都市計画論文集
Online ISSN : 2185-0593
Print ISSN : 0916-0647
ISSN-L : 0916-0647
52 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の156件中101~150を表示しています
  • 千葉県松戸市を事例として
    秋田 典子
    原稿種別: 論説・報告
    2017 年 52 巻 3 号 p. 969-974
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、2015年5月に全面施行された空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく空家対策の運用実態とその課題を、首都圏近郊に位置し、空家の絶対数が多い千葉県松戸市を対象に明らかにしたものである。千葉県松戸市では、他の多くの自治体でも採用されていたように、空家対策特措法の制定以前に自治体条例として空家問題に対応し、この条例を通じて勧告も行っている。また、自治体条例時のデータの積み重ねを空家対策特措法の運用においても活用することで、迅速な特定空家の指定、法第12条に基づく情報の提供、助言、法第9条に基づく立入調査、法第14条第1項に基づく助言又は指導、法第14条第2項に基づく勧告の実施に至っていること、また、特定空家の指定により、空家の大部分に何らかの取組みが見られ、解消に向かっていることが明らかになった。一方で、空家の絶対量に対して1年間の運用で対応可能な件数には限界があり、今後、更に空家が増加した場合、効率的に運用を行うための工夫が必要であることが課題として示された。
  • 秋田県秋田市のエイジフレンドリーシティ行動計画策定プロセスのケーススタディ
    後藤 純, 大方 潤一郎
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 975-982
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、日本で唯一のAFCである秋田県秋田市のAFC行動計画をケースとして、超高齢社会の社会的ニーズへの対応において、AFCの計画策定プロセスの特徴とメリットとは何か、またその計画策定プロセスを日本の地方都市において、どのように運用すれば、そのメリットを発揮させることができるのかを明らかにすることを目的とする。本論の構成は、2章にてAFCプロジェクトのプログラムについて整理し、3章にてこれにもとづき秋田市がどのような検討体制とプロセスを経て、計画策定、実施・評価を行ったか明らかにし、4章にてケーススタディを行った。これらをもとに、5章で、計画策定プロセスにおいてどのような議論や検討が行われたか運用実態を分析した。6章にてWHOのAFCによるアプローチの特徴とそのメリットを明らかにし、また計画策定プロセスで生じた課題について、どのように運用すればメリットを発揮させることができるのか、その工夫について考察した。
  • 永井 真生, 中井 検裕, 沼田 麻美子
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 983-990
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市において、かねてから指定容積率が過大であるとの指摘がなされてきた。これを象徴するように、地方都市では容積低充足型の市街地再開発事業が多く行われている。そもそも市街地再開発事業は高容積になる傾向がある中で、容積低充足市街地再開発事業が成立してきていることは、指定容積率が過大であるだけでなく、事業者側の意識にも変化が生じてきているという意味合いも持っている。そこで本研究では、地方都市における市街地再開発事業の充足率の近年の動向に着目し、低充足型の市街地再開発事業の事業計画に占める容積設定がどのように決定されるかを明らかにする。本研究の目的は、容積低充足型市街地再開発事業というモデルから地方都市における都市規制と都市整備活動の現状を明らかにし、今後の指針を提言することである。
  • 長曽我部 まどか, 谷本 圭志, 土屋 哲
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 991-997
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    人口減少や高齢化に伴い,住民自らが主体的に地域の課題を解決する必要性が高まっている.課題を解決するための主体として,近年,地域運営組織の設置が進んでいるが,持続的な活動を行うための運営方法に懸念がある組織も存在する.本研究では,大山町の地域運営組織を対象として,組織の活動を評価する.具体的には,組織の活動記録と構成員の発言録を用いてテキスト解析を行い,その結果を地域住民のアンケート調査と比較することで,組織の外部と内部から組織の活動を評価した.組織の活動が住民の「交流・イベント」への満足度に寄与している可能性が示唆された一方で,現在の組織は現在の住民のニーズに応じた活動を行えていないことが明らかになった.さらに,現在の個々の委員の関心が現在の組織の活動に反映されていない可能性も示唆された.
  • 神戸市を事例として
    水野 優子, 栗山 尚子, 三輪 康一, 末包 伸吾, 安田 丑作
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 998-1005
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    市民やまちづくり組織と行政・事業者が協働で地域課題に取り組んでいくことが社会課題として求められているなかで、神戸市は「神戸市民による地域活動の推進に関する条例」を2004年に施行し、すでに一定の活動実績を有したモデル的な地区において、その活動実績をもとに、地域内のゆるやかなネットワークにもとづいた組織とパートナーシップ協定を締結し、3年間という期間限定で人的・費用的な支援をおこなうことで、さらに総合的、自律的な地域運営を担う組織への移行促進を図った。 本論ではその実態を明らかにすることで、重層的にまちづくり組織が存在する地域において、それらまちづくり組織が組織間の連携にもとづく総合的、自立的・自律的な地域運営組織へと移行する際の課題を整理し、その移行に向けての支援方策に向けての視座を示すことを目的としている。
  • 北大阪都市計画区域の茨木市におけるスマートシュリンキングに向けて
    加登 遼, 神吉 紀世子
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1006-1013
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、居住エリアのウォーカビリティに立脚して、地域評価に関する指標を開発すると共に、その指標の有効性を検証することである。そのために、本研究は、北大阪都市計画区域における茨木市を事例として研究を行う。このエリアは、緩やかに人口が減少していることから、居住者が求める機能を維持することを目指すスマートシュリンキングを実現することが求められている。そのスマートシュリンキングを実現するための初段階として、本研究ではウォーカビリティ指標を開発する。この指標は、世帯密度・地域施設の利便性・道路の接続性・交通の安全性という要素によって構成されている。その指標を用いて町丁目別のウォーカビリティを算出して、GISを用いて地図上に描画した結果、密集住宅地エリア・スプロールエリア・公営集合団地エリアなどの居住エリアにおいて、ウォーカビリティ指標が有効であることが分かった。さらに、市民アンケートを行った結果、歩きやすさに関する居住エリアの魅力や生活行動に関する地域評価を把握するために、ウォーカビリティ指標が有効であることが明らかにすることができた。
