全球的気候変動に伴う豪雨増大によるダム堆砂量の増加が懸念されている。そこで本研究では熊本県にある緑川ダム貯水池を対象として降雨等の水文時系列データから貯水池堆砂量を推定するモデルを構築し,実測データと比較して再現性を検証した。続いて,21世紀末の降雨および流量倍率の推定値から堆砂量の倍率を推定したところ,RCP2.6に対して1.9倍,RCP8.5に対して3.2倍という結果を得た。このように大きな倍率の原因は,降雨強度の増大による崩壊地拡大と渓流における粗礫移動の活発化によると考えられた。
天ヶ瀬ダム再開発トンネル式放流設備のうち,減勢池部は主ゲートからの高圧・大量の放流水を減勢させるため超大断面水路トンネルである。トンネルは,堅固な砂岩・泥岩内に介在する脆弱な破砕帯を小土被りで通過するため,側壁導坑・中央導坑先進多段ベンチカット工法を採用し,掘削時に情報化施工を適用した。着工後間もない側壁導坑の掘削時に判明した破砕帯幅の拡大に対応するため,当初の側壁安定対策工よりも大きな効果が期待できるRC円柱支保工を考案した。本文では,日本初の超大断面トンネル型減勢工の設計,施工および情報化施工について報告する。