本研究の目的は, 幼児期・児童期における白己理解の発達的変化を, 特に自己描出の内容的側面および評価的側面に着目し検討することである。そのために保育園5歳児クラス (32名) , 小学校2年生 (37名) , 4年生 (35名) , 計104名を対象に, 自己評価・自己定義・自己の関心についての質問からなる自己理解インタピューを実施し, その描出をDamon, & Hart (1988) の自己理解モデルに基づきその一部を改作した分析枠に沿って分類した。その結果, まず第lに, 年齢の増加に伴い, 身体的・外的属性に関する描出が減少し, 行動および人格特性に関する描出が増加することが明らかになった。そして第2に, 協調性に関する言及が各学年で多く見られ, 年齢の増加に伴い, 勤勉性や能力への言及が増加することが示された。また人格特性に関する描出では, 年齢の増加に伴い, 使用される特性語の種類が増加する傾向が見られた。第3に評価的側面の理解に関しては, 年齢の増加に伴い, 肯定的側面 (好き・いいところ) のみを描出するものが減少し, 否定的側面 (嫌い・悪いところ) を描出するものが増加した。加えて, 4年生では「好き嫌い」質問と「いい-悪い」質問に異なる反応を見せ, 「いい-悪い」質問の方がより否定的に捉えられていることがうかがわれた。
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