  • 金沢市「まちなか住宅団地整備費補助金」を対象として
    福岡 敏成, 野嶋 慎二
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1014-1021
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、金沢市の「まちなか住宅団地整備補助金」を事例として、小規模住宅団地の開発による土地利用の変化と整備効果を分析する。分析の結果、15団地が開発され、3つのタイプに分類されること、住宅は十分に広く、敷地面積を確保していること、土地の集約化の事例は3事例あったが、隣接の駐車場を統合化した事例はなかったこと、などを明らかにした。これにより、住宅団地の役割である良質なストック形成、コミュニティ活性化、エリアの価値向上、土地利用の転換と集約化について実際に効果が上っていることを明らかにした。
  • 西山 徳, 樋口 秀, 中出 文平, 松川 寿也
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1022-1028
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、複数の地方都市を対象に、1)企業の住宅に関する福利厚生、通勤手当の実施状況、2)勤労単身世帯の居住実態、中心市街地への転居の可能性を明らかにし、中心市街地活性化を目指した勤労単身世帯のまちなか居住のあり方の検討を目的とする。研究の結果、対象7都市の統計データより、単身世帯の郊外での増加傾向が確認された。また、ほとんどの企業が通勤手当を支給する一方で、住宅に関する福利厚生は半数にとどまること、勤労単身世帯の居住地は通勤手当と住宅に関する福利厚生の影響を受けることが明らかになった。今後、勤労単身世帯のまちなか居住を進めるためには、自治体と複数企業が協力し、まちなかに魅力的な住宅を整備すること、通勤手当支給の見直しを進めることが必要である。
  • 岡山市の311地区の統計分析に基づいて
    和氣 悠, 氏原 岳人, 阿部 宏史
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1029-1035
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、岡山市311地区の建物データに基づき、住宅地の整備方法と盛衰状況との関連性を統計的に検証し、住宅地の高齢化と撤退パターンのモデル化を試みた。分析の結果、住宅地の整備手法ごとに衰退パターンには特徴的な傾向があり、そのプロセスも全く異なることがわかった。つまり、「住宅地をどのようにつくるか?」によって、約40年後の衰退状況が全く異なる。例えば、スプロール度の高い住宅地は、早期に空き家率が高まり、住宅地完成後、約40年経過した時点でも無秩序な撤退とともに無秩序な開発が同時進行していたが、土地区画整理事業が実施された住宅地では、約40年経過しても(開発圧力は低下するが)土地利用の循環利用が進んでいた。
  • 横須賀市縮減市街地におけるケーススタディを通して
    吉武 俊一郎, 高見沢 実, 渕井 達也
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1036-1043
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、立地適正化計画制度に関連して、空き家除却等の空き地管理について、地域コミュニティ関与の可能性を検討することである。研究方法は、横須賀市谷戸地域のA地区を対象に、空き地の現地調査と、所有者ヒアリング、地域コミュニティとのワークショップ、居住者アンケートである。地域コミュニティ関与による空き地マネジメントには、担い手不足と、地区の物理的状況からの課題(道路など交通面)、空き地が個人資産であることがボトルネックとなる。居住者アンケートを通して、居住者が担い手になる可能性と、所有者と地域コミュニティの協働で交通面の課題を解決する可能性があると考察した。さらにまちづくり条例など専門家がコーディネーターとして位置づけることなどにより、担い手づくりと同時に、協定などをベースにした空き地利用の実績を積み重ねることで、個人資産であることのボトルネックについての解決を進める可能性があると考察した。立地適正化計画制度で居住誘導区域以外となる地域においても、持続性の評価を行い、まちの特性を生かしたまちづくりを進める可能性があると考察した。
  • 山梨 裕太, 姥浦 道生
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1044-1051
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、東日本大震災において被災した沿岸自治体における、開発許可の立地動向を調査することによって、震災後の被災市街地のマクロレベルの空間形成についての実態と課題を明らかにすることである。本研究の結論として、大きく以下の三つの点が指摘できる。一つ目は、線引きされた地域においては、市街化調整区域での開発は一定程度抑制されているということ。二つ目は、非線引きのリアス海岸地域においては、市街地や漁村集落部が大きく被災したことから、行政主体のみなし許可による開発が主となっていること。三つ目は、非線引きの平野部地域については、震災後に農地を中心に既成市街地外部で大規模な開発が起こっているということである。
  • 2016年熊本地震を対象にして
    柿本 竜治, 吉田 護
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1052-1059
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    平成28年熊本地震では,政府及び県の報告資料によると,避難者数は一時最大183,882人に達したとされる.この数値は自治体指定の避難所の避難者数に基づくものであるが,避難行動をとった住民の数はその数に留まらない.自治体指定されていない施設や近隣の空き地での車中泊の様子が多く報道されており,震災後の住民の避難行動の実態は明らかではない.また,本震発生後1ヶ月後の5月16日時点でも234カ所に1万人以上が避難しており,長期に亘り多くの人が避難所に止まった.一方,被災自治体は,避難所運営に多くの人的資源を割かれ, 被害状況の確認やその他の被災者支援業務への着手が遅くなっていた.今回の地震では,余震が長期間頻繁に発生したことも避難者数が長期期間減少しなかった一因としてあるが,迅速な被災者支援を行うためには,自宅に帰れる人を早期に避難所から自宅に戻すことが重要である.そこで,本研究では,住民の避難から帰宅に至るまでプロセスの実体を明らかにし,住民の速やかな日常生活の再開を促すための政策的示唆を得ることを目的とする.
