2017年長野県裾花ダムでは,洪水調節操作時にゲート敷高まで達した堆砂と沈木の引き込みによりゲート操作が不能となる事例が発生した。このような事故はダム堆砂の進行と近年の豪雨災害時の流木の大量流入との複合作用と考えられ,今後顕在化しうる。しかし沈木に関する研究は乏しく,流木から沈木へ変化する過程,湖底の沈木の分布などは全く調査・研究されておらず,最終的にゲートの閉塞リスクが発生するメカニズムなどはいまだ推測の域を出ていない。本研究では,堆砂測量で近年多用されるMBES深浅測量を裾花ダムで実施し,従来注視されなかった微細突起物を解析することで沈木の特性と探知可能性を検討し,その可能性と今後の課題を示す。
気候変動に伴う降雨外力増大傾向のなか,ダムの有効活用をサポートできるダム流入量の予測精度向上は喫緊の課題である。従来,ダム流入量予測モデルは既往観測データに基づきパラメータ等が最適化され実運用投入されてきた。しかし,実運用時のモデルへの入力は予測雨量である。観測データと予測データは特性が異なり,現象再現を追求する従来プロセスでは実運用時の汎化性を期待できない。本稿では,予測データを用いた「予測学習」により実運用時のダム流入量を高精度に予測できること,予測学習には深層学習が効果的であることなどを示す。
重力式コンクリートダムの施工方法は柱状工法,拡張レヤ工法,RCD工法に大別され,近年では中規模以上のダムであればRCD工法が適用されるのが一般的である。RCD工法では大型重機による連続施工で施工量を最大化する。また,これらの機械の自動化を目指す取り組みも行われている。一方で,働き方改革により4週8閉所を目指す建設業界の潮流はダム建設にも及んでおり,これまでと同等の品質のダムを建設するためには,打設日数を確保するための発想の転換が求められている。本稿は,川上ダム本体建設工事で取り組んだ施工実績を検証し,新しいダム建設手法に関して論じたものである。
浜田ダム再開発工事は,昭和38年に完成した既設浜田ダムを「予備放流方式による貯留型ダム」から「自然調節方式による治水専用の流水型ダム」に再開発する工事である。ゲート類の撤去,放流設備の改造を含め,ダム本体・減勢工の再開発をダムの機能を維持しながら施工した。国内でも施工事例の少ない既設放流管へのライニングや大口径の空気管新設とともに,ダムの堤頂部や減勢工の改造,仮締切などの仮設工事の施工実績について報告する。