真菌と真菌症
Online ISSN : 1884-6971
Print ISSN : 0583-0516
ISSN-L : 0583-0516
29 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 椿 啓介
    1988 年 29 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    The genus Prototheca is composed of microscopic achlorophyllous organisms has a life cycle similar to that of Chlorella and is widespread in nature. Prototheca species are considered adventitious pathogens. The genus is reviewed on the basis of life cycle, morphology and physiology. Colony morphology and physiological identification keys are given. All eleven known epithets published on Prototheca are listed and a literature review is provided.
  • 長谷川 篤彦
    1988 年 29 巻 3 号 p. 161-162
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 実験的モルモット足白癬
    藤田 繁, 松山 東平, 佐藤 良夫
    1988 年 29 巻 3 号 p. 163-168
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    モルモット足底に Trichophyton mentagrophytes の分節胞子を接種し, 感染に必要な菌量, 感染初期の菌侵入過程, その後の感染経過を調べた.
    50%最小感染価は好人株NTM-105では分節胞子だと280個, 小分生子だと315個, 好獣株SM-110では分節胞子で80個であった. いずれの菌株でも分節胞子5×103個の接種により確実に感染が成立した. また, 50個の分節胞子接種でもモルモット足底に感染が成立しえた.
    感染初期の菌侵入をNTM-105株で調べた. 接種6時間後には分節胞子の一部が発芽し, 12時間後には角層細胞に菌糸が侵入するのが走査電顕で観察された. 光顕的には1日後には角層内に菌は認められなかったが, 3日後には角層の上1/3に, 7日後には2/3に侵入した.
    その後の感染経過はNTM-105, SM-110両菌株で調べた. 好人株NTM-105では感染菌の侵入は角層の上2/3に限られ炎症症状は認められなかった. 一方これとは対照的に, 好獣株SM-110では菌は角層全層, 顆粒層直上まで侵入し炎症性組織反応が認められた. その後, 長期間 (SM-110:~6ヵ月,NTM-105:~1年) にわたり感染菌の動態を調べたが自然治癒は全く認められなかった.
    上記のごとくモルモットで再現可能となった足白癬はヒトの足白癬を実験的に解析するのに有用と考えられる.
  • 動物モデル作成における常在細菌叢および宿主抵抗因子の関与
    内田 勝久
    1988 年 29 巻 3 号 p. 169-181
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    カンジダ症の感染モデルは, 操作の容易性あるいは動物で致死的感染が成立するなどの理由で, 一般には静脈内接種, 腹腔内接種などの実際にヒトで起りえない不自然な経路で菌接種を行うことが多く, 自然発症例と比較するとカンジダ症の病態を的確に反映しているとはいい難い.
    われわれは, 感染成立における常在細菌叢の存在意義と宿主抵抗因子の役割を背景とするヒトのカンジダ症にできるだけ近似した感染モデル作成を試みた.
    1. マウスにおける消化管定着, 腸管から全身への播種および系統的感染の成立
    Candida albicans は通常, 齧歯類の動物に常在することは少なく, SPFマウスに経口接種しても定着しえない. 消化管に定着されるには, 抗細菌性抗生剤による嫌気性常在細菌叢の撹乱が必要であり, 特にカンジダと同じ非腺胃部を増殖の場とする乳酸桿菌の存在が重要な意味を持つことが明らかとなった. 広域抗菌剤メズロシリン投与マウスでは毒力に関係なく C. albicans はよく定着し,さらに強毒株定着マウスではコルチソン処置により腸管から実質臓器へ播種し致死的感染が成立した.
    2. 妊娠マウスにおける腟内定着と産仔への移行
    妊娠後期の腟内は細菌数が著しく減少する. このようなマウスの腟内に C. albicans ヒト由来株を接種すると, エストロゲンを負荷しなくてもよく定着し, 出産時まで持続し出生した新生仔へ高率に菌が移行した.
    ヒトでも起りうる侵入経路を用いて作成されたこれらのモデルにおいては, 動物の体内で定着, 増殖し致死的感染の成立を可能にした. しかも菌の毒力の強さと宿主の抵抗力の減弱化とに依存して重篤化するという点でヒトの病態とよく対応する.