  • 多用途が複合する江東区豊洲2・3 丁目再開発地区を対象として
    黒木 貴光, 佐藤 宏亮
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1060-1065
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東日本大震災を受け、各地で防災に関する取り組みが進められている。本研究では、地区内残留地区に定められている再開発地区である江東区豊洲2・3丁目の再開発地区を対象として以下の項目を明らかにする。1) 再開発地区内の各施設における災害対策2) 再開発地区内の各施設間の災害時連携対象とする多用途複合型の再開発地区において、地区全体の災害時ポテンシャルを明らかにし、周囲の災害脆弱地域からの住民の受け入れを含めた広域的に見た災害対策のあり方を考察することを目的とする
  • 気仙沼市鹿折地区かもめ通り商店街の事例から
    磯田 芳枝, 野澤 康
    原稿種別: 論説・報告
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1066-1073
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東日本大震災の復興市街地整備事業の影響を受けてきた商業者の再建について、本震災で創設された2つの補助金事業による商業施設整備に着目して、三陸沿岸の市街地におけるその整備状況を把握した上で、具体的事例を通して長期間の復興事業が、商店街再建にどのような影響を及ぼしたかについて考察することを目的とする。対象事例の気仙沼市鹿折地区かもめ通り商店街の再建から、商店街再建のプロセスにおける商業者らの選択を詳細に把握し分析した。その結果、商業者が所有する土地の活用により商店街再建ををするための課題を2つ抽出した。1つは、商店街再建のためには、商業者の店舗再建場所の選択が一致すること、かつ多くの商業者の参加があることが課題である。もう1つは、店舗再建の支援が受けられるグループ補助金は、商店街整備に活用できる点で有用であるが、費用負担や組織としての活動を不自由に感じる面もある中で、組織作りとして活用できるかが課題である。長期間の復興事業は、商業者の選択肢を多様にさせてしまい、商店街再建を難しくしている。
  • 店舗更新時の旧店主からのアドバイスに着目して
    下山 萌子, 後藤 春彦, 馬場 健誠
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1074-1080
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    バラック飲み屋街の大部分は、近年において開発の危機や店主の引退により減少傾向にある。しかし同時に、地域資源として積極的にその価値を評価する立場も存在している。そのような中で新宿ゴールデン街は観光地化や若い世代からの出店の増加が近年進んでおり、新旧の店舗が併存し地域全体が転換期にあると言える。以上より、新宿ゴールデン街における店舗の更新実態を、地域社会を活かし共有されてきた店主間のアドバイスとともに記録し、地域の共有財として継承する必要性を再認識することは、今後地域の都市更新を考える上で重要である。本研究では、新宿ゴールデン街の更新過程において新旧の店舗の混在という点に着目し、その更新の様相を詳細に捉える。またそのために、更新過程において店主間で交わされたアドバイスの内容とその機会を把握する。より具体的には以下の3点を明らかにする。1)店舗数の増減から見た歴史的特徴(第2章),2)新旧店舗の混在とその更新の実態(第3章),3)店舗更新時における店主間のアドバイスとその継承の機会(第4章)以上より新宿ゴールデン街の更新とそれに伴う店主間のアドバイスを把握し、今後の課題について論じる。
  • 横田 尚己, 山田 圭二郎
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1081-1087
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、SNSの普及によって災害情報伝搬のあり方は多様化している。多様化する情報伝達手段に対応するように、熊本地震発災時に日本政府はTwitterから災害情報収集を時空間的に可視化するシステム'DISAANA'によって情報収集を行った。DISAANAは物理的被害情報収集には有効な手段である。しかしながら,この方法は精神的な被害の収集は行えない。本研究では熊本地震発災前後の九州地方からTwitterに投稿されたデータから感情極性値の算出を行い、被災者の精神状態の可視化を行う。次に、感情極性値と災害復旧情報を比較した。結果、感情極性値の推移と一部の復旧関連情報の間に高い関係があることが分かった。
  • 岩手県釜石市A地区を事例として
    荒木 笙子, 秋田 典子
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1088-1093
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東日本大震災後、国の復興事業の復興土地区画整理事業が津波被災地で導入されているが、実需との乖離が課題となっている。本研究では時間経過に伴う住民の居住形態や意識の変化プロセスが空間形成へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。岩手県釜石市において約40%が事業実施区域の地区を主な分析対象とし、住民への聞き取り調査とアンケート調査、文献調査、現地調査、市役所担当課へのヒアリング調査、GISを用いた空間分析を実施した。対象地区では震災の約2年後に土地区画整理事業が都市計画決定された。事業区域内に居住していた世帯のうち2016年2月時点で元の場所に居住している世帯は14.0%に留まり、24.0%が他の場所へ再建を終えていた。区域外に居住していた世帯のうち2016年2月時点で元の場所に居住している世帯は88.2%を占め、他の場所での再建世帯は存在しない。事業の影響がないと判断した時点で自宅再建を決めた世帯が増えた。高齢化が進む地区だが、居住選択は殆ど年齢による有意差は見られず、事業実施区域や決定タイミングが居住選択に大きな影響を及ぼしていると考えられる。
  • 渡邉 萌, 佐藤 嘉洋, 円山 琢也
    原稿種別: 論説・報告
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1094-1100
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,2016年4月の熊本地震で2度の震度7を記録した益城町仮設住宅入居者の居住地選択意向を分析し,災害公営住宅の必要戸数,必要とされる支援などへの基礎的知見を得ることを目的とする.2016年6月~11月に地元の大学生が中心となった益城町仮設住宅を訪問しての聞き取り調査を実施し,1196世帯の居住地の選択意向を収集した.60%が自宅再建を15%が災害公営住宅を15%がまだ分からないと回答している. 熊本市に近い地域と比べて集落部では自宅再建の意向が強いこと,単身後期高齢者世帯に,まだ分からないという意見が多いことなどを確認した.さらに対応分析や居住地選択モデルの推定から居住地選択意向を総合的に把握した.これらの情報は災害公営住宅の適切な供給や被災者支援に有益と考えられる.
