腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
Print ISSN : 1343-0882
ISSN-L : 1343-0882
37 巻, 3 号
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総  説
  • 藤橋 浩太郎
    2023 年 37 巻 3 号 p. 139-148
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/07
    ジャーナル フリー

    加齢による腸内細菌叢の変化は周知の事実であり,それにともない高齢者ではインフラメイジングと呼ばれる低応答の慢性炎症の持続や免疫応答の低下が認められる.早期の経口免疫寛容の破綻はインフラメイジング誘導の一因と推測され,その後の腸管粘膜免疫応答の低下を引き起こしている可能性がある.高齢者の腸内細菌叢の変化と免疫応答の低下は密接な関係があると考えられるため,高齢者において致死率が高い呼吸器感染症を防ぐには,腸内細菌叢の維持,若返りが必要であるが,その実施は困難である.経鼻ワクチンは,加齢や腸内細菌叢の変化による影響は少なく,新規アジュバントの開発による感染防御可能な粘膜免疫応答の誘導が示唆されている.高齢者における腸内細菌叢の改善とその維持,新規粘膜ワクチンによる感染症の予防は健康寿命を伸ばし,持続可能社会の構築に貢献すると考えられる.

  • 鈴木 功一郎, 長谷 耕二
    2023 年 37 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/07
    ジャーナル フリー

    出生と同時に我々は母体由来や環境由来の細菌に曝露され,腸内細菌との共生が始まる.乳幼児期の未成熟な腸内細菌叢は不安定であり,様々な環境要因の影響を受けやすい.この時期の腸内細菌叢に影響を与える分娩様式の違い(経膣分娩か帝王切開か)や抗生物質の使用は,将来の免疫疾患の発症のしやすさに影響することが多くの疫学研究により示されているが,そのメカニズムには不明な点が多く残っている.マウスを用いた研究により,乳幼児期の特定の期間にしか起こらない腸内細菌依存的な免疫反応の存在が明らかになってきており,この期間(しばしば“window of opportunity"と表現される)に起きるべき免疫反応の機を逸することが,将来の免疫疾患につながる可能性が示唆されている.乳幼児期の腸内細菌叢を正常化する方法が研究されており,腸内細菌叢の正常化によって将来の免疫疾患の発症まで抑制できるか,今後の研究が期待されている.

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