我が国の深在性真菌症は大半が, 日和見感染としてみられる. この中でもクリプトコックス症は, 特に基礎疾患がなくても発症することがあり, 本邦における最も重要な深在性真菌症といえよう. 我々は,最も自然な感染経路としてマウス鼻腔内への菌接種による非観血的気道感染モデルを作製した. このモデルに対する病理組織学的検討を加え, クリプトコックスに対する感染防御機構の解析を試みた.
1. 菌株に有する感染致死毒力の比較: 6株の患者由来
Cryptococcus neoformans をICR系マウスの脳内・静脈内・腹腔内に接種し, 各群の死亡率について検討した. 各菌株の有する感染致死毒力は, 菌種間ならびに接種経路によって多彩であり, 莢膜形成能との相関は少なかった.
2. 経鼻接種モデルの作製とその解析: 比較的強い感染致死毒力を示す2株を使用した経鼻接種モデルを作製し, 肺病変の経時的変化について検討した. この結果,弱毒株接種群では肉芽腫性病変が, また, 強毒株接種群では嚢胞様病変が, 肺組織内に形成された. 各病変部に出現する組織球の抗原提示能を検索したところ, 肉芽腫性病変成立株では, 接種14日目にIa抗原陽性組織球の存在を確認した.
3. 近交系マウスによる感染致死毒力の比較: 5系統の近交系マウスを用い, 経鼻接種による死亡率について検討した. ICR系マウスにおける肉芽腫性病変形株では, BALB/c, で最も強い致死毒力を, また嚢胞様病変成立株では, 何れの系統でも致死的感染を成立させるが, 特にCBA/J, DBA/2で強い致死毒力を示した.
菌の持つ病原性は, 食細胞系を主とした防御能とこれに続く細胞性免疫の発現様式の差によって規定されていると推定された.
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