  • 森 千脩, 樋口 秀, 中出 文平, 松川 寿也
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1101-1107
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    柏崎市の中心市街地は2007年の中越沖地震で大きな被害を受けた。本研究はその後の復興状況を調査するとともに、土地建物権利関係と復興状況との関係解明を目的とする。まず、建物復興状況をみる為に11町丁目125haを対象として2015年に現地踏査を実施した。次に、被災してからの建物の変化を「維持」「更新」「滅失」の3つに分類した。さらに、2005年の土地・建物権利を地籍図と登記簿で確認し、権利者が同じであれば「単純」に、違う場合は「複雑」に分類した。分析の結果、建物の復興状況は「維持」、権利関係は「単純」がそれぞれ8割以上を占めた。中越沖地震後の柏崎市中心市街地では、「滅失」による低未利用地化も一部で進んでいたが、建物の更新に加えて、多くの「維持・改修」により市街地の復興が進んでいた。
  • 和歌山市及び甲府市の市街化調整区域とその隣接市を対象として
    松川 寿也, 丸岡 陽, 中出 文平, 樋口 秀
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1108-1115
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    この研究では、地方自治体の縁辺部における土地利用規制格差の下で制定された開発許可条例に着目する。本研究では、和歌山市及び甲府市の市街化調整区域とその隣接市を対象として、両市の間での市街化の動向と、土地利用施策を明らかにすることを目的とする。その結果、以下のことを明らかにした。(1)開発許可条例の制定により市街化調整区域での市街化が促進された一方で、非線引き都市計画区域側での市街化が鈍化した。(2)前述の市街化には、農振法の土地利用規制格差も影響していた。(3)非線引き都市計画区域側での市街化が鈍化しても、農振除外による市街化を確認できるが、非線引き側での土地利用規制誘導策の導入には消極的であること。
  • 稲越 誠, 松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1116-1123
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、平成2年以降に人口集中地区が消滅した自治体を対象に、人口減少による市街地への影響を分析し、今後の都市計画区域や都市計画の方針を調査している。対象自治体では、市街地の整備や保全のために、都市計画制度を必要とし、都市計画区域を維持する考えである。しかし、人口減少や都市施設整備の状況が、都市計画区域の縮小を始める要因となる事が明らかとなった。また、都市施設整備や土地利用規制の状況により、緩規制地域へ市街地がスプロールした自治体もある。しかし、スプロールに対応した土地利用規制には消極的である。更に、人口規模が小さい自治体では、現在の都市計画の内容を維持する自治体が多い事が明らかとなった。
  • 愛知県豊橋市を対象として
    竹間 美夏, 佐藤 徹治
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1124-1129
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    2014年に自治体が都市機能誘導区域、居住誘導区域を定めることができる立地適正化計画制度が創設された。本稿では、立地適正化計画おける自然災害リスクを踏まえた居住誘導区域の設定、計画策定後の各種居住誘導施策の検討の際に重要な情報となると考えられる都市内人口分布に着目し、これらの施策が将来長期の都市内人口分布に及ぼす影響を推計可能な手法を開発した。推計手法は、住宅タイプ別に年齢階層や多様な転居地域選択要因を考慮するなど従来の立地均衡モデルを拡張したものとした。さらに、洪水や津波など複数の自然災害リスクが存在する愛知県豊橋市を対象に実証モデルを構築し、誘導区域内の戸建て住宅および集合住宅に転居する際に補助金を給付する施策が人口分布に及ぼす影響を分析した。分析の結果、補助金給付のみでコンパクトな都市構造を実現するのは困難な可能性が高いことなどが示された。
  • 都市計画マスタープランに着目して
    越川 知紘, 森本 瑛士, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1130-1136
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    各自治体で採用されるコンパクトシティ政策は多様化が進んでいるが,その評価まで含め十分なフォローアップがなされていない.本研究では全国の多様な自治体を対象に,都市計画マスタープランを過去に遡ることで,7つの政策分野に渡ってコンパクトシティ政策が展開してきたことを明らかにした.また,各分野においてどのような評価指標が対応づけられてきたかを整理し,実際に各分野の評価指標値の変遷を横断的に提示した.この結果,いずれの評価指標値にも都市計画が直接関与できる以外の事象が大きく影響していることが類推される結果となった.想定されているような評価指標値の改善を目指すには,都市計画でコントロールできる政策領域そのものを大きく拡大する必要があることが示唆された.
  • 一都三県を対象として
    長岡 篤, 持木 克之, 籠 義樹
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1137-1142
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、一都三県(埼玉県、千葉県、神奈川県)の自治体(市町村及び特別区)を対象としたアンケート調査を実施し、各自治体担当者の公共施設の現在の維持管理の状況と将来の見通しに関する認識を把握し、その上で人口動態、財政状況との関係を明らかにすることを目的とした。 その結果、公共施設の30年後の施設規模は、現状維持を想定している上下水道や道路、河川施設、公園等と、縮小を想定している庁舎や小中学校等、廃止や別の手段でサービス維持を想定している自治体もある高齢者施設や病院・診療所、公民館、公営住宅等に分けられた。そして人口減少率が大きい自治体ほど、人口減少によって生じる問題を予測し対策が進んでいた。一方、人口減少率が小さい自治体や人口が増加する自治体は、対策は今後行う予定である割合が大きく、具体的な取り組みは始まっていないことが明らかとなった。さらに、政策的経費率が低い自治体ほど人口動態への対策を講じている自治体が多く、維持管理が適切ではない公共施設数が少ない。一方、政策的経費率が高い自治体では、維持管理が適切ではない公共施設数が多い傾向があり、財政状況による違いが明らかとなった。
  • 市街地再開発事業を主対象として
    伊藤 謙, 中井 検裕, 沼田 麻美子
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1143-1149
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、複数街区の統合を行う大街区化が都市整備手法として展開されてきている。大街区化では従前の敷地内に存在した道路を廃道する必要があるのだが、この廃道道路部分(公共用地)の利活用に関して、平成23年の国土交通省による「大街区化ガイドライン」の策定を機に公共性の「量」評価から「質」評価への転換が求められている。こうした背景のもと、本研究では公共用地の減少に着目した大街区化事業の実態を調査した。平成6年以降に事業完了した市街地再開発事業を中心に、公共用地の減少を伴う大街区化事業を20事業抽出し、それらが行われた背景を示した。こうした公共用地の減少を伴う大街区化事業に関して、廃道部分の公共性担保の手法として4つ(有償売却、条件付無償譲渡、特定分譲、権利変換)を導き出し、それらが「質」の面で公共性を担保している有効な都市整備手法であることを示した。本研究ではこれらの事業が広く行われていない現状を指摘し、より積極的に公共用地の減少を伴う大街区化事業を検討していける環境を整えるために、現状、明確な基準に則っていない道路用地の評価を、開発用途に合わせて適正化していくことを挙げている。