  • 渋谷 和俊, 直江 史郎, 内田 勝久, 山口 英世
    1988 年 29 巻 3 号 p. 182-190
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    我が国の深在性真菌症は大半が, 日和見感染としてみられる. この中でもクリプトコックス症は, 特に基礎疾患がなくても発症することがあり, 本邦における最も重要な深在性真菌症といえよう. 我々は,最も自然な感染経路としてマウス鼻腔内への菌接種による非観血的気道感染モデルを作製した. このモデルに対する病理組織学的検討を加え, クリプトコックスに対する感染防御機構の解析を試みた.
    1. 菌株に有する感染致死毒力の比較: 6株の患者由来 Cryptococcus neoformans をICR系マウスの脳内・静脈内・腹腔内に接種し, 各群の死亡率について検討した. 各菌株の有する感染致死毒力は, 菌種間ならびに接種経路によって多彩であり, 莢膜形成能との相関は少なかった.
    2. 経鼻接種モデルの作製とその解析: 比較的強い感染致死毒力を示す2株を使用した経鼻接種モデルを作製し, 肺病変の経時的変化について検討した. この結果,弱毒株接種群では肉芽腫性病変が, また, 強毒株接種群では嚢胞様病変が, 肺組織内に形成された. 各病変部に出現する組織球の抗原提示能を検索したところ, 肉芽腫性病変成立株では, 接種14日目にIa抗原陽性組織球の存在を確認した.
    3. 近交系マウスによる感染致死毒力の比較: 5系統の近交系マウスを用い, 経鼻接種による死亡率について検討した. ICR系マウスにおける肉芽腫性病変形株では, BALB/c, で最も強い致死毒力を, また嚢胞様病変成立株では, 何れの系統でも致死的感染を成立させるが, 特にCBA/J, DBA/2で強い致死毒力を示した.
    菌の持つ病原性は, 食細胞系を主とした防御能とこれに続く細胞性免疫の発現様式の差によって規定されていると推定された.
  • 松川 清, 千早 豊
    1988 年 29 巻 3 号 p. 191-194
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    牛は濃厚飼料多給による前胃アシドーシスにおいて粘膜変性を惹起し, そこに食渣内常在真菌の侵入を招くといわれている. 同じ反芻獣の緬羊を用い, 実験的にムコールが前胃アシドーシス下, 粘膜に感染することを実証した.
  • 西村 和子, 宮治 誠
    1988 年 29 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    脳アスペルギルス症の発生頻度は約6%と少なく, 多くは血行散布による二次病巣として発生することもあって, 意図的にアニマル・モデルを作製したという報告はきわめて少ない. ふつう Aspergillus fumigatus の主要標的臓器は静脈内接種の場合腎であるが, 著者らは1969年来, ごく少数であるがマウスに静注すると脳を特異的に侵す菌株があること, このような菌株は高い蛋白分解活性があることを明らかにしてきた. 今回, 患者および自然界から分離された A. fumigatus 149株の蛋白分解性を2% skim milk-brain heart infusion agar上で融解環の出現を指標として検討し, 一部の菌についてはマウスに5×106の分生子を静注し, 標的臓器を検討した. 149中2株が高い蛋白分解活性を示し, いずれも患者分離株であった. これら2株はマウス脳を強く, 他の7株は腎を強く侵した.
  • Nobuyuki Kurita, Makoto Miyaji
    1988 年 29 巻 3 号 p. 202-208
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Spleen cells from mice were shown to be capable of killing Cryptococcus neoformans cells in the absence of active complement. The number of viable C. neoformans cells did not vary significantly during the first 5hr of incubation period either in the presence or absence of spleen cells, but after 15hr incubation with spleen cells a considerable reduction in the number of viable yeast cells was observed. No significant difference related to age, sex or genetic background of mice in the killing activity of spleen cells was found. Cells with killing activity were plastic- and nylon wool-adherent. Treatment of spleen cells with carbonyl iron powder and magnet modestly reduced their activity. The activity of spleen cells was fairly diminished when they were treated with anti-mouse IgG antiserum plus complement. In contrast, anti-mouse IgM, anti-Thy 1, 2 and anti-asialo GM1 antisera, each in the presence of complement, had no effect. These results appear to indicate that the majority, if not all, of the effector cells belong to B lymphocyte lineage. The results obtained in the present study suggest that effector cells of the natural killing activity play a role in primary host defense against C. neoformans infection.
