静脈経腸栄養
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21 巻, 1 号
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特集
  • 山代 豊, 田中 久雄, 堀江 聡, 柏木 亮太, 下田 優, 内橋 康行, 福田 節子, 前田 彩子, 佐藤 紀子, 溝口 葉子, 尾崎 ...
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_3-1_9
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    近年NSTを導入する施設は急増しているが、NST運営上の様々な問題に直面している施設も多いようである。またNSTが実際に稼動し個々の症例で改善を得られるようになったとしても、当初期待された平均在院日数、病院収益などへの効果はすぐ得られるものではない。これらの効果を得るためには地道なNST活動を行うと共に、栄養療法に対する職員の意識の変革が必要である。そしてこれらのNST活動のアウトカムを解析し院内外へ提示することはNSTの質の保証にも繋がると考えられる。当院では個別症例に対するNSTアプローチと同時に、栄養療法に対する職員への啓発活動に力を入れてきた。栄養療法の啓発と実践のサポートのために5つのサブチームを編成し、各種委員会とも連携を図り組織横断的に活動を展開している。平成16年4月より稼動した当院におけるNSTの啓発活動の実際とその成果につき報告する。
  • 山下 芳典, 渡辺 篤, 中佐 庸子, 高崎 栄子, 玉田 八重子, 森田 益子, 木戸 直博, 多幾山 渉
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_11-1_16
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    本邦においては慢性期病院ではPEGの推進が効果的な手段となり、ADLの改善、在院日数の短縮、経済効果などの栄養サポートチーム(NST)のアウトカム評価が比較的容易になされてきた。一方、当院は527床の急性期型地域中核病院であり、平成15年5月に発足したNSTの日常業務は定着したが、特に急性期病院でのアウトカムは段階的に評価されるべきと考えている。短期的には能率的な日常業務の設定による正しい栄養療法の普及と実践であり、長期的には合併症、特に感染症の減少、在院日数の短縮、経済効果から、病診連携への貢献である。厳格なTPNの適応の下で、MRSAの発生患者数はTPN処方数の減少とともに減っており、有意な相関関係を示した。在院日数の明らかな短縮は確認されなかったが、収支決算では徐々に改善している。1st stepとして、日常業務への定着であり、2nd stepとして感染症の減少や経済効果であるが、正しい栄養療法の標準化から、病院職員全体の意識の高揚と啓発、チーム医療の重要性の再認識に寄与した。院内で確認されたアウトカムは、病診連携の下においても再現する必要がある。退院後も栄養ケアネットワークの中で情報の共有化を図り、レベルの高い栄養療法を維持することが3rd stepのアウトカムを生むものと期待される。
  • 秋山 和宏, 深沢 雄一, 徳永 慶子, 高崎 美幸, 野村 明子, 天野 雅之
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_17-1_22
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    最近、企業の社会貢献:Corporate Social Responsibility(以下CSR)の重要性が認識されている。組織の存在理由を社会全体あるいは各ステークホルダー(利害関係者)への貢献度を基軸に考えようとするものであるが、このステークホルダーへの貢献度という観点から当院NSTのアウトカムを検討した。(1)患者、(2)職員、(3)地域社会の3種類のステークホルダーについてみてみると、(1)ではTPN症例数が減少し、EN症例数が増加していた。また、抗生剤の使用量は設立時の半量にまで減少した。(2)では院内で52名がカリキュラムを終了し、3名の「NST専門療法士」が誕生した。また、看護師離職率の減少傾向が認められた。(3)に関しては9ヶ月間に51名の見学者、8名の研修者を受け入れた。
  • 目黒 英二
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_23-1_27
