概要. 効率的ポートフォリオの概念を,データ可測な投資比率と,総収益の条件付平均からの偏差の2乗平均によって評価されるリスクのもとで再述し,これに整合するように定式化された最適化問題を解析的に解くことによって,任意に与えられたリスクレベルのもとで最大の期待収益を達成する効率的ポートフォリオが見出されることが示される.併せて,Tobinの分離定理に相当する結果が見出される.
概要. 半線形楕円型境界値問題の精度保証結果を線形問題の経由により改善する.提案手法の特徴は,従来逆作用素ノルムと残差ノルムの積で評価されていたNewton 法の修正項のノルムを,元の問題から得られる線形問題の精度保証を行うことでより厳密に評価することにある.これにより多くの近似解の精度保証結果が改善されるだけでなく,誤差評価が得られなかった低精度の近似解に対してもその誤差評価が可能になる例を紹介する.
概要. 分厚い段ボールのような剛性素材の厚板ボックスをどのように平らに折り畳むかは,実用上非常に重要であるが,産業化には至っていない.剛性折りは数理科学の観点からも,古くはA. Cauchyの定理に始まりフイゴ定理にいたるなど非常に興味あるテーマである.本稿では,剛性素材の厚板ボックスを,世界に先駆け,実用的な折り畳み式構造体として数理的に解決し,シミュレーションでその妥当性を確認することを目指す.
概要. 対称な分離行列を持つ内部反復前処理付き共役勾配法(CG法)及び最小残差法(MINRES法)が特異対称系の解を与える条件を示す.この結果をランク落ち最小二乗問題及び線形系の最小ノルム解を求める問題に対する同前処理付きCG 及びMINRES型反復法に適用して[Morikuni, Hayami, SIAM J. Matrix Appl. Anal., 34 (2013), 1–22]の収束理論を補完する.
概要. 荻田・相島による固有ベクトルの反復改良法を利用して,時間に依存する実対称行列A(t)の固有値・固有ベクトルを追跡する手法を提案する.追跡に際しては,A(t)の固有対とA(t+Δt)の固有対との差がΔtに依存して大きくなること,固有値が交差する近辺で荻田・相島法の収束性が悪化することが問題となる.本論文では,荻田・相島の収束定理を改良して収束半径を広げるとともに,収束性改善のための前処理を提案する.
概要. 本論文では,大規模疎行列の指定番目の特異値と特異ベクトルの計算問題に対するアルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムでは対象問題をいくつかの小問題に分け,各小問題において特異値問題と等価な固有値問題を解く.数値実験では提案アルゴリズムの計算精度を確認し,大規模行列に対する有効性について検討する.
概要. 複数右辺ベクトルをもつシフト線形方程式の解法として,シフト不変性を利用したBlock Krylov部分空間法に対する多項式前処理について考える.右辺ベクトルが1本の場合,一般に多項式前処理は,計算時間の観点からは必ずしも有効とはいえない.本論文では,多項式前処理が多くの右辺ベクトルをもつシフト線形方程式に対して,計算時間の観点から有効となることを示す.