概要. 行列符号関数はSylvester 方程式を解くことに利用できる行列関数であり,その数値計算手法としてこれまでにはSchur 法やNewton 法のようなアルゴリズムが考えられてきた.本論文では新たなアプローチとして行列符号関数を二重指数関数型数値積分公式で数値計算する手法を提案し,その性能を理論的に評価する.提案法は並列計算によって従来の手法では計算困難な大規模行列に対しても適用できる可能性がある.
概要. 新型コロナウイルス感染の連続する複数感染波を模擬・予測するために,小田垣のSIQRモデルの拡張を行う.本モデルにより,国内の主要都市に対する感染拡大の数値解析を実行し,第3波以降に対する考察を行う.さらに,ワクチン接種効果を含むモデルに拡張する.接種が始まった英国のデータを用いてワクチン接種効果を考慮した解析を実施し,その効果について定量的考察を行う.
概要. 折紙の数理を応用することで6角柱がパネル表面に対して傾斜した特殊な斜角型のハニカム構造を設計・製造する方法に関して述べる.このハニカム構造を透明度の高い建材用フィルムと組み合わせることで,新しい建築用透明パネルのプロトタイプを開発し,視線の角度によって変化するブラインド効果や反射による像の多重化など特殊な視覚効果を持つことを明らかにした.
概要. Max-plus代数とは,加法を演算max,乗法を演算+で定義した半環である.Max-plus代数は製造工程計画を起源とし,理論と応用の様々な立場から独立に発展を続けてきた.本稿ではmax-plus代数上の固有値問題を取り上げ,その基礎事項について計算方法とともに解説する.また,固有値問題の発展的な理論を最近の研究成果を交えて紹介する.さらに,離散事象システム及び可積分系への応用にも言及する.