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    【目的】急性期病院でのNSTの評価の可能性・限界について検討した。入院中はNSTの能動的管理が可能であるが、当院における退院・転院後の栄養への取り組みについて報告する。【方法】退院後に少数ではあるが栄養不良による再入院があることに着目し、栄養サポート外来を開始した。また系列の療養型病院と内視鏡下胃瘻造設術(PEG)の連携パスを作成し病院間での患者をパスと共に継続した栄養管理を試みている。【結果】栄養サポート外来を345名が受診、80%以上が上部消化管術後の患者でありその訴えは、食欲不振、体重増加不良(体重減少)が大部分を占めていた。外来にて栄養相談や栄養指導を行い、早期退院後の安心感を与え満足度の向上を図っている。【考察】NSTによって入院から退院までさらに外来・転院後も栄養介入することは、今後質の高い医療に向けて必要な事と考えられた。“栄養管理は終わることはなく途絶えては行けない”と考える。
  • 飯島 正平, 篠木 敬二, 仲下 知佐子, 正木 克美, 岩井 明子, 見戸 佐織, 土井 聖子, 西島 律子, 植田 富喜子, 逢坂 悟郎
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_29-1_34
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    箕面市立病院のNSTのアウトカムとして、最も一般的な医事関連・栄養管理・感染管理などの臨床指標を算出して、稼動以前と比較した。在院日数は短縮し、入院患者数が増加した。しかし、緊急入院比率が上昇すれば、栄養管理の必要な症例や感染率の高い症例が増え、通常期待されるようなNSTの効果が得られないことが判明した。診療面のアウトカムを評価するときは、その背景因子を念頭に検討しなくてはいけない。また、電子化とNSTの両方を進める中で情報管理の大切さを知った。NSTのシステムは今後の活動のためにも必要であるが、そのためには単に計算機能が充実するだけでなく、標準化をすすめてデータの二次利用を念頭においたシステムが必要で、NSTに携わる医療従事者の合意が得られたアウトカムが栄養療法のエビデンスとして生れることが望まれる。
  • 海塚 安郎, 後藤 渉, 山内 豊和
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_35-1_42
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    当院では、2002年2月より全科型NSTを開始した。栄養の視点から入院患者を評価し必要時介入し、同時に回診スタッフ、病棟スタッフのレベルアップ、器具の整備等行い、それなりの手応えを感じた。そんな中、院内リスクマネージメントとして栄養と同等の柱であり、その予防、治療にも栄養が影響する病院感染対策でも、2003年4月より従来の感染委員会に加え、実働部隊としてのICTをNSTと協働とし立ち上げた(NST&ICT collaboration)。NSTとのメンバーの共通化、週1回合同カンファレンス、回診を通じ、従来の感染経路遮断を中心とした対策に加え、NSTで学んだ個々の症例の情報を把握し、介入するといった方法論を感染対策にも持ち込んだ。その中で、抗MRSA抗生剤使用全症例の血中濃度測定(Therapeutic drug monitoring : TDM)は、感染症発症時に対策チームが患者、治療効果を把握し、必要時介入できる点で、特徴的な手法である。その効果を確認するため、NST開始前6ヶ月からの4年間における、栄養・感染管理の指標、1.中心静脈カテーテル挿入者数、2.カテーテル関連血流感染者数、その発生率、3.抗MRSA抗生剤購入数、4.MRSA感染症発症者数の推移を検討し、各々にその改善を認めたので報告する。
  • 児玉 佳之
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_43-1_48
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    NST(Nutrition Support Team)は急速な勢いで普及しているが、現段階でNSTにおける アウトカムの定義や設定の仕方については明確になっていない。近年多くの病院で取り組まれているクリニカルパスの特徴として、アウトカム志向のクリニカルパスがある。当院では2004年4月から全科型NSTが稼動し、1年間の活動で多くの成果が得られたが、栄養管理モニタリング・栄養管理の評価が十分には行われていなかった。そこで、2005年6月より、アウトカム志向のクリニカルパスの考え方を参考に、NSTによる栄養管理の進め方を見直し、初回ミーティング時にゴール設定(短期、長期)を行い、次回回診日を明確にすることを開始した。このことにより、当院では以前より円滑にNST活動を行えるようになっている。より質の高いNSTをめざすためにはアウトカム志向のNST活動を行うことが大切と思われた。今後、そのツールとして、NSTパス、ベンチマーキングは重要な役割を果たすと考える。
  • 川口 恵, 東口 高志, 福村 早代子, 世古 容子, 大川 光
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_49-1_56