  • 縄田 拓哉, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1150-1155
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    現在多くの自治体は、財政悪化を背景に、公共施設の計画的な総量削減と行政サービスの維持を模索している。これまでの公共施設立地では、施設のサービス圏域に成人を対象とした同心円が採用されてきたが、今後増加が予想されている高齢者は、身体的能力の低下から、成人と同じ距離を歩くことは困難であるとされている。しかしながら、施設の立地状況や高齢者の身体能力の低下を鑑みた施設配置のあり方は明らかでない。そこで本研究は、高齢社会における地形条件を考慮した公共施設整備のあり方を明らかにすることを目的とする。具体的には、通所型の高齢者向け公共施設を対象に、小中学校への複合化による適正配置のあり方を、傾斜と高齢者が移動できる距離から明らかにするものである。まず、大田区の公共施設整備計画の方向性を把握し、傾斜と高齢者の歩行可能距離から福祉施設のサービス圏域を設定した。最後に、設定したサービス圏域を用いて小中学校への複合化を検討した結果、同心円のサービス圏域を用いた施設配置と比較して、多くの高齢者が福祉施設を利用可能な施設配置が明らかとなった。
  • イギリスとの比較から
    乾 康代
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1156-1162
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    イギリス,福井県,新潟県における原発立地地域への支援状況を明らかにした。イギリスとの比較から,立地自治体にとって,廃炉決定過程における立地自治体の権限が確保されること,原子力事業者との廃炉協定が法定化されること,地域再生のための経済的支援が保証されること,原子力事業者の経済支援が重要であること,これらを包括した立地地域再生支援が法定化されることが重要であることを指摘した。
  • 昭和三陸津波後に集団移転した集落の東日本大震災までの変容とその後の復興に着目して
    萩原 拓也, 窪田 亜矢
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1163-1170
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    三陸地域を始めとする津波常習地域における長期的視点にたった地域づくりのためには、津波からの復興期に形成される空間の蓄積と、平時の空間変容を総合的に捉え、その関係性を把握する必要がある。本研究の目的は、昭和三陸津波後に集団移転を行った岩手県内の集落を対象に、昭和津波後の復興および平時の空間変容それぞれと、東日本大震災後に再建される空間の関係性を明らかにすることである。今次津波後の空間変容は、公的復興事業による居住地整備と、被災者が自主的に行う住宅新築の組み合わせと捉え、分析した。昭和津波後の集団移転地と今次津波後の空間変容との関係は、集落の持つ地形的特徴に規定されることが明らかとなった。また、平時の空間変容の傾向は、今次津波後の空間変容においても、継続されることが明らかとなった。このとき、平時のおける昭和移転地の集落内における位置づけの変化や広域インフラ整備などが、昭和移転地と今次津波後の復興地の関係に影響を与える。
  • 四万十川の文化的景観保全における大規模太陽光発電施設計画への対応を事例として
    小浦 久子, 秋月 裕子
    原稿種別: 論説・報告
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1171-1176
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    景観法(2004年)により景観の公益は位置づけられたが、その後10年の実践を経ても、まだ十分に景観の公益について理解が進んでいるとは言えない。自然環境や文化的景観の保全が求められるようなところでは、景観の価値は開発に優先されるべき可能性をもつ。しかし四万十市における大規模太陽光発電施設の事例から明らかなように、協議に応じられないような仕組みとなっている現在の再エネ特措法に問題があるものの、景観の公益は地域の行政と市民に委ねられている現実を踏まえると、異なる公益との調整には以下の3点が重要である:1)創造的景観協議の法制度化、2)景観の公益と再生可能エネルギーの公益の共存には立地計画の導入の必要があること、3)地方の自治体の決定を専門的・学術的に支えるための支援システムが必須であること。
  • 埼玉県三郷市を事例として
    渋谷 健太, 後藤 春彦, 森田 椋也, 山崎 義人
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1177-1184
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市近郊部の変容を農業基盤および祭事運営基盤について村落単位で追うことにより、今後の適切な地域運営・地域自治を考える際の留意事項を明らかにすることを目的とする。本研究では、都市近郊に位置する埼玉県三郷市の村落を対象とする。まず、(1)対象地域の変遷を把握する。そして、農林業センサスデータを用いて分析を行い、(2)村落の農業基盤の変化を把握する。また、各村落の祭事、祭事運営、地域自治との関係から(3)祭事運営基盤の変容を把握する。それらをふまえ、(4)農業基盤と祭事運営基盤の変容関係を考察する。その上でケーススタディとして村落を選定し、(5)祭事運営体制の変容実態を明らかにし、(6)地域の変化との変容関係について考察する
  • デンマーク王国コペンハーゲン市のクラウドバーストプランを事例として
    中島 直弥, 星野 裕司
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1185-1190
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    世界の都市が、地球温暖化に伴う気候変動により洪水のリスクに曝されている。そうして近年、欧米を中心にグリーンインフラと呼ばれる整備手法を用いて、気候変動に適応しようとする取り組みが増加している。デンマークの首都コペンハーゲンの気候変動適応に向けたクラウドバーストプランは、アメリカ造園学会賞やC40の賞を受賞するなど現在進行系で評価が高い。本研究では、行政資料調査とコペンハーゲン市担当者、建設コンサルRamboll担当者にヒアリングを実施し、クラウドバーストプランの展開プロセスと計画支援に関する考察を行い、気候変動適応策を推進していくにあたっての戦略性を明らかにすることを目的とした。その結果、クラウドバーストプランの戦略性は、時間軸を意識した段階的整備のみならず、実効性を高めるための後方支援が行われたという点であることが明らかとなった。後方支援とは、横断的な組織体制や新たな経済手法を法改正によって確立したこと。計画を記述するタイポロジーは、都市スケールで計画立案する簡便さを確保している。我が国においても都市スケールでの適応策の議論に加えて、法改正等の議論を戦略的に展開することが考えられる。
  • 安曇川沖積平野(木津荘, 滋賀県)を対象として
    小谷 裕枝
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1191-1198
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,滋賀県安曇川沖積平野の条里制集落群を対象として,中世応永29年(1422年)から平成27年(2015年)まで継承される「文化的景観」の特徴に関する研究である。遺産でも遺構でもなく,文化財に付帯もしないが,地域風土による社会的な歴史が作用し,現在の農林地や構造物等にその歴史に基づく利用が確認できる景観を「文化的景観」と定義している。対象地が中世に属した木津荘には,中世応永20年前後の間に2つの史料が存在し,近現代の景観のルーツとされる大きな変化を捉えたとされる。本研究では,これら中世史料の既往研究の成果,明治初期の絵図(1873,74年頃)の復元図,対象地の圃場整備前後の昭和40年(1965年)と平成27年(2015年)のベースマップの5時点を基点に,同一二時点による質的変化と分布変化から分析を行っている。結論として,条里地割に展開する,以降の景観の礎(景観の骨格や関係性,敷地の文脈)を形成した点が中世から現存する「文化的景観」の特徴であることを明らかにした。また,圃場整備を境に生じた,屋敷地の核としての公共施設という地域居住域の特徴の変化も明らかにしている。
