発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
19 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 氏家 達夫
    原稿種別: 本文
    2008 年 19 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 朋子
    原稿種別: 本文
    2008 年 19 巻 1 号 p. 2-14
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,ベイズ型推論課題解決の発達過程を,確率量化,すなわち課題を確率的に解決する際の知的操作の水準の違いという観点から分析することを目的とし,構造を維持しつつも内容を単純化した「ベイズ型くじびき課題」を用いて,確率量化の水準を発達的に明らかにできるような調査を行った。その結果,(1)中学生の多くは確率の1次的量化(中垣,1989)のみ可能な水準にあるが,大学生は概ね2次的量化が可能な水準にあること,(2)基準率無視(Kahneman & Tversky, 1973)の代わりに尤度無視が多数出現し,基準率無視が課題内容に依存する反応であること,(3)人は必ずしも代表性ヒューリスティツク(Tversky & Kahneman, 1974)などを用いて課題解決をしているのではなく,大学生でも,3次的量化を必要とするベイズ型推論課題の構造そのものの把握に難しさがあること,すなわちコンピテンスに問題があることが示された。
  • 山崎 寛恵
    原稿種別: 本文
    2008 年 19 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    一名の乳児の日常場面における伏臥位でのリーチングを約5〜8ケ月齢にわたって縦断的に観察した。伏臥位でリーチングを行う時,乳児は上肢で対象物に対する頭部の視覚的定位を維持するために上体を支持することと,対象物に接触することの2つの機能を達成しなければならない。乳児はこれらの機能を同時にどのように達成しているのか,またその達成方法はどのように発達的に推移するのかを明らかにするため,観察されたリーチングを機能的観点から「上体支持有り],「一時上体支持有り],「上体支持無し」の3種に分類し,その出現推移を量的に分析した。その結果,上体を支持しながらリーチングするパターンから,上体を支持することなくリーチングするパターンへの移行が見られたが,リーチング成功率とリーチング時に上肢が担う機能変化との関係は示されなかった。量的分析で明らかにならなかった複雑な様相を,全身の協調の質的記述によって検討した。得られた結果は,乳児が対象物への到達を可能にするために身体各部位を機能的に協調させていることを示すとともに,リーチング発達が身体を不安定にすることによって新しい姿勢調整を獲得する過程であることを示唆する。
  • 菊池 知美
    原稿種別: 本文
    2008 年 19 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,幼稚園から小学校へ入学する際,子どもたちがどのようなプロセスを経て移行をしていくのかその実態を描き出すことを目的とする。方法にはSuper & Harkness (1986)による「発達的ニッチ理論」を援用し,子どもを能動的な存在として環境と相互に調節し合う関係に注目した。また,「発達的ニッチ理論」を学校文化に沿うように再定義し,「学校発達的ニッチ」と名付けてその相互調節過程を幼小移行過程と捉えて分析をした。対象はA幼稚園とB小学校とし,両者は同地域内に立地していたことから5人の子どもたちを追い続けることができた。観察は小学校入学の4月を中心に9ヶ月間,過1回の割合で行い,さらにインタビューを年長組と1年生の担任教師,両者を移行した子どもたちの母親に実施した。その結果,子どもだちと学校発達的ニッチ間において相互調節の仕方が異なる点や子どもによる相互調節に対する積極性の差異が問題を生じやすくする点として見出された。また,学校発達的ニッチの3要素に影響を与える生態環境の中に今後の幼小移行における課題の一部が明らかになった。
  • 瀬野 由衣
    原稿種別: 本文
    2008 年 19 巻 1 号 p. 36-46
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,相手によって知識の提供と非提供を使い分けられるようになる発達的プロセスを検討した。105名の幼稚園児(3〜6歳児)を対象に,隠し合いゲームを実施し,ゲームの流れの中で協力場面,競争場面を設定した。どちらの場面でも,子どもは宝物の隠し場所を見たが,協力相手,競争相手はそれを見なかった。協力相手に正しい知識を提供すれば,宝物は子どもの宝箱に人った。一方,敵である競争相手に正しい知識を提供すると,宝物は競争相手に取られてしまった。いずれの場面でも,協力相手,競争相手は,まず,子どもに「知ってるかな?」と尋ねた。その後,子どもが知識を提供しなかった場合は,「教えて」と尋ね,知識伝達を促した。その結果,年少児(3歳児)では,両場面で,「知ってるかな?」と質問された時点で隠し場所を指す,即時性の強い反応が最も多くみられ,この反応は年齢の上昇と共に減少した。一方,正答である競争相手には知識を提供せず,協力相手のみに知識を提供するという使い分けは,年齢の上昇と共に可能になった。さらに,上記の課題で知識の提供と非提供を使い分けられる子どもは,既知の対象に対する行為抑制が必要な実行機能課題(葛藤課題)の成績もよかった。以上から,相手によって知識の提供と非提供を使い分ける能力の発達に,既知の対象に対する行為抑制の発達が関連することが示唆された。
  • 近藤 綾
    原稿種別: 本文
    2008 年 19 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,外部情報のソースモニタリング能力について幼児と成人を対象とした発達的検討を行った。第1実験では,まず学習として男性と女性の2つの音声刺激で単語を聞かせた。その2分後のテスト時では,再認テストとソースモニタリングテストを行った。ソースモニタリングテストでは,単語を"男性の声だけで聞いた","女性の声だけで聞いた","男性と女性の両方の声で聞いた","どちらの声でも聞かなかった",の4つの項目から判断させた。その結果,幼児は成人と比較してソースモニタリングテストの成績が悪く,中でも"両方に共通する情報(両方の声で聞いた)"という判断項目の成績が級も悪かった。よって第2実験では,"両方に共通する情報"という判断項目に対する成績が悪かった原因として提示する刺激の類似性に注目した。第1実験で用いた2つの刺激は音声と音声の区別という類似性の高い刺激であると考えられた。従って単語が両方に提示されたことにより気付きやすくするため,第2実験では提示する2つの刺激を類似性の低い刺激,つまり画像刺激と音声刺激,に変更して第1実験と同様の方法で検討を行った。しかし結果は第1実験と同様であり,本研究において幼児はソースモニタリング能力が十分に発達しておらず,中でも2つの情報源の両方から情報が発信されたと判断することが困難であるということが明らかとなった
  • 中井 大介, 庄司 一子
    原稿種別: 本文
    2008 年 19 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,学校教育における教師と生徒の信頼関係の重要性と,思春期における特定の他者との信頼関係の重要性を踏まえ,中学生の教師に対する信頼感と学校適応感との関連を実証的に検討することであった。中学生457名を対象に調査を実施し,「生徒の教師に対する信頼感尺度」と「学校生活適応感尺度」との関連を検討した。その結果,(1)生徒の教師に対する信頼感は,生徒の「教師関係」における適応だけではなく,「学習意欲」「進路意識」「規則への態度」「特別活動への態度」といった,その他の学校適応感の側面にも影響を及ぼすこと,(2)各学年によって,生徒の教師に対する信頼感が各学校適応感に与える影響が異なり,1年生では教師に対する「安心感」が一貫して生徒の学校適応感に影響を与えていること,(3)一方,2年生,3年生では「安心感」に加えて,「不信」や「役割遂行評価」が生徒の学校適応感に影響を与えるようになること,(4)各学年とも,生徒の教師に対する信頼感の中でも,教師に対する「安心感」が最も多くの学校適応感に影響を及ぼしていること,(5)「信頼型」「役割優位型」「不信優位型」「アンビバレント型」といった生徒の教師に対する信頼感の類型によって生徒の学校適応懸か異なること,といった点が示唆された。
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