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    栄養管理はすべての疾患治療のうえで共通する基本的医療のひとつである。この理念のもと尾鷲総合病院にNST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)が設立され、5年が経過した。NSTの活動は、NST症例を抽出するツールである入院時初期評価の導入やNST本体と専門的ケアを行う褥瘡チーム、摂食・嚥下障害チーム、呼吸療法チームの3つのワーキングチームを統括するNSTパスの導入によりNST運営システムが構築され、チーム医療が確立された。その結果、高齢者医療に代表される複数疾患を有する症例やハイリスク症例に対して、NSTの有用性を示し、また、医療の安全を確保するとともに、病院の質の向上と運営の合理化や経営の改善をももたらす大切なツールとも考えられる。本稿では、尾鷲総合病院NSTの5年間における活動を通じて、その効果について述べる。
  • 伊藤 明彦, 澤田 直子, 小澤 恵子, 櫛渕 統一, 佐々木 雅也, 藤山 佳秀
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_57-1_62
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    当院は、199床のいわゆるケアミックス型病院で、80歳以上が6割を占める。今回は、当院におけるNSTのアウトカムにつき報告する。栄養管理法は、NST稼動によりTPN症例がほとんどなくなりEN症例が増加、その中でも経鼻胃管が減少しPEGが増加した。院内感染菌培養陽性件数は1/2に減少し、抗生剤使用量も減少した。抗真菌剤、バンコマイシン製剤購入量も激減した。栄養管理法の適正化が図られることで、病院全体として感染に対する効果が得られ、経済的効果につながった。PEG造設パスを、術前からNSTが関与する、術後2週目に嚥下評価を施行する形式に改変したところ、PEG造設時の栄養状態は、血清Alb値が有意に上昇し、当院で造設したPEG患者の食事摂取併用率、PEG離脱率もそれぞれ上昇した。NSTが積極的に関与することで患者のQOL向上に寄与できた。ケアミックス型病院では、対象症例が栄養介入の必要性の高い高齢者がほとんどであり、実践的なNSTを稼動させれば、臨床的にも経済的にもその効果は非常に大きい。
  • 伊藤 彰博, 東口 高志, 村井 美代, 梶谷 伸顕, 水野 修吾
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_63-1_68
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    日本栄養療法推進協議会の施設認定が開始され、NSTも質が問われる時代に突入した。当院でも、2004年4月よりPPM-III方式を用いて全科型NSTを稼動しているが、今回NST稼動前後を6ヶ月毎に比較し、NST稼動による効果を検討した。NST活動により、栄養障害患者は、稼動前の63.7%から約30%まで減少し、栄養改善効果が得られた。さらに、経腸栄養患者数および経腸栄養剤使用量の増加、感染予防効果として、カテーテル関連血流感染率(稼動前:9.2、9.3%→稼動後:2.9、3.0、2.7%)、MRSA発生率(稼動前:1.8、2.6%→稼動後:1.2、0.8、1.1%)は低下した。褥瘡発生予防効果として、全科の新規褥瘡発生率は低下し、特に緩和ケア病棟ではその低下は顕著であった(稼動前:40.9、32.4%→稼動後:10.8、3.6、1.9%)。当院NSTの特徴を生かし、良好に稼動しているが、褥瘡、感染、給食委員会とのコラボレーションによりNST稼動1年で十分な効果が得られ、一般業務は減少した。
JSPEN 全国栄養療法サーベイ委員会 報告
症例報告
臨床経験
  • 村林 由紀, 清水 敦哉, 佐久間 隆幸, 森 純子, 堀川 陽雅, 中川 小代子, 橋本 章
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_85-1_89
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    PEGはその簡便性により全国に普及し、症例数は急速に増加しつつある。PEGから投与される経腸栄養剤は一般に液体であり、時に胃食道逆流症や下痢などの合併症が問題となることがある。そこで、半固形食品や固形化栄養剤の研究が進められている。今回我々は、固形化の手間や器具の調達等の問題点を考慮し、増粘剤で経腸栄養剤に粘度をつけることを試みた。方法は市販の経腸栄養剤に増粘剤を2%加え、攪拌機にて2分間攪拌した。この調整により約3,000mPa・sの粘度が得られ、胃食道逆流や下痢を認めた症例に有効であった。本法は病棟や在宅でも安全かつ簡便に施行可能であり、さらに他の半固形食品や固形化の方法よりコストも削減できた。この粘度調整栄養剤は、合併症対策として、下痢の改善、胃食道逆流症の減少に期待ができると思われた。
  • 岩川 裕美, 五月女 隆男, 佐々木 雅也, 丈達 知子, 栗原 美香, 中西 直子, 辻井 靖子, 三上 貴子, 碓井 理香, 徳永 道子 ...