  • 京阪神都市圏の自治体を中心として
    沢畑 敏洋, 松井 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1199-1205
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    全国各地でパチンコ店の建設に対して反対運動が起きている。パチンコ店に関しては、各自治体が自主条例などを策定し、立地を規制することができるが、その全国的実態は明らかではない。そこで本研究では、パチンコ店の立地規制に関して、全国における自主条例等の策定状況と委任条例の規制内容、京阪神都市圏における自主条例等の規制内容について明らかにし、自主条例と委任条例の規制対象と規制値の差異を明らかにすることを目的とする。結論は以下の通りである。(1)自主条例の策定状況は、全国では6箇所であったが、京阪神都市圏では29箇所になっており、奈良・大阪・兵庫の3府県に集中している。(2)委任条例では自治体ごとの規制内容が類似している。(3)自主条例等では、商工業系用途地域が規制対象に加えられている。(4)景観や都市イメージの保護を目的に、文化財や駅関連施設などから一定の範囲内が規制対象に追加され、特定施設の種類が多くなっている。(5)特定施設からの規制範囲が20-500mの間で設定され、規制範囲の種類も多い。同じ施設に対する規制範囲は、委任条例より自主条例等の方が広く設定される場合もある。
  • 岩手県遠野市遠野遺産認定制度を事例として
    山川 志典, 伊藤 弘
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1206-1211
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、岩手県遠野市の遠野遺産認定制度を事例とし、住民団体と地域遺産制度への取り組みの関係を明らかにすることである。そのため、1. 遠野遺産の特徴、2.住民団体の遠野遺産認定制度への取り組みの傾向、3.住民団体による具体の取り組みを把握した。結果、遠野遺産の種類は風致や建造物が多く、特に、建造物は神社の社殿等、風致は神社の社殿・ご神木・民俗芸能を1件とするように、信仰や伝承に関連する対象が多くみられた。また、それらは生活領域と生活領域周辺に多かった。推薦した住民団体は、地域づくりを目的とした地域づくり連絡協議会と、自治を行なう自治会が多かった。対象となった遠野遺産の性格に違いはあまりみられないが、推薦の継続性や認定後の補助金利用には違いがみられた。加えて、市内3地域の住民団体の具体の取り組みの比較からは、3地域における同種の住民団体による補助金利用と遠野遺産への評価にやや共通点がみられた。遠野市の住民団体は、その種類が異なっていても、同じ対象を推薦する傾向にあるが、推薦の傾向や認定後の補助金を利用した保護活動には違いがみられ、それは団体の目的や活動内容によると考えられる。
  • 韓国の江原道春川市孝子洞大成路一帯を対象として
    朴 鏞元, 張 喜淳, 横田 隆司
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1212-1217
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、江川省春川市の周辺地域の地価に対する無電柱化の影響を分析した。 この研究の結果は以下の通りである。 1)無電柱化は経済的に算定しにくい公共便益増進に寄与する。このような公共便益の増進が地価に反映された。 2)時間の経過により無電柱化の意味と効果は減少したが、公共便益増進の効果は徐々に他の変数によって吸収されているように見える。 3)地価への影響は、住居用として利用される土地より商業用として利用される土地が大幅に変化した。
  • 動的な無形要素のとらえ方の発展に着目して
    柏原 沙織, 藤岡 麻理子, 鈴木 伸治, 窪田 亜矢, 西村 幸夫
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1218-1225
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究はハノイ旧市街の1990年代~2010年代の町並み保全の枠組み(計画・規制)と取組(事業・調査・提案)における動的な無形要素の捉え方の発展に着目して展開を整理把握すること、取組と枠組みの相互の影響の分析・考察により、ハノイの町並み保全の到達点と課題を明らかにすることを目的とする。研究方法として、ハノイ旧市街のこれまでの計画・規制と事業の実施状況について文献調査を実施したほか、現地の行政機関、専門家、住民らへのヒアリングを行った。枠組みにおける無形要素への着目という視点で3期(1989~1998年、1999~2010年、2011年~現在)に分けて把握し、取組・枠組みの発展と相互作用、無形要素概念の拡張について検討した。その結果、ハノイ旧市街の町並み保全の到達点として、動的な無形要素を含めた保全開発規制の制定、動的な無形要素の振興型マネジメント施策の実践、地区の独自性強化に向けた個々の通りへの着目の3点、また課題として、規制における「無形文化遺産」の定義の明確化、動的な無形要素の保全・振興型マネジメント策の検討、住民にも達成可能なモデル事業の展開、職業の通りの再定義、コミュニティ参加方法の模索、の5点が見出された。
  • 中国・武漢市タンファリン歴史的街区を事例に
    松本 邦彦, 澤木 昌典
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1226-1231
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は中国の歴史文化名城指定都市の保護地域で、市政府による街路沿道の一斉修景整備が実施された武漢市タンファリン地区を対象に、整備後に発生した商業転用の状況と、それに伴う建物改修・改造の詳細を明らかにするとともに、店主の歴史的環境保全に対する認識や、改修時の配慮等の把握を目的とした。観察調査、店主へのアンケート、関係機関へのヒアリングから以下が明らかになった。創造産業導入を機に若いオーナーによる飲食店や雑貨店などの若年層向けの店舗が集積し、地区の知名度が向上した。しかし店舗は修景整備の対象となった建物のコンバージョンによるものが多く、さらに店舗の個性を現すためにエントランス部の改造や看板設置、色とりどりの外壁彩色などが行われ、統一化が図られた沿道景観に影響を与えている。さらに来街者増とともに沿道景観ではなく周辺店舗との調和を目指す店主が増加し、個々のコンバージョン店舗で彩られる景観が定着してきている。個性的な店舗集積が地区の活性化に貢献しているものの、店主らが最も魅力に感じる地区の歴史的環境に影響を与えている状況にある。今後は出店調整のための用途制限等の対策も必要になると考えられる。
  • 名古屋市名東区藤巻町を対象として
    高取 千佳, 長谷川 泰洋, 藤原 望, 清水 裕之, 宮脇 勝
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1232-1239
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    都市に残存する里山起源の二次林は、都市環境の向上に寄与する様々な緑地機能の発揮が期待されている。特に近年は、国民の余暇の増大や量から質への価値観の変化を背景に、雨水涵養や大気浄化等の従来の物理的機能に加え、景観やレクリエーション等の心理的機能が注目を集めている。しかしながら、近年では里山的利用の衰退による質の低下が進んでおり、緑地機能の適切な保全が求められている一方、財政難を抱える行政だけで積極的に緑地管理を行うことは難しく、行政・市民の協働による新たな緑地管理の在り方が模索されている。そこで、本研究では、名古屋市名東区藤巻町を対象に、(1)里山起源の二次林を類型化した上で、(2)景観選好性と管理労力の両方を定量的に評価し、(3)地域における提供しうる管理量を制約条件とし、景観選好性を最大化する管理労力の配分による空間計画の手法構築を行う。これにより、行政・市民の協働による緑地管理の在り方について計画的知見を得ることを目的とする。
