概要.本研究では,密度型位相最適化問題に対する高精度数値的手法について考察する.高精度手法の基礎には勾配法による反復解法を採用し,反復内における偏微分方程式の数値解法には微分求積法の一種である任意多点差分法を用いる.高精度計算実施のために必要な多倍長環境には exflibを採用する. Poisson方程式による密度型位相最適化問題に対して最急降下法とH1勾配法を用いた数値実験を行い,それぞれの有効性と数値安定性・収束性を検証する.
概要. 本研究では,唯一の議席配分方式を見つけ出すために,議席配分方式の偏りを考えた.議席配分方式として緩和除数方式のクラスから選んだ 25個の配分方式に対し, 3つの尺度, Balinskiと Youngの定義した尺度と Ernstの定義した尺度および,最近我々の提案した新しい測り方を使用し,これらの配分方式の偏りの値を測った.
概要. 本論文では,平山が提案した有限区間積分に対する数値積分法 —本論文では「超函数法」と呼ぶ —について解析を行う.超函数法では,問題とする積分を閉積分路上の複素積分に変換して,周期関数に対して性能の良い台形公式で近似計算する.数値実験により,超函数法は積分区間端点の特異性が強い積分に対して有効であることがわかる.また,超函数法と佐藤超函数論との関係についても触れる.
概要.がんの浸潤に関わる基底膜分解酵素活性化パスウェイネットワークにおいて構成分子数を3構成分子からN構成分子へ一般化したネットワークを考える.ネットワーク上にはN(N+1)個の分子が存在し,まとまった挙動を示す複数のグループに分類される.グループ単位の質量保存則と質量作用則を適用することで,グループ解は厳密表示され,定常解への収束とその収束速度が定まる.
概要.心肥大関連因子で構成される生化学反応ネットワークに質量作用の法則を適用して導出される非自律的常微分方程式系の初期値問題に対する解の非負値性を示すため,この系を含む,より一般的な常微分方程式の初期値問題を考察し,非負値解の一意存在を保証する十分条件を導く.また,非自律系で記述される反応の動的平衡状態を動的平衡点と定義し,その構造を解析して,更にこの動的平衡点への解の収束性を数値計算に基づき検討する.
概要.血管新生を記述する単純な数理モデルを考察する.最近の血管新生における内皮細胞運動のタイムラプス撮影の実験を参考に,内皮細胞の新生血管先端での密度のみにより,新生血管の伸長と分岐が定まることを仮定すると,非線形連立常微分方程式によって記述されるモデルが導かれる.細胞分裂および VEGFなどの内皮細胞の運動を活性化する因子の影響も取り入れ,厳密解および数値シミュレーションの結果を示す.