合酵素活性を持つビフィズス菌や乳酸菌による改善作用が多く報告されている一方,一部の乳酸菌について効果は認められない報告も散見され,プロバイオティクスによる血中脂質改善効果について更なる検証が必要である.また,近年,腸内細菌叢と肥満や脂質代謝の関係についても急速に研究が進んでおり,今後の発展が注目される.
  • 松村 敦
    原稿種別: 総 説
    2010 年 24 巻 4 号 p. 287-292
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/25
    ジャーナル フリー
    当研究所保有乳酸菌293株の膵リパーゼ阻害作用を検討した結果,60株が10%以上の膵リパーゼ阻害作用を示した.また,特に強いリパーゼ阻害作用を示した7菌株について,脂肪負荷ラットにおける中性脂肪濃度の上昇抑制作用を検討した結果, Lactobacillus gasseri NLB367が有意な作用を示した.
    膵リパーゼ阻害作用の機能を有し,脂肪負荷ラットの中性脂肪上昇抑制作用を示したことから,乳酸菌はメタボリックシンドロームを予防・解消する可能性が示唆された.
報 告
  • 木島 彩, 梅川 奈央, 吉田 優, 大澤 朗
    原稿種別: 報 文
    2010 年 24 巻 4 号 p. 293-302
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/25
    ジャーナル フリー
    偏性嫌気性グラム陽性桿菌であるビフィズス菌は,新生児腸内細菌叢において圧倒的多数を占める.その由来として,母親からの「垂直伝播」が示唆されているが,実際に母親由来ビフィズス菌が子の腸内に伝播しているという直接的な知見は未だ報告されていない.そこで,ビフィズス菌の母親から新生児への菌株レベルでの伝播をパルスフィールドゲル電気泳動(Pulsed-Field Gel Electrophoresis; PFGE)法によって検証した.その結果,5組の母子双方の糞便から Bifidobacterium longum subsp. longumB. longum)が分離され,このうち3組の母親由来株と新生児由来株のPFGEパターンが組ごとに一致した.次に,これら母親由来株の好気及び微好気条件下での生残性を調べた.その結果,1)培地平板上では好気条件下で6時間,微好気条件下で18時間は初発の菌数を維持すること,2)ヒトの手のひら上では生残数が急速に減少し,3時間で全ての菌が死滅すること,3)好気環境でも乾燥状態では全ての菌が死滅するまでに24時間以上かかることが明らかとなった.これらの結果から,ビフィズス菌は母親の手指よりも産道や大気,器具,衣類等を介して垂直伝播することが示唆された.
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