  • 「小樽雪あかりの路」における韓国人ボランティア団の事例をもとに
    依田 真美
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1240-1247
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ボランティア活動を旅行の目的とする「ボランティア・ツーリズム」は、受け入れ地域とツーリスト双方にメリットのある関係性を構築すると期待されている。しかし、一方で、作業の効率性や仕事の質に関する問題も指摘されている。そのような問題に対処するための方策としては、同ツーリズムを継続した活動ととして捉えることが挙げられる。そこで、本研究では、北海道小樽市で毎年2月に開催される「小樽雪あかりの路」を10年以上に渡って支援してきた韓国人ボランティア団「Otaru Snow Light Festival Korean Volunteers (略称OKOVO)」を取り上げ、同団体が地域との協働において果たす役割を時系列に沿って整理し、その変化の要因を明らかにした。分析の結果からは、ボランティア・ツーリストの役割は 「創造性が低く、重要性も低いもの」から「創造性も重要性も高いもの」へと変化することを明らかにし、その変化を促進する要因としては、「自律性」、「ボランティア・ツーリストの組織化」、「受け入れ地域による受容」、「活躍の場の供与」、「建設的な交流」であることを示唆した。
  • 根岸 勇太, 石川 幹子
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1248-1255
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、「緑の基本計画」の計画項目の構造の変遷を、長期的な目標とこれに関連する計画項目の関係性という観点に立ち、計画論的に考察することを目的とするものであり、次の結論を得た。緑地計画が「ビジョン」、「施策の方針」、「実施プログラム」を基本として確立されているという前提に立つと、「緑の基本計画」の前身である「緑のマスタープラン」においては、長期的な「ビジョン」と「施策の方針」の創出が主に重視されていた。しかし、実務において、意欲的な「ビジョン」と、実現可能な「施策の方針」との間の乖離が問題とされたため、「緑の基本計画」においては、「ビジョン」の設定方法がより自由になるとともに、「実施プログラム」が充実化された。さらに、計画内容を「説明」する役割を担う計画項目が追加されるとともに、「ビジョン」や「施策の方針」を設定する際に計画範囲を限定する計画項目が追加された。また、各種施策が充実化してきたのをうけ、「緑の基本計画」において「施策の方針」として扱われる施策の種類も増加したが、これらを通じて、「ビジョン」または「施策の方針」との関係性が不明確な計画項目もみられるようになった。
  • 東京都「公開空地等のみどりづくり指針」に基づく協議を事例に
    瀬島 由実加, 村上 暁信, 有田 智一
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1256-1261
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    民有地緑化の誘導は、これまで主に緑化率のような定量的緑化基準によって行われてきた。しかし、定量的緑化基準だけでは緑量は確保できても、市民が利用するのに快適とは言い難い空地を生み出す可能性がある。このような問題に対し、東京都は個別事業毎に協議によって緑空間の質を柔軟に検討する協議調整プロセス(以下「みどりの計画書協議」)を導入し、先進的な取り組みを行っている。そこで本研究では、協議の内容と運用実態を分析することにより、民有地緑化誘導におけるみどりの計画書協議の有用性や課題を考察することを目的とした。東京都・事業者へのヒアリング、具体事例3件の分析を通じて、当協議の意義として定量的緑化誘導基準では不足する空間の質的向上への寄与が確認できた。また、その誘導の根拠、誘導の幅、誘導後のモニタリングといった部分での課題も把握することができた。今後は市民や学識者・専門家など幅広いステークホルダーの関与や完了後のモニタリング体制の検討を行っていく必要があるといえる。
  • 潜在クラス分析の中国道データへの適用を通じて
    西井 和夫, 古屋 秀樹, 佐々木 邦明
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1262-1267
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    高速道路のSA/PAは本来の休憩機能だけでなく観光地までの途中での食事や土産品購買等様々なサービス提供が期待されている。こうしたSA/PAのマーケティング戦略では、観光客ドライバーの多様性を考慮していく必要がある。そこで本研究では、潜在クラス分析を高速道路(中国道)利用ドライバーのSA/PA立寄行動データに適用することにより、立寄行動パターンを規定する潜在クラス因子によるマーケット・セグメンテーションモデルを構築する。本論文では、提案する共変量を考慮した潜在クラス分析モデルの同定化と中国道データへの適用結果について考察し、その結果共変量を考慮した2クラスモデルにより、立寄行動パターンを規定する2つの潜在クラスを特定化できた。
  • 今治市を事例とした実証分析
    伊藤 香織
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1268-1275
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    質の高い都市環境はシビックプライドを高めると言われているが,その仕組みは明らかになっていない.また,日本の都市に対するシビックプライドのありようは,イギリスをはじめとしてシビックプライドが重視されてきた地域とは異なる部分があると考えられる.そこで,本研究では,シビックプライドの多面性,特に日本の都市・市民のシビックプライドの構成を明らかにすることを第一の目的とし,都市環境の評価とシビックプライドとの関係を明らかにすることを第二の目的とする.まず,シビックプライドの概念を整理してシビックプライド尺度を作成し,事例として今治市の都市環境に関する市民アンケート調査を行い,シビックプライドの構成及び,都市環境の評価がシビックプライドに及ぼす影響構造を明らかにする.分析の結果,今治市の事例では,シビックプライドには「アイデンティティ」「参画」「愛着」「持続願望」の因子があることがわかった.また,中心市街地の評価が参画と持続願望に影響し,高評価有名地の評価が愛着に影響する他,回答者属性では居住年数がアイデンティティと愛着に影響していることなどがわかった.
  • 球体モデルに基づく立体角の計算方法
    平澤 雄基, 鵜飼 孝盛, 栗田 治
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1276-1283
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    多くの人々が集まる都市空間は,基本的に人工的な構造物によって構成されている.人工物に囲まれた空間は,人々に無味乾燥との印象を与え,冷たい,暖かみを感じさせないなどとされていた.そのため,並木や街路樹のような植物が都市空間の中に積極的に取り入れられてきた.都市空間における植物の量を測る指標として緑視率が存在する.この指標はある位置にいる観測者の視界に映る緑の割合とされ,近年注目を集めている.この緑視率は幾つかの自治体の都市計画に取り入れられている.しかし,測定の機材や位置の決定方法などが自治体ごとに異なり,自治体間で緑視率を比較することはできない.また,測定にあたっては現地まで出向いて写真を撮る必要がありコストや手間がかかる.そのため,緑視率を簡便に見積もる手法を提案することには意味があるだろう.本研究では並木の緑視率を,視界に相当する単位半球面に対する並木の立体角の割合として定義し,樹木を全て合同な球としてこれを見積もる手法の提案を行う.