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_91-1_97
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    ICUにおいて人工呼吸器管理されている重症患者では、複数の臓器障害を合併することが多く、消費エネルギ-量を計算式で算出することは困難である。このような症例について、消費エネルギ-量を測定し、適切な栄養量にて管理することの有用性について検討した。人工呼吸器管理下に集学的治療が施行される症例の安静時消費エネルギ-量(REE)、およびエネルギ-酸化率の指標である呼吸商(RQ)を、間接熱量計を用いて測定し、必要エネルギ-を算出しながら経腸的、経静脈的な栄養管理をおこなった。対象症例は、敗血症やSIRSなどを併発し、集中治療室にて人工呼吸器管理になった後、NST介入の依頼があった16症例(男性10例、女性6例、平均年齢64.1±10.4歳)とした。REE(kcal)およびRQ を隔日に測定し、ICU 退室後は随時の測定とした。また、RQ を考慮しながら、REE に基づく熱量を可能な範囲で投与した。Harris-Benedict式より求めた平均BEE は1295±232kcalであり、測定で得られたREE は2058±424kcal、実際の投与エネルギ-は1960±254kcalであった。NSTの介入開始のBEEとREEの関係は、Y= -38.948 + 1.619 × X、R2 = 0.783(p<0.001)と有意な正の相関を認め、消費エネルギ-は基礎エネルギ-の約1.6倍であった。一方RQは、0.78±0.10からICU退室時には0.87±0.05と経時的に上昇(p<0.05)し、測定時には脂肪乳剤の投与がなかったことから治療経過とともに糖質が有効に消費され、体内脂肪の動員が抑制された結果と考えられた。また、多臓器不全の評価法としての有用性が高いSOFAスコアは、栄養学的介入を行った4週間目には、11.7±3.0から7.9±7.5と改善傾向を示したが、RQの上昇とSOFAスコアには有意な関連は認められなかった。間接熱量測定に基づく栄養管理は、至適投与熱量の設定に基づく栄養管理の実践に極めて有用であると示唆された。
症例報告
  • 井上 善文, 廣田 昌紀, 阪尾 淳, 野村 昌哉, 藤田 繁雄, 森 エミ
    2006 年 21 巻 1 号 p. 1_99-1_105
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/06
    ジャーナル フリー
    在宅静脈栄養法HPNにおいてはカテーテル管理が極めて重要で、合併症を発生することなくいかに安全に管理するかが、その成否を左右する。平成10年9月から平成17年4月の間にHPNを導入した23例(悪性疾患7例、良性疾患16例)を対象とし、カテーテル管理成績(完全皮下埋め込み式カテーテル20例、Broviac catheter3例)について検討した。悪性疾患では平均カテーテル留置期間は153日で、合併症のためにカテーテルを抜去した症例はなかった。良性疾患ではHPN実施期間が平均1178日、症例あたりの使用カテーテル本数は平均1.375本であった。カテーテル入れ換えまでの期間は平均1154.7日で、その理由はカテーテル敗血症が3例、セプタムからの液漏れが2例、カテーテル閉塞が1例であった。全体での合併症発生頻度は0.204回/1000日、カテーテル敗血症発生頻度は0.153回/1000日であった。欧米でのHPN症例におけるカテーテル管理成績と比較しても合併症発生頻度は低く、良好な管理が行われていると考えられた。
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