  • 小関 史朗, 高橋 伸也
    1988 年 29 巻 3 号 p. 209-215
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    新生児の座瘡様皮疹および脂漏性皮膚炎に対する Pityrosporum の関与を検討するために, 新生児における本菌の存在及び寄生形態を経時的に調査し, 培養濾液による皮疹誘発試験を行い, 次のような成績を得た.
    1. 直接鏡検では, 生後24時間以内の新生児410例の約50%に, 生後5~7日目までにの新生児410例の80%以上に, さらに生後2~6週目までの乳児106例では90%以上にそれぞれ Pityrosporum が検出された.
    2. 培養では, 生後24時間以内の新生児224例中7例 (3%) に Pityrosporum が分離された.
    3. 新生児脂漏性皮膚炎や新生児座瘡などの皮疹を有する乳児43例における菌糸形寄生型の検出率は56%で, 正常またはほぼ正常児63例における22%との間に有意差 (p<0.01) を認めた.
    4. Pityrosporum 培養オリーブ油濾液にての皮疹誘発試験では, 生後3日目までの新生児32例中, 2例が軽度の炎症反応を示し, 7例が軽度の鱗屑増加を示した.
    5. 新生児脂漏性皮膚炎や新生児座瘡に Pityrosporum が関与している可能性があると考えられた.
  • Black Dot Ringworm 型頭部白癬および体部白癬の-家族発生例
    岡 吉郎, 清水 直也
    1988 年 29 巻 3 号 p. 216-222
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    新潟県内で, 3歳女児とその祖母62歳の black dot ringworm 型頭部白癬, およびこれらの治療終了後に出生した, いとこの5ヵ月男児の体部白癬症例が観察された. 女児にも体部白癬が合併していた. 全例からほぼ同様な性状の真菌が分離された. これらの菌株の初代培養は表面紫紅色で, 継代すると白色絨毛状となった. また3菌株とも thiamine 添加培地での発育促進は明らかではなかったが, 尿素分解能陽性, コーンミールおよびオートミール培地では紅色色素産生はなく, 毛髪穿孔試験では穿孔を認めなかった. 顕微鏡的形態も3菌株ともほぼ同様で, 隔壁のある菌糸に長短の細長な小分生を豊富に産生した. 培養2週目では多数の介在性厚膜胞子の産生があり, また yeast extract 添加培地での大分生子の産生促進はみられなかったが, 培養1ヵ月の標本にごく少数の大分生子を認めた. 以上の所見からこれらの菌株を Trichopyton tonsurans と同定した. この3症例は新潟県内で確認された最初の T. tonsurans 感染症である. なお祖母とその三女 (男児の母) には以前に紫色調の強い真菌が分離された体部白癬の既往があるが, 菌株が残っておらず菌種は不明であった. またこの家族は福岡からきた一家と約3年間の交際があった. したがって自験症例の原因菌が九州から移入されたものか, 北陸地方に以前から存在していたものかは不明であった.
  • 礒沼 弘, 小原 共雄, 稲垣 正義, 日比谷 一郎, 浜本 恒男, 森 健, 渡辺 一功, 池本 秀雄
    1988 年 29 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    典型的と思われるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (ABPA) の1例を報告する. 症例は67歳の男性. 昭和20年頃より咳嗽, 喀痰, 喘息などの症状があり, 近医で肺結核, 肺炎, 肺化膿症などと様々な診断で投薬が繰り返されていた. 昭和61年1月10日頃から37.5℃程度の発熱, 咳嗽, 喀痰が出現したために外来を受診し, 胸部X線写真の異常陰影と末梢血好酸球増多を認めたので, 同年2月12日に入院した. 入院後喀痰より Aspergillus fumigatus が検出され, A. fumigatus 抗原に対する即時型および Arthus 型の皮内反応も陽性であった. またIgE (EIA) は50,312IU/mlと高値を示し, A. fumigatus 抗原に対するIgE抗体 (RAST), 沈降抗体はともに陽性であった. 以上の諸検査によりABPAと診断し, 気管支拡張剤, 去痰剤の投与を行なったところ, 臨床症状は改善し, ステロイド剤を投与することなく昭和61年3月6日に退院となった.
    本症例は, 諸家による診断基準を満足し, 昭和20年頃よりの数々のエピソードは, 一元的にABPAであった可能性があるが, X線写真の retrospective な検討が可能であった昭和38年以降に反復したエピソードはABPAと考えてまず間違いないであろう.
feedback
Top