  • 長谷川 大輔, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1284-1289
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,モータリゼーションの進行や郊外型の都市構造への変化によって,都市内公共交通の利用者が減少している.そのため,既存の交通手段に代わり,デマンド型タクシーやライドシェアやカーシェアリングなど,様々な交通手段が新たな地域の公共交通サービスとして検討されている.本研究では多様な公共交通システムにおける優位性の理論的考察を目的として,アクセス移動の有無,路線・運行ダイヤ柔軟性の異なる5つの交通手段に関して,需要密度・利用者移動距離の変化による,一定のサービスレベルを実現できるコストの観点から,それぞれが優位となる基礎的条件を導出し,地域公共交通の導入実態を把握した上で,現実の都市の値での比較を行う.分析の結果,都市モデルを用いた理論的検討から,低需要密度におけるデマンド型交通,タクシー,カーシェアリングの優位性が示され,移動距離によっても優位性が変化する事を示した.また,自治体別に需要密度・移動距離を求めた結果,コミュニティバス導入地域は高需要密度・短距離移動であるのに対し,デマンド型導入地域は逆の特徴がある点,デマンド型交通導入地域におけるモデルの適合性が確認できた.
  • 東京圏1都3県の都市地域における国勢調査小地域集計を用いて
    相 尚寿
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1290-1297
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    人口増減の実態解析に基づき、居住地選択における住民の嗜好性を反映させるべく、定量的かつ包括的に町丁目単位の住環境を指標化する「住環境得点」の概念を、都市のコンパクト化に代表される市街地再編の計画立案に応用するため、住環境得点による評価と人口増加の実態が整合するかを評価する。両者の関係を地図上に可視化し、また評価と実態が整合した地域と不整合の地域において各住環境指標の平均値に差異が見られるかを統計的に検証する。都心からの距離によって評価と実態の不整合の起こるパターンが異なることから、都心からの距離帯によって異なる住環境得点算出法を提案し、実際に提案手法で算出された住環境得点により評価と実態が従前よりも整合するかを検証する。結果、都心側の地域では提案手法で住環境得点による評価がよりよく実態と整合すると認められたものの、郊外側では提案手法によっても従前からの大きな改善は見られなかった。
  • 石川 徹, 浅見 泰司
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1298-1303
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、縮小社会において重要な問題となる用途の混在について、利便性向上と居住環境に与える影響という観点から、各用途の立地に対する心理的評価を調べた。混在度の低い地域として世田谷区(1078人)と杉並区(1010人)、混在度の高い地域として台東区(599人)と墨田区(1021人)、また東京近郊の郊外都市として柏市(846人)を対象とし、住宅以外の用途立地による騒音と不特定者往来が居住評価に与える影響を調べるためのコンジョイント評価質問に回答してもらった。得られた結果から、公園、商店街、ショッピングセンター、コンビニ、病院のいずれの用途においても、心理的な効用評価に与える影響は、夜間騒音、家賃、昼間騒音、夜間往来、昼間往来の順に大きいことがわかった。商店街とコンビニについては、居住環境への影響がないという理想的な条件のもとでは、その利便性が高く評価され、特にファミリータイプの居住者が立地を望む傾向にある。また夜間の騒音が心理的効用の低下に与える影響は、家賃が地域相場の20%低下することの影響に比べて4倍に上ることが示された。最後に、今回の結果が縮小社会の都市計画に与える示唆を議論した。
  • 財政・介護労働力の観点に着目して
    金 洪稷, 樋野 公宏, 浅見 泰司
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1304-1311
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    今後,高齢者の増加により要介護者の人数も増えていく中で、介護保険の赤字額もより上昇すると予想されている.介護保険の収支構造見直しの一環として社会参加による介護予防を促進する必要があるが,その効果も地域によって異なる可能性がある.本研究では,年齢・要介護度別の人口推計モデルを用いて高齢者の社会参加による介護保険の財政および介護労働力への効果を分析することで,社会参加の促進政策の優先順位を考えることを目的とする.その結果,人口規模が一定水準以下の地域において高齢者の社会参加による効果に地域差があり得ることが分かる.また,社会参加による財政的な効果と介護労働量の逓減効率は必ずしも一致するとは限らない.2055年までは都心部から距離がある地方が介護保険への財政的効果の観点でより効果的であるが,2060年からは都心部がより効率が高い可能性がある.
  • 奥貫 圭一
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1312-1319
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は,町丁目や街区の内部での建物密度に違いがあることを踏まえて,街区よりも微視的な密度指標として提案されている建物周り建ぺい率を採用し,これを東京都世田谷区の建物212602棟に対して計測したものである。計測にあたっては国土地理院の基盤地図情報を利用した。その結果,建物周り建ぺい率を計測する際に与えなければならない半径の値について,いくつかの示唆を得た。すなわち,半径が30~40mあたりのとき,建物周り建ぺい率の値の空間的分布が街区規模よりも十分に微視的な視点でとらえられることがわかった。さらに,これを踏まえて,建物の密集領域を抽出する手順を示した。半径30,35,40mのときの建物周り建ぺい率を計測し,その値が50%以上となる建物についてバッファ領域を求めることで建物が密集する領域をとらえる手順を示した。
  • 静岡県富士市の公共交通設計への最適化技術の活用
    田中 健裕, 高松 瑞代, 菅原 宏明, 田口 東
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 3 号 p. 1320-1326
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では静岡県富士市のバス路線を対象として,交通状況による遅延を考慮し円滑な乗換を保証するバス時刻表を設計する.路線バスは渋滞などの影響を受けやすく,遅延が発生しやすい.また,一度発生した遅延は交通網全体に広がり,大勢の利用者が遅延の影響を受けることがある.一つの路線だけを対象とする場合は,実態に合わせてバス停間の運行時間に余裕をもたせることで遅延を抑えることができる.しかし,実際の公共交通ネットワークでは,複数のバス路線や鉄道路線が複雑に結びついている.したがって,もう一つの重要な目標である電車とバスやバス同士の円滑な乗換を保証するためには,ネットワーク全体を考えた上で,どの箇所の発着時刻をどのように調整するべきかを決定する必要がある.また,バス停間の運行時間に余裕をもたせる場合には,乗客の移動時間が不必要に長くなるのを避けなければならない.本研究では富士市の現地調査とデータ分析の結果に基づき遅延シナリオを作成し,最適化手法を用いて各バスの発着時刻を決定する.
feedback
Top